150 / 286
150. 原田 大吉
しおりを挟むハラ·キリに案内してもらい、そのまま宿屋を出て、そのままハロハロの王城に到着した。
「ご食事の用意ができておりますので、そこで城主が、ゴトウ様とガブリエル様をお待ちしております」
ハラ·キリに城を案内されながら歩いていると、大きなテーブルがある部屋が見えてきた。
その部屋の前に身なりの良いお爺さんが、俺達を見つけて深々と頭を下げている。
「ダイキチ! 久しぶりじゃな!」
姫が頭を下げているお爺さんに、元漆黒の森の配下だった者にだけに使う喋り方で、話しかけた。
「姫様! お久しぶりでございまする!
ご無事で何よりでございまする!
爺は心配で心配で、眠れない日々が続きましたぞ!」
どうやら、姫と、このダイキチという日本人のような名前の爺さんは知り合いのようだ。
「ダイキチ! こちらにおられる方が、我が主ゴトウ·サイト様じゃ!」
姫が俺を紹介をすると、ダイキチ爺さんは、俺にも深々と頭を下げ、「私はハロハロの城主を努めさせてもらっております、ハラダ·ダイキチでございます。
ゴトウ殿、姫様をお助け下さり誠に有難うございます」
ハラダ·ダイキチ?
日本人の名前なのではないのか?
そういえば、ハラ·キリも爺さんも着物に似た服装を着ている気がする。
「もしかして原田大吉さんは日本人ではないのか?」
俺は疑問を直球で質問してみた。
「はて、日本人?何の事ですかな?」
爺さんは、日本人を本当に知らなそうな顔をしている
「日本人ではないのか?その原田という苗字は、日本の苗字だと思ったのだが?」
「確かに、祖先はこの世界の住人ではなかったとの言い伝えはありますが、もう何千年も前の話になります故、私には日本人と言われてもピンッと、きません。
確か、ハラダ家の始祖様由来の家宝がありますが、見てみますかな?」
大吉爺さんが、そう言うとハラ·キリがすぐに何かを持ってやってきた。
何かの布に巻かれた棒状の物を、ハラ·キリは大吉爺さんに渡す。
大吉爺さんは、丁寧に布から中の物体を取り出す。
「ん?! それは日本刀じゃないのか?
間違いないぞ!
それは日本刀だ!
大吉爺さんの祖先は、多分、俺と同じ場所の出身のようだぞ!」
「そうでございましたか。私の祖先とゴトウ殿が同じ出身でございましたか。
そしたら、このニホントウを手に取ってご覧になりますか?」
大吉爺さんに日本刀を渡され、鞘からスゥーと、剣を抜いてみる。
んっ! 銘が彫ってある。
『正宗』確か鎌倉時代の刀だった筈だ。
俺でも知っている有名な刀鍛冶だ。
何やら、刀身から魔法的な何かを感じる。
「これは『正宗』と彫ってありますね!
日本でもかなり有名な鍛冶師が打った刀ですよ。
それからこの刀には、何か魔法的な何かを感じますが、これは一体何ですか?」
「おぉー!! その字が読めるのですか!
そうです。
その刀は確かに『マサムネ』です!
元々は、ただ良く斬れるだけの刀だったらしいのですが、何千年も祖先達が代々使っていくうちに、魔法剣になったと言われています!」
「サイト君、その刀はとても有名な刀だよ!
刀としては、エクスカリバーの次くらいに有名な刀で、『マサムネに斬れぬ物無し』と言われる位、凄い神級アーキテクチャーなんだよ!
しかも、ダイキチさんは現在は現役を退いているけど、元『剣神』だよ!
30年前は、間違いなく最強の一角に入っていた人物だよ!」
この優しそうな爺さんが、そんなに大物だったの……
しかし、気になる事がある。
今の所、【聖級結界】を斬れるのはスキルスッポンソードとエクスカリバーだけと言われていたが、この『正宗』でも斬れるんじゃないのか?
なにせ『マサムネに斬れぬ物無し』と言われてたんだろ。
とても気になる……
「大吉さん、斬ってもらいたい物があるんだが、お願いできるか?」
俺はそう言うとと1メーター四方の【聖級結界】を張った。
「構いませんよ。この結界を斬れば宜しいですかな?」
大吉爺さんは、『正宗』を受け取り、上段に構えた。
大吉爺さんの身体から膨大な闘気が溢れ出す。
大吉爺さんの眼がピカッ!! と、光る。
「チェッスト!!」
スドドドドォォォォォォォォォン!!
部屋中に凄まじい轟音が響きわたる。
「一刀両断!! ジゲン流に斬れぬ物無し!!」
大吉爺さんの決めゼリフが決まる。
【聖級結界】を見ると、真っ2つに両断されていた。
まさかの示現流。
原田大吉の祖先は、薩摩藩士か。
示現流は一撃必殺の剣術。
正に、【聖級結界】を力業で破壊したという事か。
「痛たたたたた……!
久しぶりに、本気を出したら腰にきたようですじゃ!」
姫がすぐに、大吉爺さんに回復魔法をかける。
「おぉぉー! 姫様、魔法が使えるようになりましたか!
腰の痛みが、一瞬でどこかに行ってしまったようですじゃ!
腰以外の色んな所も、ついでに治ってしまったみたいですじゃ!
10歳以上、若返ったみたいに調子が良くなった気がしますじゃ!」
大吉爺さんが腕をグルグル回して、全開をアピールする。
「マスターに、魔法を使えるようにしてもらったのです!」
姫が嬉しそうに返答する。
「流石は、始まりの魔女様のお弟子様じゃ! ゴトウ殿、本当に姫様に魔法まで教えて頂き有難うございまする!」
大吉爺さんが、再び俺に対して深々と頭を下げる。
剣神にまでなった人物に、これ程深々と頭を下げられると、お尻がムズムズする。
しかし、悪い気はしない。
姫が珍しく懐いているのも分かる気がした。
10
お気に入りに追加
2,621
あなたにおすすめの小説
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜
水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑
★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位!
★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント)
「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」
『醜い豚』
『最低のゴミクズ』
『無能の恥晒し』
18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。
優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。
魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。
ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。
プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。
そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。
ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。
「主人公は俺なのに……」
「うん。キミが主人公だ」
「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」
「理不尽すぎません?」
原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。
※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる