19 / 67
カーランド王国編
19. 四天王の第一席シロが、カーランド城に現れた!
しおりを挟むその赤髪の真っ白い幼女は、何の前触れもなく、カーランド城に現れたのだ。
城門を護る兵士の制止を無視して、その10歳ぐらいの幼女は、城門をくぐる。
近づいた兵士は、糸にぐるぐる巻きにされて、全員簀巻き。その力は圧倒的。
精霊魔法が使えるようになり、再び騎士団長の地位に戻ったオットンや、この国の宰相であり、大魔法使いであるリーフの攻撃を受けても無傷。
普通に、何事でも無かったように、オットンもリーフも簀巻きにして、森の精霊さんがいるセリカ姫の部屋に、真っ直ぐ入って行ったのだった。
「ご主人様!僕、人間になれたんだよ!」
その真っ白い幼女は、セリカ姫の部屋に入ると直ぐに、森の精霊さんを見つけて喋り出す。
森の精霊さんの隣には、セリカ姫も侍女のマリンも居るというのに、居ない者として。
どうやら、白い幼女の目には森の精霊さんしか見えてないようだ。
「あっ、シロ。ホントに下半身が人間になってるな」
森の精霊さんは、アラクネで、下半身が蜘蛛であった筈のシロを見て答える。
「僕、とっても頑張ったんだからね!
ご主人様が、下半身が蜘蛛だから一緒に森の外には連れて行けないと言われて、それから森の魔物を倒しまくって、アラクネαに進化出来たんだよ!」
「そ……そうなんだ……森の魔物達って、お前ら四天王の部下だったんじゃ無かったっけ……」
「しょうが無いよ。僕とご主人様の為だもん。魔物達も、きっと喜んでるよ!」
なんで、シロに殺された魔物達が喜んでるか分かんなんだけど。まあ、いいか。
そもそも、俺の部下は、シロ達四天王だけだし。
だけれども、どうしよう。
俺は、セリカ姫の顔を見る。
【この子は、精霊様のお友達でございますか?】
何やら、セリカ姫は、ホンワカした表情で、俺とシロとのやり取りを見ていた。
まあ、今のシロは、足も人間の足になったので、見た目は可愛らしい幼女。
セリカ姫の目には、俺の友達の幼女が、俺に会いに、森から遊びに来たと映っているようだ。
というか、そもそもあの魔境とも言える森に、人間なんか住めないから。
あの精霊魔法が使えるハイエルフさえ、やっとなんだから。
セリカ姫の勘違いも、ここまでいくと凄い。
ずっと城の中で過ごしてきた箱入りだから、仕方が無いかもしれないけど。
「シロを、この城に住まわせていいか?」
俺が、セリカ姫に聞くと、当たり前のように、マリンが通訳してくれる。
【セリカお嬢様。この幼女が、森の精霊様を頼って、森の精霊様の元にやって来たようでございます。
森の精霊様は、この幼女にとって親のような存在。どうか、ここで、森の精霊様と共に暮らしたいと言ってるようでございます】
できる侍女のマリンは、勝手に俺の言葉を改竄して、いいようにセリカ姫に通訳してくれた。
【なるほど、この子は、森の精霊様を追って、1人でここまで来たという事ですね】
なんか知らんが、セリカ姫はポロポロ涙をこぼしながら、シロを、自分の胸に引き寄せて抱き締める。
【そう。僕、ご主人様を追って、ここまで来たんだよ!】
何故か、人間の言葉を喋れるらしいシロが、乗っかる。
【そうですか。貴方は、森の精霊様が、突然、森から居なくなってしまって、とても寂しかったんですね】
【そう。僕、とても悲しかったんだよ。だって、ご主人様、僕に何も言わずに、突然、僕を置いて、森から出ていっちゃったんだもん!】
シロは、セリカ姫に見えないように、下をペロッと出し、泣き真似しながら答える。
【それは、とても辛く、悲しかったですね。これも全て、私のせいなんです。
私が、お父様を助ける為に、エリクサーを求めてしまったから。
森の精霊様は、お父様にエリクサーが効かない事を分かってらっしゃって、わざわざ、私の為に、この王都まで来て下さったんですから……】
なんか、セリカ姫は、感極まって号泣。
セリカ姫って、そんな風に思ってたの?
