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第三章 王都へgo!

42. 地獄の深淵から生まれた破壊神

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「知った顔の者が居るな」

 大魔法使いマジルカは、穏やかな表情をしてマリアに話し掛けてきた。
 どうやら、最初から俺達に敵対するつもりは無いようである。

「ハイ。マジルカ様。その節は、どうもありがとうございました」

 マリアは頭を下げる。
 マリアにとって、大魔法使いマジルカは、勇者リクトと同じく病気を治してくれた恩人である。

 そして一転、マジルカは険しい表情でクロメを見る。

「で? 何故、その少女はリクトの左目を持ってるのだ?」

 なんか、大魔法使いマジルカは、初見で、クロメの左目が勇者リクトの左目だと気付いていたようである。
 というか、俺って、元の勇者リクトの左目の時より、相当、変わり果てた姿(瞳孔に卍が刻まれてたり、複雑な魔法陣が描かれたり)をしてるのに気付くなんて、やはり、大魔法使いマジルカは只者ではないようだ。

「クックックックックッ、リクト? それは、我が主、卍様の贄になった弱っちい勇者の事を言ってるのか?」

 どうやら、大魔法使いマジルカの言葉に、また、クロメの変なスイッチが入ってしまったようである。

「卍様?」

 そりゃあ、そうなるよね。知ってた。
 まさか、普通の人は、魔眼に名前付けないし。魔眼の奴隷にならないし。

 俺って、本来、人工鑑定眼として、イカレジジイに作られたんだよね。なのに実際は、クロメが異世界アニメを研究する為のネット環境と成り果ててるし、付随して付けられた透視眼や千里眼の方が役にたってるし。

 まあ、クロメが、マジルカに詳しい設定を一々説明するとは思えないし、卍様のままで話を進めるしかない。
 そもそも、鑑定眼というより意志を持つ魔眼だから、名前で呼ばれた方が、俺的にしっくりくるし。
 所謂、新ジャンル魔眼。地球に繋がるインターネット付き意志持ち魔眼という事で……

「そう! 我が主、卍様は、意志を持つ偉大なる魔眼! 異世界の大魔王にして、地獄の帝王!
 この世界に破滅をもたらす為に降り立った、地獄の深淵からお生まれになった破壊神であらせられるのだーー!!」

 どうやら、俺の設定に、地獄の深淵から生まれた破壊神という称号が新たに付け加えられたらしい。

「リクトが、この世界を恨むのは分かるわ。だからって、地獄の深淵から生まれた破壊神って……」

 なんか、大魔法使いマジルカは、俺が意志がある魔眼であるという事を、すんなり受け入れているようである。
 しかも、俺の事を、勇者リクトだと思い込んでるようである。

 まあ、そう思ってるなら、そう思わせとけばいいか。下手に大魔法使いマジルカと敵対したくないからね。
 ほら、俺、巨乳でナイスバディーのダークエルフ大好物だから。
 しかも褐色の肌に金髪の碧眼って、なんだかエロい感じがして興奮しちゃうんだよね。

『なるほど。卍様は、この女を性奴隷にしたい訳ですね?』

 クロメさん、何いっちゃってるの?確かに興奮気味に考えてたから、クロメに俺の思考読まれちゃったかもしれないけど……俺、マジルカを性奴隷にする気なんか更々ないから!
 そもそも、俺、肉体持ってないから、エロい行為とか出来ないからね!

「フフフフフ。何を仰いますか?卍様。卍様には私の体があるじゃないですか?
 私の体を利用して、あの女を手篭めにしてしまえばいいんですよ!」

「ええと……何の話をしてるのかな……」

 マジルカが、クロメが口走る卑猥な独り言を聞いて怪訝な顔をしている。
 まあ、マジルカは俺の事を勇者リクトと思ってるようだから、俺的には全くダメージを受けてないけど。

「卍様が、お前を手篭めにしてやると仰られている。有難く、その卑猥な体を差し出すがよい!」

「ちょっと、その左目、本当にリクト? リクトは、そんな事、絶対に言わないわよ!」

 マジルカが顔を赤らめ、俺の事を疑ってる。
 というか、俺も、性奴隷にするとか手篭めにするとか、一言も言ってないし。クロメが勝手に言ってるだけだし。

 本当に、言葉が喋れないのがもどかしい。
 グラードバッハ城塞都市なら、俺と念話できる女将やギルド長が居るから訂正出来るけど、ここには俺の言葉が分かるのはクロメだけ。このままだと、俺は本当に地獄の深淵から生まれ落ちた破壊神にされてしまう。

「だから何度も言っている。勇者リクトは卍様の贄になり、ボディーになったと。勇者リクトと、我が主、卍様は別人格!偉大なる異世界の大魔王様なのだ! グワッハッハッハッハッハッ!!」

「そんな設定なのね。目玉だけなってしまって、精神が崩壊してしまったのね……可愛そうに……
 私が必ず、貴方の仇を取ってあげるから、今はまだ、その女の子の左目として静養してて。シリカとアレクサンダーを倒した後、必ず私が復活させてあげるから!」

 大魔法使いマジルカは、勝手に勘違いして燃えている。
 まあ、それは良いとして、分からない事だらけ。

 何故、死んだ筈のマジルカが生きているのか?

 そして、ビッチシリカが話してた通り、勇者リクトが、大魔法使いマジルカと結託し、勇者パーティーを利用して、魔王を殺し、新たな魔王に成り代わろうとしたって話は、本当の話だったのか?

 クロメの中二病が暴走して話が進まず、未だに全く分からないままであった。
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