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144. アニエス聖都包囲網
しおりを挟む俺達『銀のカスタネット』のメンバーと、プラス常闇の魔女(母さん)は、現在、サクラ姫が総司令官をしてる連合軍の最前線にて、アニエス神聖国帝都を囲むように包囲していた。
ここまでの道のりは、アニエス神聖国までは無風。超絶有名人である俺の母さん、常闇の魔女まで連合軍に付いたと知ったアニエス教を信じる国々も、今回の戦争にはバツーダ帝国と同様に静観を決めたのである。
まあ、サクラ姫の工作も聞いてると思うけどね。
ナナミさんが作った大型ビジョンを、大陸中の各国に設置して、毎日、女神がどれだけ悪なのか、ヘイトスピーチしまくってたし、しかも、まだ発現してない筈の『魅了』スキルが発動しちゃってるので、ほぼ洗脳だしね。
本当にサクラ姫の才能は、恐ろし過ぎる。
しかも、その才能を俺を持ち上げるだけに使ってるしね。
本当に末恐ろしい、俺の正妻である。
でもって、超有名人てある常闇の魔女の俺の母さんまで、俺を息子と発表。
いきなり注目を浴びて、俺も四苦八苦。
S級冒険者ギルドの『銀のカスタネット』の団長って、常闇の魔女の息子だったのかよ!て、ちょっとした騒動が起こったぐらいだし。
そして、みんなの俺を見る目が少し変わったのだ。
俺、実を言うと、『銀のカスタネット』で、そんなに目立ってなかったんだよね。
いつも、肌の露出の多いアマンダさんや、いつも血まみれ幼女のサクラ姫のインパクトが大き過ぎて、ナナミさんもそんなに目立ってなかったけど、俺達メンバーから言わせれば、一番問題児のナナミさんの今迄してきた行動(バツーダ帝都を壊滅、アニエスダンジョンを真っ二つに破壊)がバレたら大事になってしまうし、そんな訳で、目立たない方が良い訳で……
そんなナナミさんは置いといても、俺は『銀のカスタネット』団長だというのに、あまり目立ってなかったのだ。
(マール王都でだけは、腕相撲がそんなに強くないのに、腕相撲が大好きな変わり者と思われてる)
それなのに、サクラ姫は、毎日、大型ビジョンで、俺がいかに凄いか宣伝?洗脳しちゃうし、どうやら結構お調子者の母さんまで、大型ビジョンに出演して、サクラ姫と一緒になって、俺の事を凄い息子と持ち上げるのだ。
俺は、ここまでされると本当に恥ずかしくて、俺の母さんって、こんなんだったのかよって……まあ、面と向かって文句は言わないのだけど、やられるがままになっているのである。
「クックックックッ。僕が認めたオットとトト君が、みんなにも認められて、もっとお金持ちになれば、僕のお小遣いがもっと増える」
相変わらず、ナナミさんは何を考えてるか分からないし。
何故か俺達と随伴してる継母は、ヨダレを垂らして、俺の母さんを見てるし。
継母は、俺の母さんのファンだとか言ってたけど、実際、こんなんだったの?
2人で話してる時は、俺の母さんによく小言言ってるけど、離れて遠くで見てる時は、俺の母さん見て、ヨダレ垂らして興奮してるし……どんどけツンデレなのだろう。
そんな感じで、アニエス神聖国を囲んでるのだけど、アニエス神聖国軍は、女神を信じてる熱狂的な信者を中心に、俺達連合軍に対して徹底抗戦の構えを見せている。
女神なんて、そんなに信じるべき神様じゃないと思うのだけど、多分、直接見てないからであって、直接、女神を見たら、誰もが幻滅すると思うし。
本当に、女神の為に戦おうとしてるアニエス神聖国軍の人々が可哀想でならない。
だけれども、サクラ姫はヤル気満々だ。
決して手抜きする素振りは見せない。
アニエス神聖国まで来たら、ここまでして来たように、女神を貶めるヘイト映像を大型ビジョンを使ってこれまで以上に垂れ流しにしてるし。
というかこれ何?
俺には、空中に、サクラ姫が女神にヘイトスピーチする巨大な映像が見えてるのだけど。
ナナミさんが言うには魔道式ホログラムビジョンとか言うらしい。
そして、山のようなスピーカー?の山?
ナナミさんが言うスピーカーの意味は分からいが、兎に角、言葉を拡張して、大きく聞こえるようにする魔道具らしい。
しかも、これでもかとスピーカーを積み上げて山のようにしてるのだ。
ナナミさんが言うには、
「これが『銀のカスタネット』が誇るサウンドシステムなのだ!クワッハッハッハッハッハッ!」
なんか珍しく、テンション高めだし。
まあ、物凄い爆音の中で喋ってるし、サウンドシステムによる重低音により、自分の心臓が震える感覚に襲われて、その心臓のドキドキに勘違いして、テンションが上がってしまってるのかもしれない。
「サウンドクラッシュは、やはりサウンドシステムを出さないと舐められる。
女神は、サウンドシステムを持ってないエセサウンド。どんなに凄いダブを持ってたとしても、僕には絶対に敵わない」
相変わらず、ナナミさんは意味不明な事を言っている。
兎に角、ナナミさんはサクラ姫のヘイトスピーチを録音しまくり、それを必殺ダブとして流しまくってるのである。
そもそも、ダブの意味が分からないのだけど、ナナミさんの攻撃が凄い事だけは分かる。
だって、俺だったら、爆音で自分のヘイトスピーチを流され続けられたら凹むもん。
きっと、女神も相当なダメージを受けてるに違いない。
実際、アニエス神聖国の兵士達も動揺し始めてるし。
「クックックックッ音楽の力は、偉大なのだよ」
「偉大というか、どう考えても悪口言ってるだけだろ」
俺は、思わず、ナナミさんの言動に反応してしまう。
「フッ。おっととトト君。サクラの演説がただの悪口だとも?
サクラには、ちゃんと注文して、韻を踏ませて演説してもらってるのさ!
韻を踏んだ時点で、その言葉はリリックになり、歌詞になるのだよ」
なんか、いつもより饒舌かナナミさんが、またしても、韻やら、リリックやら、俺の知らない言葉を連発するもんだから、余計に意味不明になってしまうのは、いつもの事であった。
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