15 / 61
第2章 城塞都市グラードバッハ編
15. ミノタウルスの力こぶ亭
しおりを挟む「ジュルリ。シルバーウルフのステーキと、漫画肉! それから、醤油ラーメンと、味噌ラーメン!」
クロメが、冒険者ギルドに併設された食事処で、食べ物を次々と頼む。
この世界は、異世界勇者が居た世界なので、日本の食事も普通にあるようだ。
クロメが、イカれジジイの服をチョキチョキしてリメイクした忍者衣装も、クロメの村の正装だったらしいので、相当、この世界は日本文化が浸透しているようである。
「な……何ですか!? この世界には、こんなにも美味しいものがあるなんて!」
クロメは、目を輝かして、ムシャムシャ、凄い勢いで食事を食べている。
そりゃあ、今迄、塩味もない食事を食べてたのなら、何を食べても美味しいだろ。
「卍様、おかわりしても宜しいですか?」
『おお。ドンドン食べろ!金ならあるからな! 無くなっても、また、稼げばいいだけだし!』
クロメは、食い溜め出来ると思ってるのか、滅茶苦茶食べる。結局、ステーキ3枚。漫画肉も3つ。醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメンまで平らげた。
「ゲフ。お腹一杯です……」
『まあ、それだけ食べたらな……』
他の冒険者達も、クロメを生暖かい目で見守ってる。腹ペコ属性と、中二属性の同居した幼女なんて、誰しも距離を置きたくなるよね……
『それじゃあ、宿屋を探すか?受け付けのお姉さんが言ってた、食事が美味しいオススメ宿に向かうぞ!』
「ゲフ、美味しい食事!」
クロメは、美味しい食事に反応した。
どんだけ、食い意地が張ってるのだろう。
というか、まだ、お腹に入るのか?
受け付けのお姉さんのお勧めの宿は、『ミノタウルスの力こぶ亭』という宿屋で、漫画肉が有名な宿屋らしい。何でも、漫画肉は、ミノタウルスの力こぶから作るらしい。
他にもマンモス肉というのも有るが、コレはミノタウルスのモモ肉の事を言うらしい。流石に、この世界にマンモス居ないしね。
宿屋に付くと、1階は食事処兼、飲み屋になってるらしく、みんな漫画肉をガブ付きながら、お酒をかっくらっている。如何にも冒険者御用達の宿屋といった感じだ。
「ジュルリ……漫画肉……」
クロメは、今さっき食事を食べたばかりだというのに、ヨダレを垂らしてるし。
どんだけ食いしん坊キャラなのだろう。
兎に角、俺はクロメの保護者として、クロメを肥満児にする訳にはいかないのだ。
俺自身も、肥満児の魔眼とか嫌だしね。クロメの中二チックなセリフも、肥満だと似合わなくなるし。
だけれども、ヨダレを垂らすクロメを見てると、俺も、つい、甘くなってしまうのだ。
「漫画肉は駄目だけど、手羽先なら許す!」
そう。この宿屋の名物は漫画肉だけでは無かったのだ。手羽先も人気で、名古屋風の手羽先が売りのようだ。しかも名古屋二大勢力の甘辛い手羽先と胡椒辛い手羽先の二種類ともあったりする。
「クッ! どっちを選べばいいか、とても悩みます……」
クロメは既に、俺の異世界検索機能を使って、名古屋の二大勢力の手羽先屋の味をチェックしているようである。
甘辛いのも捨て難いし、胡椒辛いのも捨て難い。
どうやら、クロメは1種類しか頼んだら駄目だと思ってるようだ。
『2つとも食べていいぞ』
「本当ですか! 卍様!」
クロメの目が輝く。というか、ヨダレが出てる。
「矮小な人間よ!注文を頼む!」
いつものように、俺相手じゃないと、途端に偉そうになる。
「ハハーー! 矮小な人間が、注文を受け付けに来ました!」
ノリが良い、狐耳の宿屋の女将が注文を取りにくる。
「ウム。私は、甘辛味の手羽先と、胡椒味の手羽先を、50個づつ所望する!」
「そんなに食べれるのかい?」
女将が心配して聞いてくる。
無理もない。クロメって10歳くらいの幼女だからね。冒険者ギルドの受け付け姉さんの紹介が無かったら、信用無くて、この宿屋にも泊まれなかったと思うし。
「クックックックッ。誰に物を言っている。私は、世界を統べる予定の卍様の下僕よ。そんな私が、マンモス肉じゃあるまいし、たかが手羽先合計100本程度に屈すると?」
「そこまで言うなら、食べて貰おうか! 但し、全て食べれなかったら料金2倍に! 全て食べきったらタダにしてあげるよ!」
「フン! 卍様の下僕である、この私を甘くみると後悔すると思うぞ!」
「卍様が誰だか知らないが、アンタが手羽先100個食べきったら、卍様でも誰にでも頭を下げて拝んであげるよ!」
