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第一章 魔眼転生
11. 洪水天罰
しおりを挟む「大灼熱地獄!!」
クロメの巨大灼熱魔法が炸裂した。
その威力は、大地を溶かし、村はずれの空き地に大きなクレーターを作った。
第1村人一家は、口をアングリ開けて驚いている。
「フ~快感!」
クロメは、自分の力を見せつけられて満足しているようだ。
これだけ見せつければ、何者にも、自分から大切な物を奪われないと思っているのだろう。
『クロメよ。昨日、第1村人一家が話してたよな。この辺は、あまり、雨が降らないから、作物が育ちにくいと』
「心得ております。卍様」
クロメは、俺の言葉で全てを察したのか、再び、魔法の詠唱を始める。
「水の女神アクエリアスよ! 我が主、卍様が水をご所望じゃ! 殺されたくなければ、直ちに、このクレーター一杯になる雨を降らすのだ!偉大なる我が主、卍様の名において命じる! 洪水天罰!!」
クロメが、詠唱を終えると、早朝だというのに、辺りが薄暗くなる。
そうこうしてると、空き地の上空に、巨大な積雷雲が出来上がり、何百もの雷が、轟音と共にに、至る所に落ちる。
そして、積雷雲の中から、バケツをひっくり返したような大量の水が、ドッバッバッバッバッパーン!!と、フリーフォールのように降り落ちて来たのだ。
「クックックックックッ。この世界の女神も大した事ありませんね。偉大なる卍様の名前を出したら、ビビって、すぐに言う事聞いてくれましたよ!」
まあ、確かに、クロメの魔法の詠唱は、詠唱というより、ただの上から目線の命令だった。女神を脅して命令するって、もはや滅茶苦茶だ。
なんか、第1村人一家は、放心状態で、鯉みたいに口をパクパクさせてるだけだし。
まあ、コレで、暫く雨が降らなくても安心だろう。だって、日本で一番小さな湖。白竜湖ぐらいの大きさは有るしね!
てな訳で、俺とクロメは、シルバーウルフとホーンラビットを求めて、東に向かう。
第1村人の一家と別れの挨拶をしたかったのだが、無理そうだったから諦めた。
クロメに、挨拶の大切さを教えようと思ってたのに、ちょっと残念。
まあ、それよりも肉が食べたい。
ん?魔眼なのに、肉の味が分かるのかって?
俺とクロメのシンクロ率は100%なのだよ。
味も普通に分かるからね。
俺とクロメは、一心同体なのだ。
『所でクロメよ。お前、大魔法ばかり使ってるけど、普通の魔法って使えるのか?』
俺は気になって、聞いてみる。
クロメが今まで使った事ある魔法は、全て大魔法ばかり。
イカれジジイを殺した煉獄業火だけが、弱めだったと思うが、インフェルノって、罪人しか殺せない魔法なんだよね。しかも、罪人を煉獄の炎で燃やし尽くす魔法だから、消し炭しか残らない。それじゃあ、肉が残らないんだよね。
「心配なさらないで下さいませ。私は、暗殺者養成機関である、黒耳族の村で育ちました。それなりの暗殺技術は身につけてます。
しかも、私は、食事を与えて貰えなかったので、よく野ウサギを狩って焼いて食べてましたから、狩猟も料理も得意です!」
まさかの答え。クロメは家で食事も与えられてなかったネグレクトであったようだ。
『そ……そうなんだ』
「魔族に黒耳族の村が襲われた時に、死を間逃れたのも、殆ど村に戻らず森で生活してたからです!」
なんか、クロメって、相当ハードなサバイバル生活を送ってたようである。まだ、幼い子供なのに可哀想過ぎる。
まあ、しかし、旅をする上では助かる。
野ウサギ狩ってたくらいだから、魔物だけど、同じ兎だから、ホーンラビットぐらい狩れるだろう。
だがしかし、クロメって武器持ってたっけ?
流石に、武器無しで魔物と戦えないだろ?
『果物ナイフを持ってます』
俺が質問する前から、クロメが答えた。
多分、ジジイの家でくすねてきたのだろう。
そういえば、ジジイの家にあったリンゴを、果物ナイフで剥いて食べてた記憶がある。
というか、クロメは、俺の心を読んでないか?
時々、皆まで言わなくても、俺が言わんとしてる事を、完璧に理解してる事が多々ある気がするんだよね……
「はい。シンクロ率100パーセントなので、卍様の考えてる事も、全て、筒抜けですね」
まさかの答え。
『嘘だろ?お前の考えてる事、俺、分かんないぞ!』
「私はすぐに気付いて、卍様に思考を読まれないようにガードしてますから!」
確かに……最初、クロメとパスが繋がった時、クロメの過去の記憶が俺の中に入って来てた。
もしかしたら、それが、ずっと今迄続いてたという事なのか?
俺は、すぐにクロメの記憶が入ってこなくなったから、最初だけの現象だと思ってたけど、あれは実際、今でも続いていたのである。
クロメには、今でも俺の記憶というか、考えてる事が筒抜けなのだ。
なんか、めちゃんこ恥ずかしいのだけど……
俺が、クロメの事を良い子に育てようだとか、初め、中二病のイタい子だと思ってた事とか、全部、筒抜けだったという事だ。
シンクロ率100%って、恐ろしいぜ。
良い事ばかりでは無いと、俺は、ひしひしと思い知ったのだった。
ーーー
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