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第2章 城塞都市グラードバッハ編

21. トリニティー三位一体の欲望

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 ミノタウロスの力こぶ亭に戻って、コッコを女将に納品する。

「こんなに狩ってきたのかい!」

 そりゃあ、女将も驚くよね。無制限に入る魔法の鞄を手に入れたのを良い事に、クロメは2000羽以上も、コッコを狩っていたのだ。
 俺が止めるの遅かったら、コッコ、森から絶滅してたし。

「悪いけど、代金は、これだけしか払えないよ。手羽先が売れたら払うからね!」

 女将は、取り敢えず、100万Gを払ってくれた。まあ、これはしょうがないだろう。数は決まってなかったけど、誰しも2000羽狩ってくるとは思わないし。
 俺達も、100万Gあれば、暫くは余裕を持って生活出来るしね。

「しかし、困ったね……手羽先以外の素材が余ってしまうよ……」

 確かに、手羽先用とはいえ、それ以外の肉を使わないのは勿体ない。ならば、

『唐揚げを作ればいいだろ!』

「それはそうだけど、美味しい唐揚げのレシピがね……」

 女将は、俺の事をチラチラ見てくる。
 シンクロ率88%の女将には、俺の異世界検索機能を自由に取り出せる権限がないようだ。それを悟ったクロメは、

「クワッハッハッハッハッ! 私こそが、卍様の一番の下僕! 貴様のような矮小な人間如きとは、卍様との繋がりが違うのだーー!!」

 無い胸を反らし、高笑い。

「フッフッフッフッフッ。繋がりなんて、この狐耳族でシャーマンの一族である私に掛かれば、簡単に看破できるのよ!」

 女将は、そう言うと、クロメを抱き締める。
 俺は、ちょうど女将のたわわな胸に挟まれて、とても幸せな気分になってしまう。
 クロメはというと、緊張してか固まってしまっている。

 多分、クロメは、母親にこうやって抱き締められた事が無いのだろう。
 手先まで、ピーンと伸ばして、心臓の鼓動がトクトク速くなってるし。

「ウンウン。良い子ね。私に全て心を委ねてね」

『なんかいい。というか、気持ちいいぜ』

 俺って、地球時代は、モテないサラリーマンだったんだよね。だから、こんな美人のケモ耳さんにパフパフなんかされたら、嬉しくて鼻血が出そうになってしまう。

 というか、クロメなんか頭から湯気が出て、顔を真っ赤にさせてるし。
 クロメは、ここまで人肌に耐性がないのかよ。女将は異性じゃなくて、同性なのに。
 まあ、母親に抱き締められた事がないから、ここまで緊張してしまってるのかもしれない。

 苦しい時、悲しい時など、ただの目玉である俺はクロメに何もしてやれない。
 親の愛情を知らないクロメを、抱き締めてやる事さえできないのだ。

 だけれども、体がある女将なら、俺の代わりにクロメを抱きしめてやる事ができる。

 女将って、クロメにとって、どうやら有用の人間であるようだ。

 そして、俺にとっても、物凄く有用。
 だって、俺と意思疎通出来るし、女将みたいな美人で、巨乳の女の人の抱き締められると嬉しいしね!(シンクロ率100%の卍様は、クロメの五感も全て感じる事ができる)

 クロメの為とか言っときながら、少しエロい欲望が出てしまった。
 俺は、何と罪深い男なのだろう。ちょっとだけ反省。

「フッフッフッフッフッ。卍様。貴方、想像以上に有用ね!」

 なんか、クロメを抱きしめながら、女将が俺を見てくる。
 どうやら、異世界検索が終わったようだ。
 というか、俺と女将は、どうやらウィンウィンの関係になったらしい。

 女将は、俺から異世界情報を検索でき、俺は女将に検索されちゃうと、たわわな胸に抱き締められちゃうのだ。
 クロメの緊張感も、良い感じにスパイスになり、俺は物凄く感じてしまうのである。

 ここまでの理由だと、俺は、ただのエロ親父に思えてしまうが、これは全て、クロメの為でもあるのだ。人の温もりと愛情を知らないクロメの為。そう、全てはクロメの為なのである。

 女将の人肌に触れて、クロメも人の優しさに気付いてくれれば。
 その為には、たくさん女将に抱き締められないといけないよね。

 こうして、俺とクロメと女将はトリニティーを形成する事となったのだ。

 クロメは、人の優しさを知る為に。
 女将は、俺から異世界知識を得る為に。
 そして、俺は、エロの為に。

 俺だけ動機が不純の気もするが、それは仕方が無い事なのだ。何せ、不可抗力なのだから。

「何者でもない矮小な人間の女将は、偉大なる卍様に、贄として体を捧げるのは自然な事!」

 ちょっと、エロい事を考えてたせいか、クロメに思考を読まれてしまったようである。

「いいわよ~クロメちゃんを抱き締めるくらい、お易い御用よ! それで卍様から異世界知識を貰いた放題なんて、裸で抱っこしてあげてもいいくらいよ!」

『は……裸だと!!』

 俺が興奮し過ぎたせいか、何故かクロメから鼻血がブシュー!と、吹き出る。これは、多分、シンクロ率100%の弊害だろう。普段はクロメが完全に体の主導権を持っているが、俺が興奮状態MAXになってしまうと、俺がクロメの体の主導権を取れるとか?

 まあ、その辺はよく分からないが、俺がエロい事を考えて、クロメの体に負担を掛けるのは良くない事。教育上良くないし。

 クロメが、エロ親父のような性格になってしまったら、俺は、物凄く悲しくなってしまう。

 ここは、心を鬼して、エロを封印しなければ。

『女将。悪いが、女将の申し出は断らせてもらう。服を着たまま、クロメをたまに抱き締めてくれれば、それでよい』

「卍様!」

 何故か、クロメが感動している。
 どうやら、自分の為に、俺が我慢してる事が伝わったのであろう。
 何せ、俺とクロメのシンクロ率は、脅威の100%。俺の心が揺さぶられちゃうと、クロメにもダイレクトに俺の思いが伝わっちゃうから。

「ハイハイ。わかったよ! そしたら、これからも卍様、お願いね♡」

 女将が胸の谷間を寄せて、イタズラ顔でウインクしてくる。

『ハイ! 宜しくお願いします!』

 俺が、嬉しさいっぱいで返事をすると、何故か、また、クロメの鼻から血が吹き出していた。

 ーーー

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