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28. スゥイートルーム

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「『犬の尻尾』さん!」

 先程の受付のお姉さんに呼ばれたので、再びカウンターに戻った。

「登録完了したので、ブレスレットをコチラの石板にかざして下さい!」

「この石板にかざせばいいんですね」

「そうです!」

 石板にブレスレットをかざすと、ブレスレットに文字が浮かんできた。

 ギルド『犬の尻尾』ポイント0
 ゴトウ サイト 
 剣豪lv.5、大賢者lv.5

 いつの間にレベルが上がっている。

「凄いですね!さすが姫様のマスターであらせられますね!
 剣豪と大賢者、どちらともレア職業です!」

 受付のお姉さんが驚いている。


 続いてブリトニーが石板にブレスレットを掲げる

 ギルド『犬の尻尾』ポイント0
 ブリトニー·ゴトウ·ロマンチック
 大賢者lv.3、騎士lv.15、獣戦士lv.52、性奴隷lv.5

「ブリトニーさんまで、レア職業の大賢者に就いているのですね!」

 性奴隷については、敢えてスルーのようだ。


 続けて姫の番だ。

 姫はまだ背が低いので、抱っこしてカウンターの高さまで持ち上げる。

「マスター! ありがとうございますなのです!」

 姫は真っ赤になりながら、ブレスレットを石板にかざした。

 ギルド『犬の尻尾』ポイント0
 ガブリエル·ゴトウ·ツェペシュ
 魔王lv.2、大賢者lv.3、奴隷lv.4


「えっ!  魔王?
 姫様は遂に魔王になられたのですか?」

 受付のお姉さんがびっくりしている。

 いつの間にか、姫の職業欄に魔王が増えている。

「魔王の職業はそんなに凄いのか?」

「魔王には、魔王になれるだけの強さがあるのが絶対条件ニャ!
 それともう1つ条件がありますニャ!
 人を、恐怖により支配する事ができる事。
 それとも、1つの街を己の力だけで支配するかのどちらかができないと、魔王にはなれないニャ!」

 姫は俺を蔑《ないがし》ろにした者に対して、確かにオシッコをチビってしまうほどの恐怖を与えて、強制的に従わせていた。

 強さは、元々姫が持ってた魔素総量に加えて、大賢者レベルの魔法が使えるようになり、神獣まで使い魔にしているので当然魔王クラスの攻撃力を備えている。

 俺と初めて会った3日前は、戦う事も魔法も使えない可愛い美幼女だったのに、3日で魔王クラスになってしまうとは、才能とは恐ろしいものだ……


「姫様は漆黒の森の王座奪還する為に、着々と力をつけて備えていたのですね!」

 受付のお姉さんが興奮して話している。

「私は漆黒の森に何の興味もありません。
 それより、早くマスターの性奴隷になりたいのです!」

「……」

 なんとも言えない沈黙が流れる……

「…そ…そうです…ね
 アッ!そうだ。コアの買取代金!」

 受付の女の子は一旦カウンターを離れてすぐにお金が入っているであろう麻袋を持ってきた。

「グリーンコア298個で149000マーブルになります。 ご確認お願い致します」

 麻袋の中身をカウンターに置いてあるトレイの上に開けてみると、金貨と銀貨が出てきた。

 数えてみると金貨14枚、銀貨9枚あった。

「ハイ。確かに149000マーブル確認しました」

「ありがとうございました。
 またのご利用お待ちしております」

 受付のお姉さんが、深く頭を下げた。


 1日ダンジョンに籠って149000マーブルは悪くない。

 物価はほとんど、前の世界の日本の円と同じだ。

 たった1日で149000円稼げるなんて、冒険者とはなんて儲かる商売なんだ!

「ブリトニー!  冒険者はみんなこんなに儲けているのか?」

「それはないですニャ!
 普通のA級冒険者のパーティでも大体1日1人の取り分は、15000マーブル位なのニャ!
 普通のパーティの火力は魔法使いに頼っていますが、魔素総量に限りがあり、連続して魔法が使えないので休み休みの戦闘になるのニャ!
 しかし、うちのパーティは姫様の膨大な魔素総量により、魔法が使いたい放題なのニャ!
 因《ちな》みに、姫様が召喚されているペロが使う魔法の魔素も、全て姫様が賄《まかな》っているニャ!」

「要約すると、姫が凄すぎるという事か?」

「そうですニャ!
 そもそも神獣を使い魔にした者は、後にも先にも姫様しかおられません!
 しかも、ケルベロスは風魔法と火魔法しか使えないはずなのに、ご主人様のおかげで全属性の魔法が使う事ができます!
 即ち、弱点がなくなったと言う事です!」

