36 / 222
36. S級第485ダンジョン
しおりを挟むエッ?! チョット!
ケンセイさん! 何言ってるんですか?!
年端《としは》もいかない子供3人で、何で危険な南の大陸のダンジョンに行かなきゃならないんですか!
「私もアレックス叔父さんを助けに行くわ!!」
何でジュリまで……
ジュリにとってアレックスは、血の繋がりは無くても叔父さんに当たるので当たり前なのか……
「うーん……でも子供達3人だけじゃ不安だわ。」
そっ……それです! それが普通ですよ!
さすがエリスさん!
「問題ありませんわ。奥様、私が付いて行きます。」
シャンティ先生、今いい感じだったのに、なんて事言うんですか!
「シャンティちゃんが付いていくなら安心ね!」
エ……エリスさん、どこまでシャンティ先生を信用してるんですか?
シャンティ先生が、死ねっていったら死ぬんですか!
「シャンティさんがそう言うなら大丈夫ですね!
それじゃあアレン君、新生『犬の肉球』団長として、みんなの事頼んだよ!」
ク……クラタンさん……僕は一言も南の大陸にアレックスさんを助けに行くなんて言ってませんよ……
「ようアレン!
神道異界流が最強の流派だという事を世に知らしめる為には、絶対に負けは認められん!
お前が一番弱いんだから気張っていけよ!」
「アレン坊ちゃん、私と精霊契約して下さい。
私が何かの拍子に死んでしまったら、エリス奥様の元に戻ってしまいます。
南の大陸は遠いですから、またアレン坊ちゃんの元に戻ってくるのは骨が折れます。
ですので今すぐ契約してください!」
シャンティ先生、まだ俺は行くとも何も言ってないのにグイグイくるな……
でもこの状況で今更行けないとは言えないか……
「分かりました! シャンティ先生と契約します!」
「はいお願いします。」
「で、どうやって契約するんですか?」
「アレン坊ちゃん。
もう既に契約は成立できていますよ。
アレン坊ちゃんは、数少ない無詠唱魔法の使い手です。
凡人《ぼんじん》の精霊魔術師の場合は、長ったらしい呪文を詠唱したり、魔方陣を用いて精霊と契約しますが、
アレン坊ちゃんの場合は、アレン坊ちゃんと精霊が、お互いが契約してもいいと納得した時点で契約が成立してしまうのです。」
な……なんて便利なんだ! 無詠唱魔法!
「アレン坊ちゃん! あんまり調子に乗らないで下さいね。
人族の場合、無詠唱魔法の使い手はそれ程いませんが、エルフ族や、魔族には結構いますので。」
褒めてから落とす、正《まさ》に飴と鞭。
シャンティ先生、そんな事すでに分かっていますよ。
普段から、自分より格上の化物《ばけもの》達と修行してますからね。
「じゃあ『犬の肉球』年少組がアレックスの救出に向かうと決まったので、S級第485ダンジョンの説明をするとしましょう。
先遣隊が攻略していく内に分かった事なのですが、どうやらS級第485ダンジョンはジャイアント·キラー·アントの巣だったった様なんです。
50層目から突然湧き出し、当初順調に攻略が進んでいたのですが、ジャイアント·キラー·アントの出現によって停滞状況に陥ってしまったんです。
ジャイアント·キラー·アントの巣があったという事は、最初Sクラスダンジョンと思われていたのですが、実はSSクラスダンジョンだったという事になり、攻略の為に編成されていたパーティーメンバーでのダンジョンの攻略は、まず不可能な状況になってしまったのです。
しかしガリム王国が威信をかけて主催した大型レイドであって、尚且つ王子までもがレイドリーダーとして参加しているのに、途中で止めてしまったらガリム王国の権威も地に落ち、王子の王位継承者としての能力にも疑問符が付く事になるので、引くに引けなくなってしまったという訳です。」
「丁度、良かったじゃねえか!
ジャイアント·キラー·アントはジャイアント·アントの上位種だ!
今日のクエストがいい練習になったな!
俺様が狩ったジャイアント·アント·クィーンが、ダンジョン中にうじゃうじゃいる感じだな!
それが南の大陸のSSクラスダンジョンなら今日の3倍位いると考えた方がいいな!」
「そうそう、アレン君達が今日行った依頼も、ガリム王国が出したジャイアント·キラー·アント対策のクエストなんだよ!
効果があるかわからないけど、同族の表皮で鎧を作れば、少しは攻撃を和らげられるかもと考えたのかもね!
それ程ダンジョン攻略が、上手くいってないんだろうね。」
ケンセイさん、クリタンさん、そんな大変な場所に、いたいけな子供達を送り出す事を何とも思わないのですか……
「ワッハハハハ!
今日のアリンコ達なら何匹居ても問題ないのじゃ!
パッパっとやっつけて、父様を救出するのじゃ!」
「先遣隊は王子と王子の親衛隊が10人、A級冒険者が40人、それとアレックスだった筈ですわ。
ジャイアント·キラー·アントを相手にするには魔法による攻撃が有効ですが、それでも魔素量には限界があります。
剣や槍などの攻撃の場合も、節以外の場所は硬い表皮が攻撃を弾いてしまいます。
雪崩の様に襲ってくるジャイアント·キラー·アントに寸分の狂いもなく節に攻撃する事は、よっぽどの手練じゃないとできません。
闘気を使えれば簡単に一刀両断できますが、先遣隊のA級冒険者で闘気を使えるものはいなかった筈です。
多分 先遣隊でまともにジャイアント·キラー·アントに太刀打ちできたのは、アレックスだけだったでしょう。
だけど、アレックスにも限界があります。
さすがに一人で一日中戦う事はできません。
しかしアリスお嬢様達、神道異界流の闘気の使い手が3人いれば、全く問題ありませんわ!
アッ! 間違えましたわ。アリスお嬢様だけで全く問題ありませんわね!!」
シャンティ先生は、どんだけアリスの事を信奉してるんだ……
「アレン、アリスちゃん、ジュリちゃん、本当は私も行きたいのだけど、かえって皆の邪魔になっちゃうみたいだから私の分までアレックスの事お願いね。」
「分かりました! エリス叔母様。
アレンとアリスちゃんと協力して、必ず
アレックス叔父さんを助けて見せます!」
アリスとジュリが、やる気なら兄として頑張らない訳にはかないか……
こうして俺は、未《いま》だ会った事が無い父親を助けに行く決意を固めたのであった。
3
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる