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カーランド王国編

23. セリカ姫視点と、クロ視点

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 城に、魔の森で見た、森の精霊様のお友達の子猫がやって来た。

 多分、森の精霊様が、魔の森から居なくなってしまい、寂しくなって城にやって来たのだろう。本当に可愛い。

 シロちゃんの話によると、子猫の名前はクロ。
 森の精霊様が、森で拾って育ててた猫であるらしい。
 そりゃあ、突然、飼い主が居なくなったら寂しいよね。

 私でも探しに来るよ。

 でもって、突然、宰相のリーフから通知が来た。
 白黒の子猫は、城で飼ってる猫という通知。
 よく、お父様が、OKしたものだ。

 まあ、森の精霊様が飼ってた猫だから当然だよね。

 それにしても、クロは自由。
 いつも城の中を、気ままに散歩してる。
 夜になると、私の部屋に戻ってくるけど、それ以外は、城の色々な所を散策してるらしい。
 話によると、お腹が減ると城の厨房に行って、にゃ~と、ご飯をねだるらしい。どれだけ頭が良いのだろう。

 リーフが城の猫と公言する前は、みんな、クロを捕まえて、自分の家で飼おうとしてたみたいだし。そりゃあ、頭が良くて可愛いなら当然だよね。

 だけど、シロちゃんだけは、クロの事を腹黒猫だと言ってる。
 シロちゃんも、クロ同様に、森で、森の精霊様拾われたので、どうやら後から拾われたクロにヤキモチを焼いてるのだろう。

 今まで、一身に森の精霊様の愛情を注がれてたのに、クロが来てから、森の精霊様が、クロばかりを可愛がるから。
 確かに、森の精霊様のクロの可愛がりぶりは、溺愛を越えている。

 毎日、クロをお風呂に入れるし、風魔法で乾かしてからは、熱心にブラッシングまでしてるし。
 なので、クロの体毛は、いつもツヤツヤで美しいのである。所謂、美猫。

 そして、そんな可愛らしくて、美猫のクロが最近、事件を起こしたのだ。

 なんと、ローランド帝国のスパイを捕まえたとか。
 捕まえたと言っても、スパイ達が、カーランド王国転覆の計画を練ってた部屋の現場まで、宰相のリーフを連れて来たとか。

 まあ、たまたまだと思うけど、兎に角、クロのお手柄である。

 この手柄によって、クロは、王様から最高級の鰹節と名誉勲章を与えられたのだった。


 ーーー

【クロ視点】

 その日も、城のパトロール。
 ご主人様に仇なす者達を、秘密裏に抹殺しないといけないからね。

 お姉ちゃんでもあるシロの話によると、どうやらこの城の中には、カーランド王国と戦争中のローランド帝国のスパイが紛れ込んでるらしい。

 そのスパイ達が悪さして、ご主人様に危害を与えないようにするのが、私の仕事。

 一応、シロによると、大体の目星はついてるらしい。
 ご主人様が、既に、ご主人様が見えなかった者達を、騎士団長のオットンに伝えてたらしく、王様と宰相のリーフとオットンの3人だけが、その秘密を共有してるのだとか。

 シロは、一応、リーフからローランド帝国のスパイと思われる、ご主人様の事が見えない者達のリストを貰っており、私にその者達を見張る事を命令したのであった。

「私に、命令するなんて生意気なのにゃ」

 ちょっとばかり、私より、ご主人様と付き合いが長いからって、シロはいつでも上から目線。
 だけれども、シロより私の方がご主人様に可愛がられてるから、いいんだけどね。
 シロ姉ちゃんは、私にヤキモチを焼いてるのである。

 てな訳で、今日も城を散歩するフリをして、ご主人様が見えない人達を見張ってたんだけど、何やら、みんなで集まって良からぬ事を企んでいたのであった。

 しかも、その企みが、ご主人様が居るセリカ姫の部屋を爆破するという計画。
 なんか、最近現れたという精霊が、セリカ姫の部屋に住み着いてるという情報を得て、決行するのだとか。

