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263. 余裕なのニャ!

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 ドッカーン!!

 ベルフェゴールの直ぐ手前で、ブリジアが放った巨大な火球が弾かれる。

「クッ! 結界か!」

 ブリジアが苦虫を噛み潰し、顔をしかめる。

「儂が、敵かもしれないと思っておる者の目の前で、何の対処もせず、素っ裸で腰を振っている訳がないであろう!
 この王の間には特殊な結界が張られていて、儂に敵意がある者の攻撃は、全て弾かれる仕組みになっているのだ!」

 ベルフェゴールがブリジアに、薄ら笑いをしながら言い放つ。

「それでは、これならどうじゃ!」

 ベルフェゴールの周りに、重なるようにして何百もの魔法陣が展開される。

 ズダダダダダダーン!!

 ベルフェゴールに何百もの火球が降り注ぎ、ベルフェゴールの辺り一帯に白い煙が覆われる。

「無駄だと言っておるのだ!
 儂がこの部屋にいる間は、例え伝説の神獣であるお前であっても、儂に傷の1つも負わせる事は出来ぬわ!」

 ベルフェゴールは煙の中から、無傷の状態で現れる。

「ハァハァハァ……妾の攻撃が全く効かぬとは……」

 ブリジアは全力の魔法を全て弾かれ、片膝を付き、肩で息をしている。

「ここは何千もの歴史がある漆黒の森の王宮なのだぞ!
 賊に対する対策は、儂が何もしなくても最初から施されておるわ!」

 ベルフェゴールが、玉座の前まで歩いて行き、玉座の背もたれの横にあるボタンを押した。

 ガコン。

 ベルフェゴールがボタンを押すと、ブリジアが居た場所に、突然落とし穴が現れ、ブリジアは中に落ちていってしまった。

「落とし穴の中は、特殊な結界が張ってある。
 例え伝説の神獣であったとしても、破れないであろう!
 昔のよしみで殺しはしないが、ガブリエルを始末するまで、そこで大人しく待っておるのだな!」


 ーーー

「それではボス部屋チャレンジです!」

 派手な昔のイタリア製のスーツみたいなのを着ているアマイモンが、楽しそうに宣言した。

 俺達は現在、1800階層ボス部屋の前にいる。
 昨日はしっかりと睡眠をとり、準備も万端だ。

「アマイモン! 質問だが、魔法は使っていいのか?」

「うーん……
 そうですね。ゴトウさん、姫様、ブリトニーさんは闘気のみ、アンさんは魔法でも何でも使っていいですよ!
 今回の戦いのHP管理は、アンさんにお願いします!」

「了解です! そしたら僕が【敵対心】のスキルを使うから、いつものようにヒットアンドアウェーで行こう!」

「OK!」

「ハイなのです!」

「ハイニャ!」

「ワン! ワン! ワン!」

 アンちゃんが、いつものように作戦を立案する。
 というか、いつも通りの作戦だ。

「ペロさん達は、今回は参加しない方向でお願いしますね!」

「クゥーン……」

 アマイモンの突然の発言で、ペロ達は悲しい鳴き声をあげる。

「ペロ! 元気だせよ!
 タコ侍ロードを倒し終わったら、『ミノ1番』で、シャトーブリアンのお肉を腹一杯食べさせてやるからな!」

「ワン! ワン! ワン!」

「ペロが、『ご主人様! ありがとう御座います!』 と、言っているのです!
 『これからもペロ1、ペロ2、ペロ3は、ご主人様に絶対の忠誠を誓う!』と、言っているのです!」

 どう考えても、そんなに長く話していたようには聞こえなかったのだが、姫が、そう言っているのならそうなのだろう。

「皆! それじゃあ行くよ!」

 アンちゃんが勢いよくボス部屋の扉を開けて、【敵対心】を発動する。

 俺達もいつものようにアンちゃんの後ろに、走って移動する。

 カキン! カキン! カキン!

 アンちゃんに向かって、タコ侍ロード8匹による激しい斬撃が降り注ぐ。

 アンちゃんの神級レベルの大盾に、アンちゃんの魔素を纏った闘気が絡みつき、大盾はその強度を増しているようだ。

 普通、魔素には色が付いていないのだが、アンちゃんの魔素の色も姫程ではないが禍々しい赤黒色が付いている。

 多分、アンちゃんもゴトウ族になった事によって、俺や姫の魔素と同化して魔素が禍々しい赤黒色になったのだろう。

 S10上位クラスのタコ侍ロードの攻撃でさえ、難なく防御できてしまっている。

「それじゃあ! 行くニャ!」

 まず最初にブリトニーが飛び出した。

 カンカンカンカン!

 ブリトニーとタコ侍ロードとの激しい打ち合いが続く。

 タコ侍ロードは、タコ侍ジェネラルとは全く強さが違う。

 ブリトニーのスピードについてきているのだ。

 実際にはブリトニーの方が早いのだが、タコ侍ロードは8本の腕に全て日本刀のような刀を持っている。

 その8本の腕で、ブリトニーに休みなく打ち込んでくるのだ。

 そして、全ての斬撃に意味があり、ヤラシイ所ばかりを狙ってくる。

「コイツ! 滅茶苦茶強いのニャ!」

 ブリトニーでさえ、押され気味だ。
 タコ侍ロードがギルド所属であったなら、ここにいるタコ侍ロードは全て剣帝になれるだけの実力を持っている。

「ウニャニャニャニャ!」

 ブリトニーが、スピードを上げて盛り返えそうとすると、別のタコ侍ロードまでも参戦してきて、ブリトニーを圧倒する。

「ダメニャ! 逃げるのね!」

 ブリトニーは転げるように、アンちゃんの大盾の後に逃げてきた。

「ブリトニー姉様! 闘気は使わないのですか?」

「アッ……そうだったニャ……
 剣で闘う時は、いつも闘気を使っていなかったので忘れていたのニャ!」

 どうやら、ブリトニーはうっかりしていたようだ。

 というか、今のブリトニーとタコ侍ロードの動きを、俺は殆ど目で追う事ができなかったというのに、闘気を使うのを忘れていたブリトニーは、まだまだ余裕があるという事か……

「それじゃあ、闘気を使うのね!」

 ブリトニーが仕切り直して、タコ侍ロードに斬りかかっていった。
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