「そ…そうか…」

 やはり俺には、姫は分相応なのではないか……

 既に、俺より遥《はる》かに強くなっている。

 俺なんか、1日に数発しか魔法を発動できないのに……

「今回、姫のおかげでたくさん稼ぐ事ができたようだ!
 なので、稼ぎの分け前を与える!
 一人50000マーブルでどうだ?」

「マスター!お金なんていらないのです!」

「マスター!  奴隷が稼いだお金は、全て主人の物になるのが常識ですニャ!
 奴隷にお金を与えるなんて、とんでもないのニャ!」

「しかし、今回俺だけがなにもしてないからな……俺だけがお金を独り占めするなんて悪い気がするな」

「ご主人様は私達に戦わせて、指揮するだけでいいのニャ!
 普通そういうものニャ!」

「そういうものか……
 しかし、姫とブリトニーに感謝の気持ちを示したいのだ。
 そしたら、今日は良い宿に泊まるというのはどうだ!
 ブリトニー!どこか良い宿はあるか?」

「そういう事なら、ご主人様!
 昨日の『妖精のあくび亭』のスゥイートルームに泊まりたいのニャ!
 噂ではお風呂があるらしいのニャ!」

「何!  お風呂があるのか!」

 日本人の俺としては、体を拭くだけでは物足りない。毎日お風呂に入って1日の疲れを取りたいのだ!
 これは是非、妖精のあくび亭のスゥイートルームに泊まるべきだ!

「しかし、問題があるのニャ!
 この街を拠点にしているS級ギルド『カワウソの牙』が、長期逗留してる為に、何年も誰も泊まれない状態なのニャ!」

「そしたら、無理じゃないのか?」

「多分 私達のパーティが頼めば、譲って貰えると思うので大丈夫なのニャ!」


 ーーー


 妖精のあくび亭に着いた。

 1階カウンターの受付で、一応スゥイートルームが空いてるか聞いてみた。

「大変申し訳ないのですが、ただいまスゥイートルームは先客がいて、泊まる事ができません」

 スゥイートルームと聞いて、妖精のあくび亭の支配人が出てきて対応してきた。

「そうですか。やはり駄目ですか」

「そのお客さんと直接話をつけて、譲って貰えれば問題ニャいですよね!」

 ブリトニーが話に割り込んできた。

「お客さん同士の話し合いで解決するなら問題はないです」

「今、そのスゥイートルームを使っているお客さんは居ますかニャ?」

「先程戻られて、部屋にいる筈です」

「話し合いたいので、スゥイートルームまで案内してもらえますかニャ?」

「分かりました。コチラでございます」

 階段を4階まで上がって行くと、小さなエントランスがあり、豪華な扉が1つだけあった。

「ここでございます。
 それでは、私はここまでで退散させて頂きます。
 お話し合いが済みましたら、1階カウンターにお越しください。
 後、くれぐれも部屋を壊さないでください。
 念を押しますが、話し合いでお願いします」

「ここは私に任せて下さいニャ!」

 ブリトニーが先頭を切り、扉をノックした。

 トントン!

「誰だ!」


「私は始まりの魔女の弟子、ゴトウ サイト様の奴隷、ブリトニーでございます。
 少しお話したいのですが、よろしいですか?」

「そんな奴は知らん! 帰れ!」


 俺の後から冷たい乾いた空気が流れる。

「本当に良いのですか?
 ゴトウ サイト様の使いを追い払ってしまって!」

「くどいぞ!
 ゴトウ サイトなど知らん!
 そいつが何者であったとしても、奴隷をS級ギルド『カワウソの牙』に寄こす無礼な奴など、どうせろくな奴じゃないだろ!」


 ブチッ!!


 俺の後で何かが切れる音がした。

「ブリトニー!その扉を開けなさい!」

「ハイなのニャ!」

 ブリトニーが扉をこじ開けた。

 スゥイートルームは30畳程の大きさで、部屋の中央に円形の大きなベッドがドンっと置いてある。

 その他にも部屋があるようだが、入口からは見えない。

「な…なんだ!何者だ!」

 部屋の中には確認できるだけで裸の男女が12人位でエロい行為を行っていた。


 『カワウソの牙』はこのエロい部屋で毎日乱交パーティーをしているのか?

 羨ましいぞ!

「私はマスターの奴隷のガブリエル·ツェペシュでございます。
 私のマスターを侮辱する者はなんびとたりとも許しません!」
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