167 / 286
167. 天使さん
しおりを挟む「所で、アンちゃん達は、なんで冒険者ギルド本部にいるの?」
エリスさんが、不思議そうな顔をして聞いてきた。
「ええとですね。僕達のギルド『犬の尻尾』がギルトランキング10位入りしたんです!」
「えぇー! アンちゃん、冒険者になっていたのぉ?
そしたら、『犬の肉球』に入ってくれれば良かったのにぃー!
今、『犬の肉球』はメンバーが足りないんだよ!
来年には、ギルドの更新があるのに!
団長は行方不明だし、副団長のアンちゃんのお父さんは、最近忙しすぎて、ダンジョン攻略する時間が無いとか言ってるし!
来年までに、新メンバーを1人加入させないと、『犬の肉球』が無くなっちゃう危機なのに……」
エリスさんが涙目で、というか、泣き出しながら話している。
「すみません、エリスさん。
僕は、お父さんの力を頼らずに、エリスさんみたいに1人で南の大陸に出て、仲間を見つけ、冒険してみたかったんです!」
何故か、アンちゃんも泣きそうな顔をしながらも、自分の思いの丈をエリスにぶつける。
「そうだったよね! アンちゃんは昔から、そう言ってたか!
『僕は大きくなったら、1人で南の大陸に行き、仲間を見つけて、冒険するんだ!』って、言ってたもんね!
私こそ、ごめんね!
すっかり忘れてたよ……」
「エリスさんは悪くないです!
僕はエリスさんの『犬の肉球』に入れませんけど、新しいメンバー探しは、応援します!」
「んっ?何で、新メンバーを入れないとギルドが無くなるんだ?」
「サイト君、『犬の尻尾』を作る時、団長と副団長の2人を決めて、冒険者ギルドに提出した筈だよね!」
「ああ、あの時は、アンちゃんがまだいなかったから、俺が団長で姫を副団長にしたんだ」
「ギルドを作るには、ルールとして最低2人のメンバーが居ないと承認されないんだよ。
現在、『犬の肉球』は実質、エリスさんとお父さんで運営してるけど、今の段階で、既にお父さんはドロップアウトしてるような感じなので、人数が足りて無いんだよ!」
「そんな事なら、大丈夫だ!
俺が『犬の肉球』に移籍するぞ!」
何という事だ!
エリスさんにお近づきになれるチャンスが、向こうからやって来た。
これは絶対にものにせねば!
「ダ……ダメなのです! マスターはずっと『犬の尻尾』の団長で、私のマスターなのです!」
姫が、俺のマントの裾をギュッと握りしめ、目をウルウルさせながらも、俺の目をしっかりと見据えて、自分の傍から何処にもいかないでと訴えている。
可愛い。
可愛すぎる。
天使だ。
天使さんだ。
俺の息子が、はち切れんばかりに、ビンビンに反り返り、そのまま射精した。
ドビュッ!! ドビュッ!! ドビュッ!! ドビュッ!!
すかさず、マントの中の影からバハオウが現れ、誰にも悟られずに、お口でスペルマをキャッチする。
ほんのコンマ0.2秒位で、射精するのを感知し、0.4秒でパンツを脱がし、0.5秒には、既に俺のチンコをお口に咥えて、スペルマが射精されるのを待っているのだ。
その為、俺はパンツを汚す事なく、射精できてしまう。
流石は、男の気持ちが解る『くノ一』、バハオウだ。
ドンドン、技を極めていく。
多分、最初の頃は、スペルマを口でキャッチするのに遅れてしまい、顔中がスペルマ穢されてしまう事もあっただろう。
しかし、バハオウは精進を続け、射精の兆候を察知してから、わずか0.5秒後には、俺のチンコを咥える事が可能になっているのだ。
俺はマントの中で、バハオウがチンコを咥えた瞬間を感じる事ができるので、安心して、勢い良く射精する事ができるのである。
「マスター……」
姫が唇を噛みしめながら、こぼれ落ちそうな涙を瞳にいっぱい貯めて、俺の顔を真っ直ぐにじっと見つめ続けている。
姫は、必死なのだ。
また、家族がいなくなってしまうのが嫌なのだ。
俺は姫に、ゴトウ族という新しい家族を与えた。
姫は異常な程に、ゴトウ族になった者に慈愛を与える。
ついさっきまで、お互い殺し合いをしていた者でさえ、ゴトウ族になった者に対しては、コロッと態度が変り、優しく面倒をみようとするのだ。
余談だが、姫が自然とやっているこの行為は、ヤクザが人を脅して怖い思いをさせてから、急に優しくなって、緊張から解き放ち、この人は実は良い人かもしれないと勘違いさせて、人を思い通りに操る技術と、丸っきり一緒なのだが……
少し、脱線してしまったが、兎に角 姫は、家族、ゴトウ族をとても大事に思っている。
姫的には、その要である俺が居なくなるのが嫌なのだ。
いつもの姫の行動原理の場合、俺がエリスさんのいる『犬の肉球』に移籍すると言えば、必ず自分も一緒に付いて行くと言う所だが、今回は、はっきりと「ダメなのです! マスターはずっと『犬の尻尾』の団長で、私のマスターなのです!」と、拒否反応を示した。
こんな事は、今までなかった。
今の姫は、俺も大事だが、ゴトウ族もとても大事なのだ。
やはり、俺はエリスさんの所属する『犬の肉球』には行けない……
俺は、姫にゴトウ族という家族を与えてしまった。
姫は、俺の事を『自分を助けてくれた白馬の王子様』だと言っていたが、現在は、本当の父親の様にも思っているのだろう。
与えるだけ、与えて去っていくのは、無責任というものだ。
俺が『犬の尻尾』を去る行為は、姫的には、家族が崩壊してしまう事と同じ事なのだ。
姫は、自分の両親が北の大魔王に殺された事を、南の大陸ではよくある事なので、気にしていないと言っていたが、多分嘘だ。
架空の家族のゴトウ族を、これだけ大事にしてるのに、本当の家族を蔑ろにする事などありえる筈がない。
俺はこれ以上、姫の家族を、姫の思いを奪う訳にはいかない。
「エリスさん! さっき俺が言った、『犬の肉球』に移籍する! という話は忘れて下さい!
