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第三章 王都へgo!
39. 野営飯(スパイスカレー)
しおりを挟むポチタロペスは、グラードバッハ城塞都市の正門をぶち破ると、再び、青白い地獄の炎を体に纏う。
その姿は、地獄の番犬に相応しい、威風堂々とした猛々しい姿に見える。
俺のワンコ。メッチャ格好いいんだけど。
クロメも、格好良すぎるポチタロペスに満更でも無い様子。
マリアは、猛スピードに付いていけてないのか、必死にクロメにしがみついているし。
とか、思ってると、
グゥルルルル~
クロメのお腹が鳴っている。
まだ、朝食を食べたばかりなのに。
クロメの食費もばかにならないので、旅の途中で肉をゲットしとくのも良いかも。
『クロメよ。昼食のオカズをゲットする為に、獲物を狩るぞ』
「承知!」
クロメは、ジュルリと、ヨダレを垂らしつつも、ポチタロペスに方向転換を指示し、王都に向かう街道から逸れ、森に向かう。
街道から離れ、暫く走るとホーンラビットを発見。
クロメは、そのまま回転しながらポチタロペスを飛び降りる。
「エッエッエッ……ちょっとーー!!」
そりゃあ、そうなるよね。
マリアは、クロメにしがみついてたのだ。
突然、クロメがポチタロペスから飛び降りたら、落ちそうになるよね。
しかし、気遣いができる1番左側の頭のペスが、マリアの服を咥え、ポチタロペスの背中から落ちないように、ちゃんとフォローしてる。
ペスはなんて良い子。
ポチタロペスの性格が、なんか大体分かってきた。
1番右端のポチは、猪突猛進でヤンチャ。
真ん中のタロは、常識犬で真面目っぽい。
そして左端のペスは、気遣いができる優しい子のようである。
とか、性格分析してる間もなく、クロメはホーンラビットの首を掻っ斬り、そのまま血抜きをしてるし。
相変わらず、手際が良すぎる。ホーンラビットの毛皮も全く傷付けずに、殺すって最早、神業。
クロメは、直ぐに、ホーンラビットを逆さにして森の木に吊るし、再び、ポチタロペスの背中に飛び乗る。
「ポチタロペス、次は、右に30度!」
クロメは、透視眼と千里眼を駆使して、ポチタロペスに次の獲物の位置を指示する。
これの繰り返しで、最初に血抜きの為にホーンラビットを吊るした木に、逆さになった獲物がたくさん吊るされて、とてもおどろおどろしい状態になってしまった。
クロメは、ある程度、肉をゲットして満足したのか、とっとと時短魔法を使って血抜きを終わらせ、2匹分だけ皮を剥ぎ、肉を切り分ける。
「こっちは、ポチタロペスの昼食。こっちは私とマリアの分!」
クロメは、1匹分の生肉をポチタロペスに食べさせ、もう1匹の生肉をマリアに渡す。
多分、マリアに調理しろという事だろう。
「了解!」
今迄、クロメの行動に圧倒されてたマリアが、正気を取り戻し、俄然ヤル気になっている。
ここからは、私の出番だと。
マリアは、自分の魔法の鞄の中から調理器具を取り出し、テキパキと料理の準備をしていく。というか、マリアさんどんだけ料理器具持ってきてるの?調味料や香辛料もたくさん持ってきてるみたいだし。
まさかの本格的な料理。しかもいきなりスパイスカレーを作ろうとしてるし。
まあしかし、料理が得意と言ってただけあって、手際が滅茶苦茶速い。
あっという間に、ホーンラビットのスパイスカレーを作ってしまった。多分、料理スキルか何かを持ってるのだろう。俺の地球のインターネットしか繋がらない鑑定眼じゃ全く分からないけど。
因みに、俺がマリンを鑑定するとこんな感じ。
名前: マリン・グラードバッハ
種族: 人間
年齢: 10歳くらい
注釈: 勇者リクトの敵討ちに燃えている。無詠唱魔法が使えるらしい。料理も得意かもしれない。
まあ、俺の鑑定眼じゃこんな感じだよね。
鑑定というより、俺の感想だし。
「さあ、召し上がれ!」
ジュルリ。
腹ぺこキングのクロメが、ヨダレを垂らしてる。どうやら、クロメは俺の指示待ちのようだ。
『良し、頂きますしたら食べていいぞ!』
「頂きますーー!!」
クロメは、初めてのスパイスカレーに興味津々。いきなり食べるかと思ったら、クンクン匂いを嗅いでいる。つい最近まで、調味料を使った事がなかったクロメにとって、カレーの雑種多様なスパイスの匂いは、未知の匂いなのかもしれない。
「食欲をそそる刺激的な匂いがします。もしや、これは毒なのでは?」
クロメの動物的感が働いているようだ。確かにカレーの辛さは刺激的。それを察知するとは、流石は黒耳族。危険察知能力が半端ないようだ。
『ちょっと辛いが、まあ、美味しいから食べてみな』
カレーの味を知ってる俺が勧める。俺も久しぶりのカレー食べたいしね。
「卍様が、そう仰られるなら、例え、この毒々しい黄色い物体が猛毒だったとしても、クロメは命を懸けて毒味致します!」
何故か知らんが、クロメは命懸けでスパイスカレーを食べるみたいだ。
カレーを知ってる人にとっては、スパイス独特の匂いなど何とも思わないが、野生児のクロメにとっては命懸けの戦い。
多分、子供の頃に、食べてはいけないキノコとか葉っぱを拾い食いして、痛い目にあった事があるのだろう。
マリンは、自分が作った料理を毒とか言われて涙目になってるし、たかがカレーを食べるだけで、変な修羅場みたいになってるし。
クロメは、恐る恐るスプーンにカレーをすくう。
その手はプルプル震え、泣きそうになってるし。
「では、毒味役クロメ、イキます!!」
クロメは、目をつぶり一気に一口。
「……」
クロメは、固まる。そして、一筋の涙が頬を伝う。
マリンは、固唾を飲んで祈ってる。
「こ……これ……ピリ辛だけど、凄く美味しいです……」
クロメの感想に、マリンは万遍の笑顔を浮かべる。
『ウン。コレコレこの味だよね! まさか異世界で本格的なスパイスカレー食べれちゃうなんて、マリンを連れてきて本当に良かった!』
「卍様! どうしましょう! クロメの口が止まりません! この調味料が複雑に混ざりあったトロッとした汁が、クロメが知らなかった料理の未知の領域に刺激的に誘ってくれるのです!」
『うん。言ってる意味がよく分からんが、このマリアが作ったカレーが美味しいという事だよな?
なら、マリアになんて言うんだ?
お前、食べる前に毒とか随分酷い事言ってただろ?』
俺は、クロメに教育的指導をする。
俺の直近の目標は、クロメに挨拶や、自分が悪い事した時に、ちゃんと謝れる子にする事。
今迄のクロメの価値観は、黒耳族の弱肉強食の教えだから、絶対に弱者に対して自ら挨拶する事や謝る事なかったのである。
「ウゥゥゥ……マリア……この至高なるスパイスカレーなるもの、毒と言ってごめんなさい。とても美味しかったです……」
クロメは、空になったカレー皿をマリアに渡し、感想と共におかわりも所望した。
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