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第三章 王都へgo!

46. どこかの城塞都市

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 俺達は、まあまあの大きさの城塞都市に到着した。今回はD級冒険者なので入場料はタダ。どうやら冒険者ギルドカードは全国共通で使えるようである。

 そして、ポチタロペスもグラードバッハ冒険者ギルドでしっかり、従魔届けを出してたので、問題なく城塞都市に入れるようであった。

 だけれども、やはり、本来の大きさより小さくなってるといっても、頭が3つあるポチタロペスは目立つ。クロメ1人でも目立つのに、ヤバそうな従魔に乗ってる俺達一行は本当に目立つのである。

 そしてそんな状況に、またクロメが悦に入っちゃって、ふんすかと興奮して鼻を膨らませているのだ。
 本当に、闇に潜み、闇に生き、闇を統べる黒耳族の設定って、どうなっちゃったんだろう。決して、設定は消えてないと思うが、設定は設定であって、細かい事は気にしてないのだろう。
 クロメは、細かい事はすぐに忘れる性格っぽいし。

「クワッハッハッハッハッ!矮小なる人間共よ!恐れおののけ!至高なる卍様のお通りだ!」

 クロメは、タロの頭の上に立ちこの状態。
 本当にヤバい幼女だよね。子供じゃなかったら絶対に衛兵に捕まるでしょ。

 みんな中二の痛い子だと、冷めた目で見守ってくれている。
 魔法使いの三角帽子を被って、黒耳族のくノ一の衣装を着て、卍の眼帯付けてたら、誰しも中二の痛い子だと理解してくれるのである。

 だって、設定もしっかり定まってないし。魔法使いなのかくノ一なのか分かんないし、しかも眼帯だよ。取り敢えず、中二ポイ設定は、全て網羅してる感じだからね。

 俺は、本当は注意する所だと思うのだが、ここは初めての街。クロメの事を誰も知らない人ばかりのである。
 クロメのこの行動は、私は強い人間なのだから、誰にも私の物を奪わせないようというポーズなのだ。

 クロメは、幼少の時、双子の妹のアヤメに色んな大切な物を奪われ続けた過去があるのだ。強者こそが正義。強者は弱者から何でも奪ってよいという掟がある黒耳族の村で育ったクロメは、どうやってもその感覚が抜けないのである。

 なので、中二を盾に、クロメはわざわざ初めての街で自分の強さをアピールしてるのである。
 まあ、どう考えてもお子様なので、誰も強い子だとは思ってないと思うけど。逆にイタい子なので、近寄らないようにしようと思うだけだよね……

 取り敢えずは、街の人達は、クロメには近づかないようにしようと思ったに違いないので、クロメのやり方は、あながち間違っていなかったりする。

 そして、この街の冒険者ギルドに到着する。
 クロメは、俺の検索機能を使って日本の異世界アニメの研究に余念がないので、新しい街に着いたら冒険者ギルドに行くという、異世界アニメあるあるの、よく分からない設定を心得ているのである。

「ポチタロペス、ここで待ってるのです」

 どうやら、クロメはポチタロペスを冒険者ギルドの中には連れて行かないようである。
 クロメの行動原理では、初っ端に冒険者達にポチタロペスを見せつけて、オオーー!!と、言わせたいと思ってたのだが、どうやら違ったようである。

「卍様、ここは作戦Aで行くことにします」

 クロメが、俺に一々断りを入れてくる。

『作戦Aとは?』

「弱っちいアマチュア冒険者を演じ、途中に偉大なる卍様の力を示し、矮小なる冒険者達に、自分達の実力をよりしっかり分からせる作戦なのです」

『作戦AのAは、アマチュアのAな』

 なるほど、異世界アニメの研究に余念がないクロメは、異世界主人公が必ず通る初回冒険者イベントを再現しようとしてる訳だ。
 だがしかし、クロメよ……これは、グラードバッハ冒険者ギルドでやるべきイベントで、この街で今更やるイベントだとは思えないのだけど……

「卍様の考えてる事は分かります。卍様がゴミカスの弱っちい冒険者に、一瞬でも弱いと思われるのが嫌なのですね……しかしながら、申し訳ございません。この儀式も至高なる卍様の物凄さを最大限に引き出す為の、崇高なる駆け引き。このクロメの最大限の謝罪でお許し下さいませ!」

 クロメは、その場で俺に土下座する。
 だがしかし、他人からは、冒険者ギルドの門に向かって1人で土下座してるように見えるので、ヤバい子供にしか見えない。

 それから、よく分からん事も言ってたし。

 俺の物凄さを最大限に分からせる為?
 俺が、一瞬でも弱いと思われるのが嫌だって?
 俺、そんな事、全く気にしてないのだけど……

 というか、クロメが冒険者ギルドに訪れた時の初回イベントを、ただ今迄、忘れてただけでしょ。
 グラードバッハ冒険者ギルドで初めて訪れた時、ずっと食堂みてヨダレ垂らしてたし。
 そこで中二イベントも少ししたように思ったのだが、クロメはあれでは物足りなかったのだろう。

『まあ、クロメがやりたいならやればいいさ。ただ、極大魔法は絶対に使うなよ!出来るだけ、冒険者の人達がトラウマにならないようにやりなさい』

「御意!」

 クロメは、嬉しそうに頭を下げる。
 まあ、たまには好きなようにやらせてあげないとね。
 俺だって、体があったら、冒険者ギルドの初回イベントやりたいし。
 弱いフリして、実は強かったって奴。誰しもやりたいもんね。

 そして、クロメは、三角帽子をグイッと目深に被ってから、深呼吸し、ゆっくりと冒険者ギルドの扉を開けたのだった。
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