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35. アレックス
しおりを挟む「ようクラタン、どういう事なんだ!
早く教えろ!」
ケンセイが眼光鋭く詰め寄った。
「それより早く早馬で、エリスさんに連絡しないと!」
「それなら無用じゃ!
今シャンティに念話で連絡したのじゃ!
すぐに母様を連れて、こっちに向かうと言っていたのじゃ!」
「アリスちゃんは、何で召喚契約者じゃないのに、シャンティに念話できるの?」
「妾《わらわ》は、ハーフエルフの姿をしていても、本当は、精霊体の神獣じゃからな!」
「エッ、精霊体の方が本体なら、エリスさんの子供じゃないんじゃないの?」
「妾は正真正銘、母様の子供じゃ!
元々、アレンの体の中にいた別人格じゃ!
説明面倒じゃから、シャンティが来たら聞いて見るといいのじゃ!」
「今はアリスの事なんて、どうでもいいんだよ!
それより、アレックスはどうなったんだ!」
「詳しい事はエリスさん達が着いたら話すけど、アレックが参加しているガリム王国が主催している大型レイドで問題があったみたいなんだ!
今日、君達が行《おこな》った依頼もそのレイド絡みで、ガリム王国が出した物らしいんだ!」
「それでアレックスはどうなったんだ!」
ガチャン!!
ヤリヤル冒険者ギルドの玄関扉が開き、そこにはエリスとシャンティが立っていた。
どういう事だ?
モコ村からヤリヤルの冒険者ギルドまで、アリスが龍形態になっても10分はかかるのに、まだ5分も経っていない。どうやってきたんだ……
「クラタンちゃん、アレックスはどんな状況なの!」
「先程も話した通り、アレックスはガリム王国が主催する大型レイドに参加してます。
しかし知っての通りその大型レイドには、ガリム王国のネム王子がレイドリーダーとして参加しているのです。
南の大陸で5年前に出現したS級第485ダンジョンを攻略する事によって、ガリム王国の国力と、ネム王子がガリム王国の正式な王位継承者である事を、各国に知らしめる為に企画したレイドだったのですが、
頼みの綱となる『犬の肉球』が解散してしまっていたので、レイド攻略が50層から中々先に進まず難航していたみたいなんです。
それに痺れを切らしていたネム王子の親衛隊達が、ネム王子も連れて突撃していったのですが、案の定モンスターの群れに囲まれ、レイドの前線まで戻れなくなってしまったのです。
すぐにアレックスが一人で助けに行き、事なきを得ずに済んだのですが、戻ってくる途中で落とし穴のトラップに引っ掛かっしまい、またもや前線まで戻ってこれなくなってしまったのです。
レイド部隊は王子とアレックスを助けようと何度もアッタクしたのですが、逆に頼みのアレックスが居なくなってしまった事により、前線がどんどん後退し、完全に八方塞がりになってしまったという訳なのです。」
「それで、どうするんだよ! 俺らで助けに行くのかよ!」
「それは出来ません! 僕とケンセイはヤリヤルを離れる訳にはいきません。
ガリム王国の北側にあるハマオカ王国が、僕らがヤリヤルから居なくなったとわかったら、すぐにでもガリム王国に攻め込んで来るでしょう。
『犬の肉球』が解散してしまった今、ガリム王国に後ろ盾は有りませんからね。」
「『犬の肉球』は解散しておらぬ!お主何を言っておるのじゃ!」
「アリスちゃんが言う事も分かるけど、君達はまだ知名度が足りないんだ。
アレックスや、エリスさん、ケンセイ、それから前『犬の肉球』のメンバーはそれぞれ、西の大陸の者なら誰でも知っている有名人だ。
その『犬の肉球』がガリム王国を本拠地としていたので、他国はおいそれと侵略してくる事ができなかったんだ。
ホントだったらガリム王国程度の小国は、すぐに他の列強に滅ぼされてしまう。
それができなかったのは、たまたま『犬の肉球』がガリム王国を本拠地にしていたお陰だったんです」
「私がアレックスを助けに行くわ!」
エリスが目をパッと見開いて、クラタンとケンセイを見た。
「それは絶対ダメだな!」
ケンセイがすぐに却下した。
「エリスさんが南の大陸に上陸したら、アレックスの救出どころではなくなってしまいます。
ガブリエルが黙っていません!
ガブリエルは全てのエルフが嫌いっていうより、エリスさん個人の事が嫌いなんですから。
南の大陸に上陸するたびに、毎回ガブリエルに追いかけ回される事 分かっているんですか?
確かに『犬の肉球』フルメンバーが揃っていれば、ガブリエルを抑えつつ南の大陸を冒険できますよ!
だけど、今はみんな居ないんですよ!」
ん……ん……あれ?クラタンさん、
今サラッと凄い有名人出してなかったか?
ガブリエルって、最強の使い魔、
冥界の番犬ケルベロスを使役しているという、漆黒の森のダークエルフの女王ガブリエル·ツェペシュの事だよな。
ガブリエルってシャンティ先生が、最強の一角って言ってなかったか……
「それならば、妾《わらわ》達 新生『犬の肉球』が父様を救出にいくのじゃ!」
オイオイ何言っちゃってるんだ、アリスさん!
今の話聞いてたのか?
南の大陸にはダークエルフの女王ガブリエルもいるし、魔王も乱立しているんだぞ!
そんな恐ろしいとこに、見た事もない父親を助ける為に行けるかよ!
一緒に暮らしているエリスやアリスならともかく、俺にとっての親父は、前の世界の親父ただ一人きりなんだよ!
「おっ!
そいつはいいかも知れねえな!
アリスはどう見ても、エリスの子供というよりダークエルフにしか見えねえし、子供でも神道異界流を習えば強くなるんだぞ!
って宣伝できるしな!
年端《としは》もいかない神道異界流ガキんちょ3人が、S級ダンジョン攻略したって噂になればいい宣伝になるぜ!」
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