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第2章 城塞都市グラードバッハ編
20. 女将クエスト
しおりを挟む俺とクロメは、このまま王都に向かおうと思ってたのだが、狐耳族の女将に止められて、暫く、この街に留まる事となった。
しかも、女将から直接クエストまで受けてしまう。
これから、ミノタウロスの力こぶ亭で、手羽先が流行る筈だから、たくさんコッコを狩って来て欲しいとの事だった。
コッコとは、鶏っぽい魔物で、手羽先の材料になる魔物らしい。
まあ、手羽先が売れるようになるのは、完全にクロメのせい。美味そうに100個も平らげちゃったから、今日から滅茶苦茶売れると女将は予想しているのである。
『そういう事だ! クロメ! 今日はコッコ狩りだ!』
「クッ! コッコなどの為に、卍様の世界征服の覇業が遅れるなど、あってはなりませぬ!」
『それじゃあ、今日の晩飯、手羽先抜きな!』
「やります! コッコなど、この私が根絶やしにしてやります!!」
クロメは、相変わらず、食い意地が張っていた。
てな訳で、女将にコッコの生息地を聞いて、城塞都市グラードバッハから見て北の森に行ってみる。
『いたぞ!』
「流石は、偉大なる我が主、卍様です!」
ただ、コッコを見つけただけで、クロメが滅茶苦茶褒めてくれる。
というが、千里眼と透視眼の機能がある俺にとって、索敵などお手の物。森の木や草などの遮蔽物だけを透視して、後は、千里眼使えば良いだけだからね。
なので、現在、俺は、この森に居る全ての魔物を把握していると言って良いのである。
ていうか、俺って滅茶苦茶優秀じゃね?本当に、イカれジジイに三行半突き付けられたのが、意味不明である。
確かに、シンクロ率5%のジジイが俺の保持者の場合、俺ってメチャンコ使い勝手が悪い魔眼だったかもしれないが、意思疎通できるクロメとだったら、俺は黄金の魔眼になるのだ。
しかも、千里眼と透視眼が同居してる魔眼なんて、ジジイの魔眼の棚にも、俺しか居なかったし。余っ程、俺の鑑定機能が使えなくて悔しかったのだろう。
イカれジジイって、鑑定眼作りに、己の人生の全てを賭けてたからね。
クロメに殺される時も、クロメが、俺を完璧に使いこなしてるのを見て、「嬉しいぞ!ワシは、人生をやり切った! 我が人生に一遍の悔いなし!」とか言って、とっても満足そうに死んでいったし。
とか、俺が妄想している間も、クロメは凄い勢いでコッコを倒し、首をへし折っていく。
因みに、昨日、冒険者ギルドでシルバーウルフの毛皮と魔石を売った金と、手羽先チャレンジで儲かった金を使って、魔法の鞄を買っている。
どうせなら、無制限に入る鞄が欲しかったので、全財産を使ってしまった。
まあ、その分稼げばいいので、まったくもって問題ないけど。
まあ、それにしても俺の宿主のクロメは、メチャンコ強い。
黒耳族の暗殺技術に、俺から溢れだす魔力を使って、常時、肉体強化魔法を使ってるから、素手でも物凄いのだ。
しかも、勝手に、地球の格闘術を検索して、黒耳族の暗殺技術に組み合わせているから、戦い方も、どんどんアップデートして行くのである。
クロメの戦い方は、基本、素手。たまに、果物ナイフを使う。
そして、ここぞという時に、極大魔法。
全くもって、死角がない。
普通の魔法は、俺から溢れる魔力が、物凄すぎて制御できないのだとか。
『クロメ。もう、このへんでいいんじゃないか?』
「卍様! 待って下さい! もう少しで、この森に居るコッコを全て根絶やしに出来ますので!」
『いやいやいや。コッコ根絶やしにしたら、もう、コッコ、この場所で取れなくなっちゃうだろ!』
「クックックックックックック。卍様に逆らう者など、滅亡させれば良いのです!」
なんか、クロメの変なスイッチが入ってしまっている。
『いやいやいや。コッコは、別に、俺に逆らってないからね! それより、コッコを滅亡させちゃったら、金輪際、手羽先食べれなくなっちゃうからね!』
「何ですと!!」
クロメは、地頭はいいんだが、抜けてる所がある。
まあ、子供の頃から、1人、森の中でサバイバル生活してたから、仕方が無いのだけど。
因みに、黒耳族の暗殺技術は、村の子供達が、村の広場で練習してるのを覗き見して覚えたらしい。
本当に、不憫な子だったのだ。
そんなクロメはというと、現在、膝を付いてプルプル震えている。
多分、クックを根絶やしに出来ない事と、金輪際、手羽先が食べれなくなる事について、葛藤しているのだろう。
クロメにとって、俺の役に立つことをする事と、腹ぺこは、天秤に掛けれない程、重要な事なのである。
クロメは、幼い頃から、1人っきりで、森でサバイバル生活をして過ごしてきた。ご飯を食べれなければ死んでしまう事を知っているのだ。
多分、獲物を取れなくて、空腹で、何度も死にかけてた事があったのだろう。
「卍様……申し訳ございません。私は食い意地が張った卑しい女なのです……」
どうやら、クロメは、俺より手羽先を取ったようである。
案外、アッサリ結論が出たようだ。
まあ、最初から、俺がコッコ取るの、もう止めようね!って言ってたんだけど、クロメって思い込みが激しい所があるから、多分、俺がこの国を滅ぼす為には、コッコが邪魔だと思ってしまったのだろう。
この国の国民に、鶏肉と卵を食べさせないようにして、タンパク質不足にし、力がでないようにしようと思ったとか。
変に地頭良いから、普通では有り得ないようなおかしな事を考えてしまうのである。
まあ、本当は、この森のコッコを根こそぎ狩ろうとしたのは、ただ単に、手羽先をたくさん食べたかっただけなんだろうけど。
ーーー
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