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第三章 王都へgo!

57. 寿限無

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「轟雷降り注ぐ雷雲の遥か上、オリュンポスに住まう全能神よ。愚かなるこの世界の者達に神に鉄槌を。 我が主、至高なる真の最高神卍様の名の元に命ずる!究極的神大魔法アルティメットゴッドマキシマムマジック是宇須轟雷ゼウスサンダーボルト!!」

 クロメの魔法で、ニナナカ城塞都市を囲うように、幾万もの轟雷が降り落ちた。

 街中の人達は、その余りにけたたましい轟音と地響きに腰を抜かし、立って居る事さえできない。

 まさに、全能神による神の鉄槌。

 クロメは、本当になんという魔法を生み出してしまったのだ。
 本当に、人の居る場所に落とさないで良かった。
 一応、クロメも考えて魔法を放っており、ニナナカ城塞都市の何処にいても雷が見えて、しかも、誰も怪我しないように計算し尽くして魔法を放っていたのだ。

『クロメ! もういいからな!十分、シスターはビビってるから、地震も洪水も無し!
 まあ、今の雷のせいで、地震みたいに街が揺れたから、地震も終わった事にすればいいだろ!』

 俺は、クロメがこれ以上やらないように釘を刺す。というか、黒耳族は、闇の住民の筈なのに日中目立ち過ぎなのだ。

 そんな、俺の心配を他所に、

「クックックックックッ。では、シスター質問です?無名な邪神の力を、まだ見たいですか?」

 クロメは、失禁してガクガク震えているシスターに二ヘラ笑いしながら質問する。
 もう、クロメの姿が邪悪な邪神にしか見えないのだけど。

「すみません! すみません! すみません!」

 シスターは、何がすみません!なのか、クロメに、涙ながらに必死に許しを乞うている。
 そりゃあ、怖いよね。神でも起こせそうもない奇跡を起こしちゃってるんだもん。
 城塞都市を幾万ものカミナリのカーテンで覆うって、そんな細かい芸当できたら、いつでも天から神の鉄槌を、好きな場所に落とせると同義だからね。

 多分、クロメはシスター目掛けて、いつでも雷落とせちゃうと思うし。
 それを、卍様の奇跡とか言っちゃうのだろうし。

 俺、本当にどれだけ凄い神に持ち上げられちゃうの?ただ、勝手にクロメが異世界知識で大魔法を作りだして放ってるだけなのに……

「それでは、行きましょうか!」

 クロメは、大魔法をぶっぱなし満足したのか、護衛のクエストを続けようとする。

『無理だから!』

 俺は、思わず、本気のツッコミを入れる。

「はて?」

 クロメは、不思議そうに首を傾げる。

『はて?じゃないだろ!孤児院の子達もお前の事、ビビっちまってるじゃないかよ!』

 そう。孤児院の子達は、あまりの恐怖でガクガク震えて座り込んでしまっているのである。

「ま……まさか……私は嫌われてしまったのでしょうか……」

 クロメは、とても不安な表情をする。

『嫌われたっていうか、恐れられてるんだよ!』

「悪者のシスターから、救ってあげたというのに?」

『別にまだ、シスターから救ってないし、極大魔法を放っただけだろ!』

「で……ですね。ですが、私はこれからどうしたら良いのでしょう?」

『そりゃあ、孤児達の心のケアーとか必要だろうな』

「ならば!」

 合点がいったとばかりに、クロメは再び、呪文の詠唱を始める。

「ジュゲム、ジュゲム、五劫のすりきれ、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶらこうじのぶらこうじ、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助に、我が主、至高なる卍様の名の元に命じる!開運開眼魔眼光弾グッドラックブレシング!!」

 なんか、クロメは落語の話に出てきそうな変な呪文を唱えると、俺をカッ!と、光らせて、卍眼光線を子供達に浴びせた。

『何?今の魔法?』

「長助さんに、開運開眼魔法をかけてもらい、それと同士に卍様の幸運卍ビームを合わせた、将来、幸せになるグッドラック魔法を子供達にかけました。これにより、子供達は、私に感謝するに違いありません!」

 なんか、クロメは自信満々に無い胸を張る。

『それって、将来的にクロメに感謝するかもしれないけど、今ではないよね……』

「そんな筈は」

『よく見てみろよ。子供達、何が起こったのかと、ポカンとしてるぞ』

「そ……そんな……」

 クロメは、ショックのあまり四つん這いに膝をつき、愕然としてしまう。
 ついでに、生まれて初めて冒険者クエストを失敗してしまったのであった。

 まあ、今日は、ニナナカ城塞都市始まって以来の大事件が起こったので、城塞都市内で行われていた全てのクエストは失処理されたので、冒険者ギルドの正規の記憶には、クエスト失敗とは載らなかったのだけどね。

 だけど、こんな些細な出来事が、クロメの心に暗い影を落とす事になるとは、この時の俺には、全く分からなかったのである。
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