俺、ただ、ドラ〇エ的修行に飽きて、森から出たかっただけなのに……
【あの……僕……ご主人様と離れたくないんです。どうか、僕も、ここに住まわせてくれませんか?】
シロは、猫なで声で、セリカ姫にお願いする。
【勿論です! 私が責任を持って、貴方をこの城に住まわせますわ!】
セリカ姫は、見事に、シロの術中に嵌ってしまった。
シロって、幼女に見えるけど、実は、俺より歳上なんだよね。
シロに、最初に会ったのは、俺が初めて転職した武道家時代。
その当時のシロは、普通のアラクネで、しかもナイスバディのSMの女王様みたいだった。
シロは森の中でも、結構強くて、その当時の俺は倒すのがやっと。
実際、1ヶ月間、素手で殴り続けて、やっと倒す事が出来たのだ。
そして、倒した後、シロは、
仲間になりたそうな顔をして、俺を見ていたのだ。
俺は、SM女王様など恐ろしいし、例えナイスバディでも、下半身蜘蛛の女などノーセンキューなので、そのままシロを置いて、森の泉に帰ったんだけど、あろう事か、シロは、ストーカーになって、俺に着いて来てしまったのであった。
俺も、何度も俺の縄張りから出ていけ!と迫ったが、シロは、自分のご主人様になってくれと一点張り。
どうやら、今迄、女王様をやってたのだが、俺に1ヶ月間も、みっちり殴り続けられ(調教され)、Mに目覚めたとか。
そんな話を聞くと、余計に引いて、追い出そうとしたのだが、テコでも動かない。
しかも、俺と1ヶ月間も戦い続け、足も何本か欠損してるし、血だらけだし、物凄く鉄臭く、汗臭かったのだ。
なので、俺はどうにも耐え難く、シロを無理矢理、森の泉に入れてみたのだ。
もしかしたら、足の欠損とかも治るかもしれないと思って。
だけど、やっぱり、シロは魔物だったので、体が溶けてきて、もう死んだな。と思ってたんだけど、どうにか体が縮んだだけで、死ぬのは間逃れたみたい。
しかも、痛気持ちいいとかいう始末。
どんだけ、Mっ娘になってしまったんだと思ってたら、毎日、快楽を得る為に森の泉に入り続け、そのうち体も真っ白になり、今の白い幼女のアラクネの姿になったのだった。
だから、幼い少女の姿でも、中身は狡猾な女王様のアラクネ。いや、Mっ娘か。
兎に角、純粋無垢なセリカ姫を騙す事など、簡単なのである。
そんな感じで、ホンワカした雰囲気のセリカ姫の部屋以外の城の中は、大変な事になっていた。
シロに立ち向かった、兵士達は、シロが出した糸で、全員簀巻き。
それも、伝説の魔物であるアラクネの糸なのだ。ほどくのも難しい。
しかも、シロは、森の泉に入って聖属性の魔法まで使えるユニーク種、しかも進化までしてアラクネαになってるので、シロの糸はヤバすぎるのだ。硬さも、柔らかさも、鋭さも、粘着力まで、自由自在。
ご主人様である俺の言いつけを守って、人間を殺さないように、糸の鋭さや硬さを調整してるが、それでも人間の力ではほどけない。
結局、王家に伝わる、エクスカリバーを持ち出して、糸を切ってほどいたとか。
本当に、大変だったね。
だけど、シロの糸って、人間社会では、目ん玉飛び出るほどの、ビックリする値段らしくて、カーランド王はホクホクだったみたい。
だって、人間世界では、エクスカリバーしか切れない糸なんだよ。
この糸で下着を作れば、ミスリル鎧より強度があるパンツが出来上がってしまうのだ。
ヤバいよね。
ーーー
ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
シロは、森の精霊さんのストーカーだったんですね。しかも、昔の姿は、ナイスバディのSM女王様。森の精霊さんにボコられて(調教されて)、Mっ娘の僕っ娘に。
結構、凄いドラマがあったみたいです。
面白かったら、復活の呪文【お気に入り】とか、感想をくれると嬉しく思います。
0
お気に入りに追加
248
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
エラーから始まる異世界生活
KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。
本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。
高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。
冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。
その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。
某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。
実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。
勇者として活躍するのかしないのか?
能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。
多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。
初めての作品にお付き合い下さい。
いつのまにかドラゴンでした
すなる
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの赤羽田イザ。
残業や休日出勤ラッシュでデスマーチな日々を送っていた。
ある日、イザはいつもの様に一人残業をしていると急に意識が遠のいた。
すると目の前に現れた自称神様。
『この世界であるべき姿に変えてあげる』
といきなりドラゴンにされてしまう。
何も分からないまま世界を救ってくれと無茶振りをされに自称神様から異世界に放り出されてしまった。
魔法あり、モンスターありのファンタジーな世界にいきなり放り出され困惑するドラゴンのイザ。
実はとんでもないチート能力を持っていることに徐々に気がついていく。
いきなり放り出された世界を救うために奮闘するドラゴンの異世界生活ストーリーがはじまる。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ズボラ通販生活
ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる