卍眼(鑑定眼)に転生しちゃったので、宿主の奴隷幼女を異世界アニメを参考に育ててみたら、中二病に育ってしまった

第2章 城塞都市グラードバッハ編

18. 勇者リクト

　
　俺は魔眼に転生してから、基本、寝ていない。
　この世界に来てから、暫く、瓶に入れられ、ずっと裸眼だったのが原因かもしれない。
　だけれども、昨日は久しぶりに寝れた。

　クロメが、久しぶりに悪夢にうなされてなかったからか、俺も、どうやら安心して寝てしまったようだ。

　そして、俺も、クロメと同じように、この世界に来て、初めての夢を見たのだった。

　その夢は、どうやら俺が魔眼に転生する前の、本当の目の持ち主の夢……
　俺は、その男の辛く悲しい夢を見てしまったのだ。

　ーーー

　その男は、俺と同じく日本からの転生者。
　この国の王によって召喚されし召喚勇者。名を、勇者リクトと言うらしい。

　リクトは、この国の王に命令され、魔王討伐の為に魔族と戦い続けた。
　仲間も居た。聖女であるこの国の姫様シリカと、魔法剣士アレクサンダー。それから、巨乳の大魔法使いマジルカ
　所謂、勇者パーティーで、魔王を倒す為に戦い続けたのだ。

　勇者リクトの快進撃は続く。
　鑑定スキルなどのチートスキルを駆使して、魔物を殺しまくり、最終的には、なんとか魔王も倒す事に成功する。
　ここまでは良かったのだ。
　行く先々で、勇者様バンザイ！と、人々にもチヤホヤされて、まさに人生の絶頂。

　そして、魔王を倒した報告と、婚約してた、この国の姫で聖女でもあるシリカ姫と結婚する為に王都に赴いたのだが、そこで国家転覆を目論む反逆者として捕まってしまったのだ。

　リクトは、訳が分からない。反逆者？王様の言われた通りに魔王を倒したのに、何故、反逆者になってしまうのか？

　まあ、よくある話で、魔王を倒す旅の途中で、シリカ姫と魔法剣士アレクサンダーが恋仲になり、リクトが邪魔になり罪をでっち上げたのだ。
　勇者リクトは、魔族と繋がってると。

　確かに、リクトは協力的な魔族や、魔族の子供とかは殺さなかった。それが、問題視されてしまったのだ。
　魔族も一枚岩ではなく、全ての魔族が魔王に従ってる訳では無い。例えばダークエルフ。

　ダークエルフは、魔に堕ちたエルフと言われているが、実際は、ただのエルフの亜種。大魔法使いマジルカも、人間側に味方したダークエルフだったのだ。

　勇者リクトの罪状は、大魔法使いマジルカと結託し、勇者パーティーを利用して、魔王を殺し、新たな魔王に成り代わろうとした罪。

　リクトとマジルカは、冤罪だと訴えたが、覆る訳がなく、そのまま死刑執行。

　勇者リクトと、大魔法使いマジルカは、この国と、自分達を裏切ったシリカ姫と、アレクサンダーを呪いながらギロチンにかけられ、首を跳ねられ死んだのだった。

　俺は、そんなこの国を呪いながら死んだ、勇者リクトの左目。
　イカれジジイは、異世界勇者の鑑定スキルを模倣するなら、本物の異世界勇者の眼球を使って、鑑定眼を作れば、より成功するだろうと考えた訳だったのである。

　ーーー

　マジモンの恐怖なんだけど……
　俺って、この世界を呪って死んだ勇者リクトの左目だったのかよ。
　悪夢と言うより、最早、ホラー。呪われし魔眼。

　なんか、いつもクロメが禍々しい魔力が溢れ出て来るとか言ってたのって、勇者リクトの怨念が、そのまま魔力に変換されて出てきてたって事じゃない？
　そう言えば、前に、俺の瞳孔に描かれた卍の印を調べたら、【偉大な人物の特徴を示すもの。瑞兆ずいちょうとも、吉祥を示す徳の集まりを意味するようになった】とか、書いてあった。
　これって、勇者リクトの眼球から溢れだす禍々し過ぎる魔力を、吉祥を表す卍の印を瞳孔に刻んで、中和してるって事じゃないのか？

　俺は、格好良いから、瞳孔に卍の印が刻まれてたんだと思っていたのだが、ちゃんと意味があって、卍の印は刻まれていたのであった。

　或る意味、クロメが言うように、俺は封印されし魔眼であったのだ。
　この世界を恨む、勇者リクトの怨念が、表に出てこないようにする為の。

　それにしても、この国の現在の王アレクサンダーと、シリカ姫だったか？メッチャ許せないんだけど。
　まあ、勇者リクトは、元、俺の持主だし、物凄くムカつくのは正直な所。同じ、日本からの召喚者だし。まあ、俺の場合は目玉だけど。

　それから、一緒に殺されてしまったダークエルフのマジルカも可哀想だった。巨乳でメッチャ好みだったし、本当に、シリカ姫許せん。
　あの女、ただのビッチ姫だろ！いつか、俺が、勇者リクトと、ダークエルフのマジルカの代わりに、仕返ししてやるから、勇者リクトも大人しく、俺の中で封印されてて欲しい。

　俺から、禍々しい魔力が出て来ちゃうのは、絶対に封印されてる勇者リクトの怨念の魂が出て来ようとしてると感じるんだよね……
　俺も、折角、自我を持ったというのに、今更、勇者リクトに眼球を乗っ取られたくないしね。

　そんな感じで、俺は、この世界での新たな目標が定まった。
　勇者リクトと巨乳ダークエルフのマジルカの魂を鎮める為に、シリカ姫とアレクサンダー王に復讐して、この国を転覆させてやるという壮大な目標が定まったのだ。

「クックックックッ。やはり、偉大なる卍様は、世界征服を企んでいらっしゃったんですね！」

　ちょっと、感情が高ぶってた為か、クロメに俺の思考が読まれてしまったようである。

『イヤイヤ、勘違いするなよ！ 俺は、ただ、この国の王様と王族が許せないと思っただけだからね！』

　俺は、慌てて、クロメに否定する。俺は、ただ、異世界人を好き勝手に召喚して、使い潰しにするような王国や王族を、偉そうに、のさばらせておくようなお人好しじゃない！ってだけなのだ。

「フッフッフッフッフッ。分かっていおりますとも。 この卍様の一番の下僕であるクロメが、目玉で自由に動けない卍様の代わりに、この国と王族を、巨大灼熱魔法の大灼熱地獄ヘルファイアで燃やしつくしてやれば良いのですよね！！」

　クロメは、封印されし魔眼の設定が、本当の現実になったのが、余っ程嬉しかったのか御満悦。
　良い子に育って欲しかったんだけど、勇者リクトの敵を討つのは別の話。
　一応、俺も当事者だし、このまま行くと、俺、そのうち勇者リクトの怨念渦巻く魂に、体を乗っ取られそうだし。今現在も、勇者リクトの禍々しい怨念混じりの魔力が漏れちゃってるし。

　だがしかし、国家を敵に回すとなると、ちょっと怖い。俺には力が有るとは言ってもね。

　中二病全開で、この国を燃やし尽くす気満々のクロメが、少しだけ頼もしく感じてしまったのは内緒の話である。

　ーーー

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