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第三章 王都へgo!

54. 強襲

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 予定通りに、孤児院の子供達の護衛をする事となった。

 クロメは、孤児院の子供達にどうやって話し掛けようか、ずっとブツブツ言ってシュミレーションしてるし。

 だけど、これ、大丈夫か?
 結構、高価そうなポーションを荷車に大量に積んでるの盗まれないのか?

 護衛してるのって、クロメだけだし。
 クロメって、とても強いんだけど、このニナナカ城塞都市では、全く知られていない存在なのだ。

 案の定、暫く歩くと、悪そうな大人達に囲まれてしまった。
 そりゃあ、そうだよね。この荷車の集団。大人は女性のシスター1人だけだし。
 襲って下さいと言ってるようなもんだもんね。

「冒険者さん! 宜しくお願い致します!」

 宜しくったって、このシスター、頭が沸いてるのか?
 クロメは、どう見ても10歳の幼女なのに、護衛としてすんなりと受けいれたのも、どうかとも思ったが、そもそも依頼料が安すぎなのだ。

 まあ、魔物が出ない街の中での依頼なのだけども、こんだけの大量のポーションを荷車に積んでたら、襲われるの決まってるし、そんな依頼を、たった5000Gって……高校生のお小遣いかよ!
 こっちは、命掛けて依頼を受けてるというのに。

 こりゃあ、誰も受けんわな……
 みんな分かってるから、この依頼がずっと残っていたのだ。

 そんな依頼を、クロメは飛びついたと。クロメって、子供が大好きだからね。友達にとても飢えているのだ。

『クロメ! 正気に戻れ! 仕事の時間だぞ!』

 俺は、襲われそうだというのに、未だに子供達にどう話しかけようか、ブツブツ言ってるクロメに話し掛ける。

「え?」

『え?じゃない、周りを見てみろ!』

「まさか、この大人達は、私の友達を攫いに来たんじゃ?!」

『もしかしたら、子供も攫おうとしてるかもしれんけど、どっちかと言うと、ポーションを奪いに来たのだと思うぞ』


 俺は、一応、正してやる。間違いを正すのは、クロメの親役としての義務だからね。

「クッ! 許せん!」

 どうやら、クロメは状況を理解してくれたようだ。

「私のお友達を、攫おうとするなんて万死に値する」

 やっぱり、分かってなかった。

「死なたく無かったら、いつもどうり、荷車のポーションを全て置いてきな!」

 悪者の大人達が、クロメの存在を無視して、シスターと子供達に話し掛ける。
 ていうか、いつも奪われてるのかよ!
 やっぱり、このシスターアホだ。ポーション売ればそれなりの金になるのに、冒険者に払う依頼料をケチるからこんな事になるんだよ。

「今回は、いつものようにはいきませんよ!こちらは、冒険者様を雇っているんですから!」

「冒険者様って、そんな奴居ないだろ?」

 まあ、そうなるよね。だって、クロメって子供だし、普通に孤児院の子達に紛れちゃってるし。ついでに言うと、孤児院の子達の中には、クロメより年上と思われる子達が半数以上いるからね。

「こちらに居るじゃないですか!」

 シスターは、ちょっとイライラしだしてるクロメを指差す。

「ハッ? コイツが冒険者だって? まだ子供じゃねーかよ!お前、俺達を舐めてるのか?」

 ウン。解る。俺もそう思う。このシスター頭沸いてるから。

「しっかり、冒険者ギルドに5000Gで依頼を出して、派遣された冒険者なので、何も問題ない筈です!」

「5000Gって、そんな値段じゃ誰も受けねーよ!この依頼の危険度を何も解ってない、まだ稼げない初級冒険者が、金欲しさで間違えて受けちまっただけだろ?」

「そ……そうなのですか?」

 強盗のオッサンに指摘され、シスターがクロメに尋ねる。
 だけど、これ、もう駄目な奴でしょ。

 クロメは、頭に来すぎて、ずっとブツブツ言ってるし。怒りの感情を抑えるのが得意なクロメが、これだけ感情をあらわにするなんて、本当に稀なのだから。

「クックックックックッ。本当に面白い。私は、我が主、卍様の下僕になってから、ここまで愚弄されたのは初めての事だ……」

 クロメさんが、壊れたゃったよ。メッチャ顔が怖いし。俺は、こんなに本気で怒ったクロメを見た事がない。
 というか、俺から地球の魔力を滅茶苦茶吸ってるし、俺も青白く光り輝いちゃって、眼帯から光が漏れ出しちゃってるし。
 ここまで来ると、強盗のオッサン達も、クロメの異変に気付き出し、クロメに対して身構える。

 クロメはというと、ちょっと、注目されて嬉しかったのか、段々、怒りが和らいで来たようである。どんだけ、承認欲求が高いんだよ。
 まあ、中二の子って、承認欲求が高過ぎるから、眼帯付けたり、中二の恥ずかしいセリフをポーズまで付けて言って、わざわざ皆にアピールすると思うんだけどね。

「フフフフフ。矮小な人間どもよ! よく聞け!我こそは、偉大なる卍様にお仕えする第一の下僕にして、最後の黒耳族の生き残りクロメ!
 さあ、恐れおののけ! 近い将来、この貧弱な世界を統べる予定の異世界の大魔王であり、地獄の帝王であり、地獄の深淵からお生まれになった破壊神であらせられる、偉大なる神の中の神、卍様の御前である!
 貴様ら頭が高い、今すぐに地べたにひれ伏し、卍様を崇め奉るがいい!」

 クロメは、いつもの状態に戻ったのか、眼帯を取り外し、俺を際立たせる決めポーズをし、渾身の中二セリフが炸裂させたのであった。
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