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274. 一難去ってまた一難

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「姫! 俺はもう大丈夫だ!
 お前は、俺なんかを守らなくていいんだよ!
 初めて会った時、言っただろ。
 姫の事は、俺が守ってやるって」

「ハイなのです!」

 姫の顔が、ぽわっと明るくなる。
 それと同時に、少し尖った耳も赤くなった。

「先ずは、ペロを【聖級結界】の外に出す!」

「マスター! 今、この場所にペロが居なくなったら、直ぐに敵の悪魔達に飲み込まれてしまうのです!」

 姫が悲愴な顔をして、俺に反論してくる。
 いつも俺の意見に対して同意しかしなかった姫が、自分で考えて俺に意見できるまでになったと思うと、少し感慨深くなる。

「姫、大丈夫だ! 策はある。
 失敗に思われたサンアリの作戦は、あながち間違ってない。

 ただ、誤算だったのは、姫とペロが【聖級結界】内で、飛べなかった事だけだ!

 ペロが【聖級結界】の外で、メリル達に加わり巨大魔法陣をリジェクトできれば、こんなにたくさん【聖級結界】に穴を開けられる事はなかったし、姫が【聖級結界】内で飛べれば、敵の悪魔達に遅れを取る事は無かったはずだ!」

「でも、飛べないペロが巨大魔法陣をリジェクトするのに役にたつのですか?」

「ペロが飛べないのは、大気中の魔素が足りないだけだろ。
 そしたら【聖級結界】から離れれば良いだけだ!」

「ペロが居なくなった分の【聖級結界】の中の戦力はどうするのですか?
 ペロが居なくなったら、この場所が落ちるのも時間の問題です!」

 姫は、尚も俺に意見する。

「それも考えている。『メリル! 聞こえるか?』」

『ハイ! サイト様! 聞こえております!』

 メリルが念話で応答する。

「悪いが、デーモン達を再召喚させても、直ぐには其方に回す事は出来ない!」

『……で……ですが、それでは巨大魔法陣をリジェクト出来なくなり、【聖級結界】に光のレールガンをたくさん撃ち込まれてしまいますが……』

「それは大丈夫だ!
 代わりにペロを其方に向かわせる!」

『ペロ様が? ペロ様は飛べなかったのではないのですか?』

「【聖級結界】内では飛べないが、【聖級結界】から離れれば、飛べる筈だ!
 取り敢えずペロを向かわせるから、それまで何とかしてくれ!」

『分かりました! 命に替えても巨大魔法陣をできるだけたくさんリジェクトしてみせます!』

「そ……そこまで気張らなくていいぞ。
 サンアリの事だ。何も言って来ないという事は、何かもう既に策を練っている筈だしな」

『ハッ! 死なない程度に、極限まで頑張ります!』

 メリルが、理解不能な日本語で返答してきた。

「メリルとの話を聞いていたな! 姫! ペロ!
 姫は倒されてしまったデーモン部隊の再召喚!
 ペロは走って【聖級結界】から出て、そして空を飛べる距離まで離れたら、メリルに合流して指示を仰げ!」

「ハイなのです!」

「ワン! ワン! ワン!」

 ペロは【聖級結界】の外に向かって走り出し、姫は倒されてしまったデーモン達を再召喚する。

 姫がデーモン達を再召喚すると100人近くのデーモンが現れた。
 よく見るとブリトニー付きのデーモンメイドまで混じっている。

「3分の1も殺られていたのか……
 それに部隊の隊長であるブリトニー付きのメイドまで……」

「面目無いです……
 最後まで巨大魔法陣をリジェクトしようと試みていたのですが、ギリギリ間に合わなくて光のレールガンに巻き込まれてしまったのです……」

 ブリトニー付きのメイドが、申し訳無さそうに謝罪する。

「謝る事はないぞ!
 お前は俺達の為に、ギリギリまで頑張ってくれていたのだろ!
 それに丁度良かった!
 お前はこれから再召喚されたデーモン部隊を率いて、この【聖級結界】内にいる敵の悪魔達の殲滅する部隊の指揮をとってくれ!
 空を飛べない俺達と敵の悪魔達とでは、相性が悪すぎて手を焼いていたんだ!」

「了解です! グランドマスター!
 直ぐに敵の悪魔軍団の殲滅任務にあたります!」

 ブリトニー付きのメイドが率いるデーモン部隊は、【聖級結界】の中を縦横無尽に飛び回っていた悪魔軍団を蹴散らし始める。

「やっと落ち着いてきたな。
 姫。今のうちに、死んでしまった兵士達を回復魔法で生き返らせてやれ」

「ハイなのです!」

 姫は、【聖級結界】内、全体に回復魔法をかける。

 すると、完全に消し炭になっている者を除いて、味方の兵士が生き返った。

「ウオォォォォォォーー!!」

 死んだ兵士が突然生き返った事により、一時的に兵士達の士気が上がる。

「姫様がいる限り、俺達は負けないぞ!」

 兵士達は剣を持ち、ブリトニー付きのメイドが率いるデーモン部隊によって倒されて、地面に落下してきた敵の悪魔達にトドメをさしていく。

「第一陣歩兵部隊! 魔法部隊! 上級結界魔法を張れ! それ以外は盾で防御!」

 第一陣歩兵部隊大将ガルム·ロマンチックの号令がこだまする。

 どうやらまた、光のレールガンが飛んで来るようだ。

 俺は恐る恐る上空を見上げる。

「ウッ!……今度は、先程より多いんじゃないのか……
 30個以上の魔法陣が展開している……
 まだペロは、メリルの元に到着してないのか!」

 俺はあまりの巨大魔法陣の多さに驚愕し、額にベトっとした生温い汗が垂れるのを感じる。

「デーモン部隊! 急いで上級結界を展開! 光のレールガンに備えろ!」

 ブリトニー付きのメイドも、デーモン部隊に戦闘を一旦やめさせ、レールガンに備えさせる。

 チュドチュド、チュドドドドドドオオオォォォ……ン!!

 北の大魔王ベルフェゴールの悪魔軍団による無慈悲な光のレールガンが、【聖級結界】に三度《みたび》落とされた。
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