「なるほど。面白い。ならば私が手羽先100個食べきったら、お前に卍様を拝ましてやろう。そして、膝まづいて頭《こうべ》を下げるが良い!」
なんか良く分からないが、ノリの良い女将のせいで、大食い大会になってしまったようだ。というか、絶対にクロメが食べきれないと思い、料金2倍をせしめる気満々である。
クロメはこれ見よがしに、全財産が入ってる金貨袋を、テーブルの上に、ドン!と、置いてるからね。
まあ、普段から、マンモス肉チャレンジという、1人で食べきったらタダ。食べれなかったら2倍の料金というイベントをやってるみたいだし(因みに、マンモス肉は5キロ)、この店では、これが、いつもの日常なのかもしれないと、卍様は思うのだった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
幼馴染パーティーを追放された錬金術師、実は敵が強ければ強いほどダメージを与える劇薬を開発した天才だった
名無し
ファンタジー
主人公である錬金術師のリューイは、ダンジョンタワーの100階層に到達してまもなく、エリート揃いの幼馴染パーティーから追放を命じられる。
彼のパーティーは『ボスキラー』と異名がつくほどボスを倒すスピードが速いことで有名であり、1000階を越えるダンジョンタワーの制覇を目指す冒険者たちから人気があったため、お荷物と見られていたリューイを追い出すことでさらなる高みを目指そうとしたのだ。
片思いの子も寝取られてしまい、途方に暮れながらタワーの一階まで降りたリューイだったが、有名人の一人だったこともあって初心者パーティーのリーダーに声をかけられる。追放されたことを伝えると仰天した様子で、その圧倒的な才能に惚れ込んでいたからだという。
リーダーには威力をも数値化できる優れた鑑定眼があり、リューイの投げている劇薬に関して敵が強ければ強いほど威力が上がっているということを見抜いていた。
実は元パーティーが『ボスキラー』と呼ばれていたのはリューイのおかげであったのだ。
リューイを迎え入れたパーティーが村づくりをしながら余裕かつ最速でダンジョンタワーを攻略していく一方、彼を追放したパーティーは徐々に行き詰まり、崩壊していくことになるのだった。
スキル【海】ってなんですか?
陰陽@2作品コミカライズと書籍化準備中
ファンタジー
スキル【海】ってなんですか?〜使えないユニークスキルを貰った筈が、海どころか他人のアイテムボックスにまでつながってたので、商人として成り上がるつもりが、勇者と聖女の鍵を握るスキルとして追われています〜
※書籍化準備中。
※情報の海が解禁してからがある意味本番です。
我が家は代々優秀な魔法使いを排出していた侯爵家。僕はそこの長男で、期待されて挑んだ鑑定。
だけど僕が貰ったスキルは、謎のユニークスキル──〈海〉だった。
期待ハズレとして、婚約も破棄され、弟が家を継ぐことになった。
家を継げる子ども以外は平民として放逐という、貴族の取り決めにより、僕は父さまの弟である、元冒険者の叔父さんの家で、平民として暮らすことになった。
……まあ、そもそも貴族なんて向いてないと思っていたし、僕が好きだったのは、幼なじみで我が家のメイドの娘のミーニャだったから、むしろ有り難いかも。
それに〈海〉があれば、食べるのには困らないよね!僕のところは近くに海がない国だから、魚を売って暮らすのもいいな。
スキルで手に入れたものは、ちゃんと説明もしてくれるから、なんの魚だとか毒があるとか、そういうことも分かるしね!
だけどこのスキル、単純に海につながってたわけじゃなかった。
生命の海は思った通りの効果だったけど。
──時空の海、って、なんだろう?
階段を降りると、光る扉と灰色の扉。
灰色の扉を開いたら、そこは最近亡くなったばかりの、僕のお祖父さまのアイテムボックスの中だった。
アイテムボックスは持ち主が死ぬと、中に入れたものが取り出せなくなると聞いていたけれど……。ここにつながってたなんて!?
灰色の扉はすべて死んだ人のアイテムボックスにつながっている。階段を降りれば降りるほど、大昔に死んだ人のアイテムボックスにつながる扉に通じる。
そうだ!この力を使って、僕は古物商を始めよう!だけど、えっと……、伝説の武器だとか、ドラゴンの素材って……。
おまけに精霊の宿るアイテムって……。
なんでこんなものまで入ってるの!?
失われし伝説の武器を手にした者が次世代の勇者って……。ムリムリムリ!
