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172. 肉好き同盟
しおりを挟む「お互い、冒険ギルド会議のルーキー同士、協力して、冒険者ギルドを良くして行こう!」
『天空の翼』団長グラムが、目を輝かせながら手を差し出してきた。
多分、この人は本気で冒険者ギルドを良くしようと考えているのだ。
他のギルドの考えは、皆違うと思うけど……
冒険者ギルド会議は、自分達のギルドが、旨い汁を吸う為に利用する場だ。
実際に、西の大陸の神聖フレシア王国も、国を挙げて冒険者ギルド会議にギルドを送り込んできている。
その名も、『神聖フラシア』
ギルド名が、そのまま国の名前だ。
神聖フレシア王国は、西の大陸で神聖視されている龍を崇める大国である。
ギルドの理念は、表向き龍信仰を広める事であるが、実際には、冒険者ギルド会議を、国の発言権を強める為に利用しているだけだったりする。
まあ、俺達も利用しようとしているのだが……
「グラムさん! 協力していきましょう!」
取り敢えず、無難に話を合わせておく。
サンアリの方をチラッと、見ると、グッジョブ! と目で合図してきた……
ウィィーン
また魔道式エレベーターが開いた。
中からラガーマンのような屈強な男達4人が出てきた。
「ゴトウ殿! 顔見知りが来ましたので、少し宜しいですかな!」
サンアリが、ラガーマンの方に寄って行く。
「お久しぶりです!『肉好き同盟』の皆様方!
私、『ミノ一番』のオーナーをしておりますナンコー·サンアリと申します!」
「おおー! 誰かと思ったら『ミノ一番』の!
モフウフに遠征に行った時は、いつもお世話になっております!
やはり、モフウフの『ミノ一番』で食べるミノタウロスのお肉は、他の場所のミノタウロスのお肉よりも、断然旨いですからな!ワッハハハハ!」
ラガーマン達が、豪快に笑う。
「有難うございます!
その『ミノ一番』なのですが、今回、同じモフウフの街のギルド『犬の尻尾』と『シルバーウルフ』さんと協力して『ウルフデパート』に『ミノ一番』ムササビ支店をオープンする事になりました。
そこで、常連さんの『肉好き同盟』さんに、2週間後のオープン前のプレオープンに招待しようと思いまして!
お代は全てこちら持ちで、『ミノ一番』のお肉を食べ放題にしたいと思っております!」
「ほ……本当か?
俺達『肉好き同盟』に、ミノタウロスの肉食べ放題などやってしまっては、お店が潰れてしまうぞ!」
「大丈夫でございます! モフウフのギルド『犬の尻尾』が協力してくれたお陰で、『ミノ一番』はミノタウロスのお肉の量産に成功しましたので、お好きなだけお食べ下さいませ!
その代わりといいますが、今回の会議で我々モフウフの『犬の尻尾』と『シルバーウルフ』の提案に賛成してもらえると有難いのですが」
「そ……それは、提案次第だが……」
「大丈夫でございます!
これは漆黒の森の問題なので、ムササビに拠点を置く『肉好き同盟』さん達には、何一つとして、損な事はありませんので!」
「そ……そうか! それなら協力しよう!
その代わり、ミノタウロスの肉食べ放題の件、宜しく頼むぞ!」
「楽しみに、お待ち下さいませ!」
何やら、サンアリは上手くやっているようだ。
ウィィーン
また魔道式エレベーターの扉が開く。
「エリスさん達だ!」
アンちゃんが、エリスさん達に気付き声をかけた。
エリスさんとシャンティーさんは、俺の顔を見るやいなや、顔が見る見ると真っ赤になり、
「ゴ……ゴトウ·サイト! わ……私達に近づくな! 」
と、シャンティーさんは そう言うと、エリスさんを連れて会議室の方に逃げて行ってしまった。
「いったい、どうしたというんだ?
俺が何をしたっていうんだ?
俺はエリスさん達に嫌われてしまったのか?」
何故だがアンちゃんが、俺から目を背けて、斜め下を向いている。
心当たりがあるのだろうか?
「皆様、そろそろ会議室にお入りくださいませ!」
冒険者ギルド本部の職員と思われる、優しそうな顔をした、初老の執事風の男性が声をかけてきた。
俺達は、言われるまま会議室に入室する。
「それでは、10年振りに新メンバーが加わりましたので、点呼を取ります!
ギルドランキング第1位『鷹の爪』さん!」
『鷹の爪』の団長と思われるキラキラした鎧を身につけている男が、無言で挙手をした。
「第2位『神聖フレシア』さん!」
「フン! 今回は2位か!
前回は、たしか3位だった筈だから良しとするかのう! 」
良い身なりの、偉そうにしている12、3歳位にしか見えない坊ちゃんがブツブツ言っている。
「第3位『シルバーウルフ』さん!」
「ウム!」
エロCEOバージョンのブリジアは、目を閉じたまま軽く頷いた。
やはり、エロCEO状態のブリジアは貫禄がある。
長生きなので、この会議の一番の古株であると言っていたが、目をつぶったまま軽く頷くなどという高等技術を自然とやってしまうとは、流石と言うしかない。
いつも裸でワンワン言っている幼女とは、とても同一人物だとは思えない。
「第4位『犬の尻尾』さん!」
「ハイ! 『犬の尻尾』団長ゴトウ·サイトです!
若輩者ではございますが、よろしくお願い致します!」
俺は勢い良く席を立ち、日本式のとても丁寧な挨拶をし、90度の礼をした。
フフフフ。初めが肝心なのだ。
最初に悪い印象を持たれてしまったら、その後もずっと悪い印象が続くと、何かの本に書いてあったのだ!
コレだけ完璧な清々しい挨拶をすれば、誰もが良い印象を持つ筈!
「あっ……ハイ……
やはり、ルーキーは清々しいですね……」
進行役のお爺さんが、引き気味な感じで言葉を返してくれた。
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