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第一章 魔眼転生
5. 煉獄の魔術師
しおりを挟む『ウオォォォォーー!! キタキタキタキタ!』
俺とクロメの視神経が、1つ1つ繋がるのを感じる。
【シンクロ率20%、シンクロ率50%、シンクロ率78%】
なんか機械的な声が聞こえてくる。
シンクロ率?まあ、よく分からないが、相性みたいなもんか?
【シンクロ率85%、シンクロ率92%、シンクロ率95%】
『オイオイオイ! シンクロ率95%って! 相当、俺たち相性良いだろ!』
【シンクロ率96%、シンクロ率97%、シンクロ率98%、シンクロ率99%……】
『まさかの、シンクロ率99%だと!』
【……】
なんか、まだ終わっていない。そして、待つこと30秒。
【シンクロ率100%】
『キッター! 来ちゃったよ! 俺とクロメのシンクロ率100%!』
俺は、クロメとお祝いしたい所だが、肝心のクロメが、四つん這いに跪いている。
無理もない。未だにクロメは、イカれジジイの奴隷のままなのだ。
しかも、ジジイの命令を無視し続け、俺の元にやって来たのだ。その反動が今来ている。
命令に背いた罰として、体中に電気が走ってビリビリしているのである。
『イイネ~この電気ショック』
どうやら、俺とクロメの繋がったばかりの視神経を刺激して、逆に、一体化したばかりの魔眼の良いリハビリになっていたりする。まあ、クロメは辛そうだけど。
それじゃあ、どうしようかね。
まずは、クロメを苦しめてる隷属の首輪だよね。
隷属の首輪の事なら、俺は良く知ってるのだ。
ここに連れて来られた奴隷が付けてたので、良く観察できてたし、この家にある蔵書の中に、隷属の首輪の事が書かれてた書物もあったし。
隷属の首輪は、奴隷を血紋で縛り付ける魔道具。奴隷の所有者の血さえあれば、何とでもなるのだ。
因みに、俺は、イカれジジイに装着されてた事があるから、ジジイの血紋を記憶してるんだよね!
それを改ざんし、新たな所有者として、取り敢えず、俺がクロメの所有者になってやった。
ん?何で、奴隷から解放しないのかって?
そんな事、決まってるでしょ! 俺はクロメに捨てられたくないんだよ!
俺って、体がないから、宿主が居ないと何処にも行けないんだよ!
卑劣とでも、何とでも言ってくれ。
俺は、クロメに寄生して生きていくの!
「我が主よ。何なりとご命令を」
『ん? 我が主?』
なんか、クロメが、おかしくなっている。
イカれジジイの奴隷じゃなくなって、自由に動けるようになったのは分かるが……何故に、俺が、我が主?
まあ、形の上では、俺が主人でクロメは奴隷だけど、俺は普通に接したかったのである。
「ささ!何なりと!」
『何なりと、言われても……』
なんかのプレイをしているのか?
クロメの過去の記憶が俺の中に入ってきたように、俺の過去の記憶も、クロメの頭に入って行った筈だから、俺の気持ちも分かってる筈なのに。
「それでは、まず、そこに居る矮小な人間でも始末致しますか?」
クロメは、魔眼作りに夢中なイカれジジイを見やる。
『始末すると言っても、クロメには、何の力もないだろ?』
「クックックックッ。ご冗談を。今現在、私の体に、主様からの禍々しい魔力が、大量に入り込んで来ておりますが?」
『え?嘘でしょ?』
まさかの回答に、俺はビビる。
禍々しい魔力って、何?
「本当でございます。この世の物ではない、異界からの魔力と情報が、絶えず、私の中に流れ込んで来ています!」
『情報も?』
なんか、クロメの言葉は、俺の常識の範疇を越えている。というか、訳が分かんない事ばかりなんだけど。
「多分、私と主様のシンクロ率が100%なのが、原因であるようです。そのお陰で、主様を経由しなくても、直接、私自身で異世界の情報を検索出来るようです」
『嘘だろ?あのイカれジジイに使われた時は、そんな事できなかったぞ!』
俺は、クロメに反論する。
「それは、主様と、ジジイのシンクロ率が、たったの5%だったからだと思われます。
しかしながら、私と主様のシンクロ率は、相思相愛の100%ですから、為せる業なのです!」
何故か、クロメは、ドヤ顔で答える。
『な……なんか、凄いね……』
「凄いのは、主様でございます。私など、何者でもありません。
しかし、巨大過ぎる力は、人の気を大きくするもの。
今すぐ、この沸き上がる力を、魔力を、私は解放してみたいのです!」
なんか、クロメの目が血走ってる。
というか、俺自身が、青白く光り輝いている。
クロメはヤル気満々で、俺の力?を勝手に解放しようとしているようである。
『オイオイオイ! 何するつもりだ?』
「勿論、矮小なる糞虫を滅するだけですが?」
『嘘だろ?!』
「何を、仰りますか? 主様の覇業の邪魔になる者達を、普通に排除するだけですが?」
もう、ここまで来るとクロメの暴走を止められない。この子、こんなにヤバい娘だったの?記憶を見た感じだと、凄く大人しそうな子だった筈なのに。
なんか、いつの間にか、ブツブツと長ったらしい詠唱を開始してるし、そもそもクロメって、魔法なんて使えたのか?
先程、入り込んで来たクロメの記憶に、クロメが魔法を使える情報など、何一つ無かったんだけど……
「煉獄の炎よ!我が主、偉大なる卍様の名の元に命じる!その矮小なる罪人を燃やし尽くせ!煉獄業火《インフェルノ》!!」
クロメが、中二病満載の詠唱を全て言い終えると、クロメの前に巨大な魔法陣が発動し、
そして、イカれジジイに向かって、煉獄の炎。罪を燃やし尽くすという伝説の大魔法インフェルノが炸裂する。
魔法に気付いたイカレ爺さんが、絶叫する。
「な……何じゃと! まさか、ワシが作った鑑定眼を使いこなしておるじゃと!」
罪多き大錬金術師のイカれ爺さんが、なんか燃えながら感動しているし。
「ワシの人生を掛けた研究は成功じゃったのか?嬉しいぞ!ワシは嬉しいぞ!ワシは、人生をやり切った! 我が人生に一遍の悔いなし!」
イカれ爺さんは、泣き笑いしながら灰になった。
なんか知らんが、こんなに喜ばれてしまったら、とても良い事した気分になってしまう。
人殺ししたのにね。
まあ、クロメも、変な罪悪感を抱かなくて良かっただろう。
とか、心配してるのは俺だけで、クロメは、全くもって気にした様子はなく、キメポーズの練習をしてるし。
「我が主よ。魔法攻撃ををキメた後、主様の偉大さをアピールする為に、左手でチョキをして、瞼を拡げるのはどうでしょうか?」
『う~ん……別にやらなくていいかな……』
俺は、クロメを傷付けないように、やんわりと断るしかなかった。
ーーー
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