そっとしておこう……。
仲間と協力しながら、商人として成り上がってみせる!
そう思っていたんだけど……。
どうやら僕のスキルが、勇者と聖女が現れる鍵を握っているらしくて?
そんな時、スキルが新たに進化する。
──情報の海って、なんなの!?
元婚約者も追いかけてきて、いったい僕、どうなっちゃうの?
異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。
佐々木サイ
ファンタジー
異世界の辺境貴族の長男として転生した主人公は、前世で何をしていたかすら思い出せない。 次期領主の最有力候補になるが、領地経営なんてした事ないし、災害級の魔法が放てるわけでもない・・・・・・ ならばっ! 異世界に転生したので、頼れる相棒と共に、仲間や家族と共に成り上がれっ!
実はこっそりカクヨムでも公開していたり・・・・・・
不登校が久しぶりに登校したらクラス転移に巻き込まれました。
ちょす氏
ファンタジー
あ~めんどくせぇ〜⋯⋯⋯⋯。
不登校生徒である神門創一17歳。高校生である彼だが、ずっと学校へ行くことは決してなかった。
しかし今日、彼は鞄を肩に引っ掛けて今──長い廊下の一つの扉である教室の扉の前に立っている。
「はぁ⋯⋯ん?」
溜息を吐きながら扉を開けたその先は、何やら黄金色に輝いていた。
「どういう事なんだ?」
すると気付けば真っ白な謎の空間へと移動していた。
「神門創一さん──私は神様のアルテミスと申します」
'え?神様?マジで?'
「本来呼ばれるはずでは無かったですが、貴方は教室の半分近く体を入れていて巻き込まれてしまいました」
⋯⋯え?
つまり──てことは俺、そんなくだらない事で死んだのか?流石にキツくないか?
「そんな貴方に──私の星であるレイアースに転移させますね!」
⋯⋯まじかよ。
これは巻き込まれてしまった高校17歳の男がのんびり(嘘)と過ごす話です。
語彙力や文章力が足りていない人が書いている作品の為優しい目で読んでいただけると有り難いです。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
二桁等級の成り上がり〜僕だけステータス操作(体重)出来る件〜
KeyBow
ファンタジー
孤児院を卒業した14歳のバンスロットは、冒険者としての道を歩み始めるも、最底辺の10級からのスタートだった。仲間も才能もない彼は、稼ぎの悪い底辺の仕事をこなしながらその日暮らしで生計を立てていたが、1年が経ち、彼の運命は一変する。
15歳の誕生日に、バンスロットは記録にない超レアギフト【ステータス操作(体重)】を手に入れる。
数日後、運悪く魔物に襲われるも撃退し、この新たな力でゴブリンやオークを次々と倒し、冒険者としてのランクを上げていくバンスロット。
道中で出会った個性的で美しい美少女たち、クセの強い仲間と共に、バンスロットの冒険はさらに壮大に。壮絶な戦闘や困難を乗り越え、彼の心にも変化が訪れる。体重をパラメーターに変えられる超レアなステータス操作のギフトを駆使し、孤児から英雄へと成り上がるバンスロットの物語。
底辺から這い上がり、仲間と共に冒険を続ける彼の成長と戦いを描いた、感動の冒険譚。友情、愛、そして勇気に満ちたバンスロットの活躍を、ぜひご覧ください。
【主人公視点の物語です】
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
地球の知識で外れスキルと言われたスキルツリーはチートでした。
あに
ファンタジー
人との関係に疲れ果てた主人公(31歳)が死んでしまうと輪廻の輪から外れると言われ、別の世界の別の人物に乗り替わると言う。
乗り替わった相手は公爵の息子、ルシェール(18歳)。外れスキルと言うことで弟に殺されたばかりの身体に乗り移った。まぁ、死んだことにして俺は自由に生きてみようと思う。
料理好きわんこ君は食レポ語彙力Lv.100のお隣さんに食べさせたい!
街田あんぐる
BL
柘植野 文渡(つげの・あやと)28歳の住むマンションのお隣に越してきたのは猪突猛進わんこ系の大学生・柴田。ある日柴田がアッツアツのグラタンを持っておすそ分けに突撃してきて、柘植野は一瞬で胃袋を掴まれてしまう。
トラウマ持ちで「若者とは適切な距離を保ってよい導き手として接する」がモットーの柘植野は、柴田の「ご飯パトロン」になると提案して柴田との間に一線を引こうとするが、同じ釜の飯を食う2人は徐々にお互いを知っていく。
そして2人の間に生まれた淡い感情。しかし柘植野の秘密の職業や過去の奔放な性生活が足を引っ張る中、2人の関係は変わっていくのか……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる