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第三章 王都へgo!
53. 孤児院の子供達の護衛クエスト
しおりを挟む実は、この孤児院の子供達の護衛クエストを受ける事と決めたクロメは、ワクワクドキドキしている。
何で解るかって?それは、俺とクロメのシンクロ率が100パーセントだから。
クロメは普段から、感情が俺に直接伝わらないようにコントロールしてるのだが、こと、喜びの感情だけは抑える事ができないようなのだ。
悲しみや怒りの感情は完璧に抑える事が出来るのだが、クロメにとって、元々、喜びの感情は未知の感情。小さい頃から家族に居ない子として育てられ、3歳の時には家を追い出されている。俺と出会うまで、喜びなど皆無だったのだ。
なので、元々、持って無かった喜びの感情を殺す技術が無いのだ。
「グフフフフフフ……」
なので、このように感情がダダ漏れなのである。多分、笑いとヨダレが堪えられない程、嬉しいのであろう。
『良かったな。クロメ、今日は新しい友達が出来るかもしれないぞ!』
「何をおっしゃいますか! 卍様! クロメには、友達など必要ございません!
しかしながら、卍様の新たな下僕に加えるというならば、私は、先輩として面倒をみる事もやぶさかではございませんが……」
やはり、クロメは新しい友達が出来るかもと、ワクワクしてるようだ。
本当に、友達など必要ないというなら、先輩として面倒みるとか言わないもんね。
その辺のオッサン相手なら、俺の下僕にするとか絶対に言わないし、逆に、「矮小な人間など、至高なる卍様の下僕になるなど烏滸がましい! 大灼熱地獄で、灰になれ!」とか、言いそうだし。
そうこう話してると、目的地である孤児院が併設してる教会に着いた。
話によると、この教会は、ソフィア教なる宗教の教会で、この大陸全土で信じられている宗教であるらしい。
『クックックックックッ。ソフィア教?笑わせる。卍様を崇拝する卍教こそが、至高。他の邪教など、我が大灼熱地獄で、全て燃やし尽くしてくれようぞ!』
なんか、また、クロメの変なスイッチが入ってしまったようだ。
というか、卍教?ミノタウロスの力こぶ亭の女将が、一応入信してる奴だっけ……卍教に入信してるのって、クロメと女将しか居ない弱小宗教じゃん。
まあ、グラードバッハの冒険者達も、タダ酒飲みたさに、ノリで俺の事を、「神様、仏様、卍様、ただ酒飲ましてくれてありがとうございます!」とか、拝んでくるけど。
兎に角、クロメは、ソフィア教に、メラメラ対抗心を燃やしているようである。何も起きなきゃいいけど。
「どうも、おはようございます。この度は、護衛の仕事を引き受けてくれてありがとうございます」
俺達が到着したのが気付いたのか、教会の中からソフィア教のシスターが出て来て、頭を下げてきた。
『クロメ、分かってるよな。これは依頼だ。例え、ソフィア教の事が気に入らなくても、黒耳族なら受けた依頼は確実にこなさきゃならないんだろ?』
「分かっております。私は黒耳族最後の生き残りにして、史上最強の魔眼であらせられる卍様の下僕。一度受けた依頼は、相手が悪魔や神であろうとも、完璧にこなしてみせますとも!」
悪魔の依頼は受けちゃいけないと思うけど、まあ、クロメの場合は、黒耳族最後の生き残りだという誇りを人一倍持ってるので、依頼だけは確実にこなしてくれそうである。
そして、そんなクロメの事が心配になったのか、シスターは怪訝な顔をして見ているのだ。
まあ、いきなり、悪魔やら神やら独り言を言い出したら、誰でも心配になるよね。
そうこうしてると、教会の中から、引き車にポーションを山ほど積んだ子供達がやって来た。
というか、大丈夫か?子供達は10人位居るのだが、全員生気が抜けた魚の死んだような目をしてるし。
『オイオイ。大丈夫かよ……ポーション売る前に、この子達にポーション飲ませて回復してやった方が良いんじゃないのか……』
俺は、とても心配になってしまう。
どう考えても、健康状態良さそうに見えないし、疲れきってるし、粗末な服を着てるし。
そんな俺の心配も無視して、
「それでは行きましょうか!」
シスターは、子供達の状態を全く気にする様子が無い。もしかして、この子達、教会に虐待されてるんじゃないのか?
俺は、結構、感情が揺さぶらてしまったので、クロメにまで俺の感情が読み取られてないかと思ったが、クロメはというと、何を考えてるのか、ずっと押し黙ってるし。
もしかして、俺と一緒の考えてるかも知れないけど、だけど、もう既に依頼を受けてしまってるので、「どうしよう……」と、葛藤してるかもしれない。
黒耳族は、例え悪者からの依頼であっても、一度受けた依頼は必ず完遂させなければならないのだ。
その積み重ねにより、黒耳族は闇の世界で評価を受けて来たのだ。
『クロメ?大丈夫か?辛いかもしれないけど、仕事を終わらせてからだったら、子供達を虐待してるソフィア教会の大人達をぶっ飛ばしてもいいからな!』
俺は、クロメの気持ちも考えて、声を掛けやる。
クロメも孤児院の子供達同様に、虐待を受けていたのだ。なので、孤児院の子供達を救いたと思ってるに違いない。
依頼を終わらせた後なら、黒耳族の矜恃も守れるし、ソフィア教の腐った大人達も懲らしめる事も出来るしね。俺って、頭いい!
とか、思ってたけど、
「ウゥゥゥ……どうやって、声を掛けよう……」
どうやって、子供達に話し掛けようかと悩んでただけかよ!
どうやら、クロメには、俺の心の声は全く届いてなかったようだ。
ていうか、クロメの奴、子供達が虐待されてるかもってこと、全く気にしてないじゃん……
よく、考えたらクロメにとって、これっぽっちの虐待など、虐待のうちに入らないのかもしれない。
粗末かもしれないが、食事もでて、屋根がある孤児院に暮らせるだけ、幸せだと思ってるに違いない。
どうやら、卍様の、クロメへの心配は杞憂であるようだった。
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