「セリカ姫の部屋を爆破するなんて、許せないのにゃ!」

 私は、セリカ姫が大好き。だって、ご主人様同様、私を甘やかしてくれるから。
 外国製の高そうなお菓子をいつも分けてくれるし。(完全に、クロはセリカ姫に餌付けされている)
 だから、ご主人様とセリカ姫に危害を与える者は、許さないのである。

 まあ、兎に角、この部屋に集まってる者達は、全員、心がドス黒過ぎて、ご主人様が見えてないのだけど、ご主人様の事は脅威と思ってるようである。

 何せ、毒と呪いによる殺害に成功したと思ってた、この国の王様が生き返っちゃったんだから、脅威と思うのは当然であろう。
 だって、いくら王様を暗殺したとしても、ご主人様がカーランド王国の味方をしてる間は、どんだけ王様を暗殺しても、エリクルで生き返っちゃう訳だしね。

 なので、その元凶であるご主人様の暗殺を計画してるようであった。

 まあ、人間同士の争いなら、静観しててもいいんだけど、ご主人様を狙う計画は絶対に許さない。

 ご主人様は、私の全てなのだ。
 私は、ご主人様に褒められたいし、ヨシヨシしてもらいたい。
 ご主人様に、ブラッシングしてもらいたいし、甘やかして欲しいのである。

「絶対に許さないにゃ!」

 てな訳で、宰相のリーフに告げ口する事にした。
 私は子猫のフリしてるから、直接、手は下さないのである。
 これで、ご主人様に知られずに、計画をぶっつぶす事ができる筈。

「リーフ! なんか、ローランド帝国のスパイが、セリカ姫の部屋を爆破する計画を立ててるのにゃ!」

「なんですって!? 精霊王様がおられる部屋を爆破するなんて、絶対に許さない!!」

 なんか、クロ以上に、リーフが、青筋立てて怒っている。
 まあ、森の精霊王を神として信仰してるハイエルフ族なら当然か。

 すぐさま、リーフは動き、問答無用でローランド帝国のスパイと思われる者達を皆殺しにしてしまったのである。

 これには、クロも驚いてしまう。

「何で、殺しちゃうの?!」

 一応、捕まえて、話とか聞かなくても良かったの?
 ローランド帝国の動きや、計画とか、聞けたかもしれないのに……

「精霊王様に危害を加えようとする者達は、全て極刑に決まっております!!」

 この人、やべぇにゃ……。
 シロ姉ちゃんもヤバいが、リーフのご主人様に対する信仰は、最早、新興宗教や邪教のそれである。
 多分、ご主人様が、リーフに死ねとか命令したら、躊躇なくリーフは死ぬであろう。そのレベル。

「兎に角、終わった事は仕方が無いにゃ。ご主人様に、私の活躍をそれとなく伝えてくれたら、今回のミッションは成功なのにゃ!」

「分かっておりますとも、クロ様。しっかりと精霊王様に、クロ様の活躍が伝わるように手配しておきます」

 リーフは、自分の胸を、ドン!と、叩いて任しておいて下さいという。なんだか不安。
 この人、ご主人様が関わる事となると、度の越えた行動をしでかすのだ。

 で、その行動が、最高級の鰹節と、王様からの勲章。
 普通、猫が勲章貰えるだろうか?

 王様に、私の正体がベビモスと伝えてないよね?

 まあ、王様は、薄々気付いてるかもしれないけど、ご主人様が私の事を溺愛してると知ってるから、多分、私の事も特別扱いなのだろう。

「クロちゃ~ん。大活躍でちたね~」

 また、私の活躍を伝え聞いたご主人様が、猫可愛がりしてくれる。

【クロちゃん、コレは私からのご褒美ですよ。ローランド帝国のスパイ達は、私の部屋を爆破しようとしてたんですよね! 本当に、クロちゃん、ありがとう】

 セリカ姫が、まだ箱を開けてない新品の外国製のお菓子を、箱ごとくれた。

『私が、大好きなやつにゃ! だから、セリカ姫大好き!』

 どうやら、セリカ姫の餌付けは、順調のようである。

 ーーー

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 クロは、秘密裏にセリカ姫に餌付けされてるようです。
 そして、シロの事をお姉ちゃんと思ってるようですね。

 面白かったら、復活の呪文【お気に入り】を、押してくれると嬉しく思います。
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