俺には、姫を、『犬の尻尾』を護り続けるという義務がありました!」
「マスター!!」
姫の顔が、パッ!! と、明るくなる。
瞳に溜まっていた涙も、安堵の為か、一斉に溢れ出す。
俺に自分の意思を正しく伝える為に、泣くのをグッと我慢していたのだろう。
それ程まで、俺と離れたくなかったのか……
俺にとって、理想的で完璧な女性のエリスさんの気を引くのも大事な事だが、
そもそも、俺の事を本当の家族、
本当の父親みたいに思っている姫を見捨てる事など、小心な俺には出来よう筈もなかったのだ。
10
お気に入りに追加
2,621
あなたにおすすめの小説
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
サファヴィア秘話 ―月下の虜囚―
文月 沙織
BL
祖国を出た軍人ダリクは、異国の地サファヴィアで娼館の用心棒として働くことになった。だが、そこにはなんとかつての上官で貴族のサイラスが囚われていた。彼とは因縁があり、ダリクが国を出る理由をつくった相手だ。
性奴隷にされることになったかつての上官が、目のまえでいたぶられる様子を、ダリクは復讐の想いをこめて見つめる。
誇りたかき軍人貴族は、異国の娼館で男娼に堕ちていくーー。
かなり過激な性描写があります。十八歳以下の方はご遠慮ください。
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
社畜サラリーマンの優雅な性奴隷生活
楓
BL
異世界トリップした先は、人間の数が異様に少なく絶滅寸前の世界でした。
草臥れた社畜サラリーマンが性奴隷としてご主人様に可愛がられたり嬲られたり虐められたりする日々の記録です。
露骨な性描写あるのでご注意ください。
憧れの剣士とセフレになったけど俺は本気で恋してます!
藤間背骨
BL
若い傭兵・クエルチアは、凄腕の傭兵・ディヒトバイと戦って負け、その強さに憧れた。
クエルチアは戦場から姿を消したディヒトバイを探し続け、数年後に見つけた彼は闘技場の剣闘士になっていた。
初めてディヒトバイの素顔を見たクエルチアは一目惚れし、彼と戦うために剣闘士になる。
そして、勢いで体を重ねてしまう。
それ以来戦いのあとはディヒトバイと寝ることになったが、自分の気持ちを伝えるのが怖くて体だけの関係を続けていた。
このままでいいのかと悩むクエルチアは護衛の依頼を持ちかけられる。これを機にクエルチアは勇気を出してディヒトバイと想いを伝えようとするが――。
※2人の関係ではありませんが、近親相姦描写が含まれるため苦手な方はご注意ください。
※年下わんこ攻め×人生に疲れたおじさん受け
※毎日更新・午後8時投稿・全32話
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
全ての悪評を押し付けられた僕は人が怖くなった。それなのに、僕を嫌っているはずの王子が迫ってくる。溺愛ってなんですか?! 僕には無理です!
迷路を跳ぶ狐
BL
森の中の小さな領地の弱小貴族の僕は、領主の息子として生まれた。だけど両親は可愛い兄弟たちに夢中で、いつも邪魔者扱いされていた。
なんとか認められたくて、魔法や剣技、領地経営なんかも学んだけど、何が起これば全て僕が悪いと言われて、激しい折檻を受けた。
そんな家族は領地で好き放題に搾取して、領民を襲う魔物は放置。そんなことをしているうちに、悪事がバレそうになって、全ての悪評を僕に押し付けて逃げた。
それどころか、家族を逃す交換条件として領主の代わりになった男たちに、僕は毎日奴隷として働かされる日々……
暗い地下に閉じ込められては鞭で打たれ、拷問され、仕事を押し付けられる毎日を送っていたある日、僕の前に、竜が現れる。それはかつて僕が、悪事を働く竜と間違えて、背後から襲いかかった竜の王子だった。
あの時のことを思い出して、跪いて謝る僕の手を、王子は握って立たせる。そして、僕にずっと会いたかったと言い出した。え…………? なんで?
二話目まで胸糞注意。R18は保険です。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる