上 下
144 / 166

144. アニエス聖都包囲網

しおりを挟む
 
 俺達『銀のカスタネット』のメンバーと、プラス常闇の魔女(母さん)は、現在、サクラ姫が総司令官をしてる連合軍の最前線にて、アニエス神聖国帝都を囲むように包囲していた。

 ここまでの道のりは、アニエス神聖国までは無風。超絶有名人である俺の母さん、常闇の魔女まで連合軍に付いたと知ったアニエス教を信じる国々も、今回の戦争にはバツーダ帝国と同様に静観を決めたのである。

 まあ、サクラ姫の工作も聞いてると思うけどね。
 ナナミさんが作った大型ビジョンを、大陸中の各国に設置して、毎日、女神がどれだけ悪なのか、ヘイトスピーチしまくってたし、しかも、まだ発現してない筈の『魅了』スキルが発動しちゃってるので、ほぼ洗脳だしね。

 本当にサクラ姫の才能は、恐ろし過ぎる。
 しかも、その才能を俺を持ち上げるだけに使ってるしね。
 本当に末恐ろしい、俺の正妻である。

 でもって、超有名人てある常闇の魔女の俺の母さんまで、俺を息子と発表。
 いきなり注目を浴びて、俺も四苦八苦。

 S級冒険者ギルドの『銀のカスタネット』の団長って、常闇の魔女の息子だったのかよ!て、ちょっとした騒動が起こったぐらいだし。

 そして、みんなの俺を見る目が少し変わったのだ。
 俺、実を言うと、『銀のカスタネット』で、そんなに目立ってなかったんだよね。

 いつも、肌の露出の多いアマンダさんや、いつも血まみれ幼女のサクラ姫のインパクトが大き過ぎて、ナナミさんもそんなに目立ってなかったけど、俺達メンバーから言わせれば、一番問題児のナナミさんの今迄してきた行動(バツーダ帝都を壊滅、アニエスダンジョンを真っ二つに破壊)がバレたら大事になってしまうし、そんな訳で、目立たない方が良い訳で……

 そんなナナミさんは置いといても、俺は『銀のカスタネット』団長だというのに、あまり目立ってなかったのだ。
(マール王都でだけは、腕相撲がそんなに強くないのに、腕相撲が大好きな変わり者と思われてる)

 それなのに、サクラ姫は、毎日、大型ビジョンで、俺がいかに凄いか宣伝?洗脳しちゃうし、どうやら結構お調子者の母さんまで、大型ビジョンに出演して、サクラ姫と一緒になって、俺の事を凄い息子と持ち上げるのだ。

 俺は、ここまでされると本当に恥ずかしくて、俺の母さんって、こんなんだったのかよって……まあ、面と向かって文句は言わないのだけど、やられるがままになっているのである。

「クックックックッ。僕が認めたオットとトト君が、みんなにも認められて、もっとお金持ちになれば、僕のお小遣いがもっと増える」

 相変わらず、ナナミさんは何を考えてるか分からないし。

 何故か俺達と随伴してる継母は、ヨダレを垂らして、俺の母さんを見てるし。
 継母は、俺の母さんのファンだとか言ってたけど、実際、こんなんだったの?

 2人で話してる時は、俺の母さんによく小言言ってるけど、離れて遠くで見てる時は、俺の母さん見て、ヨダレ垂らして興奮してるし……どんどけツンデレなのだろう。

 そんな感じで、アニエス神聖国を囲んでるのだけど、アニエス神聖国軍は、女神を信じてる熱狂的な信者を中心に、俺達連合軍に対して徹底抗戦の構えを見せている。

 女神なんて、そんなに信じるべき神様じゃないと思うのだけど、多分、直接見てないからであって、直接、女神を見たら、誰もが幻滅すると思うし。

 本当に、女神の為に戦おうとしてるアニエス神聖国軍の人々が可哀想でならない。

 だけれども、サクラ姫はヤル気満々だ。
 決して手抜きする素振りは見せない。
 アニエス神聖国まで来たら、ここまでして来たように、女神を貶めるヘイト映像を大型ビジョンを使ってこれまで以上に垂れ流しにしてるし。

 というかこれ何?

 俺には、空中に、サクラ姫が女神にヘイトスピーチする巨大な映像が見えてるのだけど。

 ナナミさんが言うには魔道式ホログラムビジョンとか言うらしい。

 そして、山のようなスピーカー?の山?

 ナナミさんが言うスピーカーの意味は分からいが、兎に角、言葉を拡張して、大きく聞こえるようにする魔道具らしい。

 しかも、これでもかとスピーカーを積み上げて山のようにしてるのだ。

 ナナミさんが言うには、

「これが『銀のカスタネット』が誇るサウンドシステムなのだ!クワッハッハッハッハッハッ!」

 なんか珍しく、テンション高めだし。
 まあ、物凄い爆音の中で喋ってるし、サウンドシステムによる重低音により、自分の心臓が震える感覚に襲われて、その心臓のドキドキに勘違いして、テンションが上がってしまってるのかもしれない。

「サウンドクラッシュは、やはりサウンドシステムを出さないと舐められる。
 女神は、サウンドシステムを持ってないエセサウンド。どんなに凄いダブを持ってたとしても、僕には絶対に敵わない」

 相変わらず、ナナミさんは意味不明な事を言っている。
 兎に角、ナナミさんはサクラ姫のヘイトスピーチを録音しまくり、それを必殺ダブとして流しまくってるのである。

 そもそも、ダブの意味が分からないのだけど、ナナミさんの攻撃が凄い事だけは分かる。

 だって、俺だったら、爆音で自分のヘイトスピーチを流され続けられたら凹むもん。

 きっと、女神も相当なダメージを受けてるに違いない。

 実際、アニエス神聖国の兵士達も動揺し始めてるし。

「クックックックッ音楽の力は、偉大なのだよ」

「偉大というか、どう考えても悪口言ってるだけだろ」

 俺は、思わず、ナナミさんの言動に反応してしまう。

「フッ。おっととトト君。サクラの演説がただの悪口だとも?
 サクラには、ちゃんと注文して、韻を踏ませて演説してもらってるのさ!
 韻を踏んだ時点で、その言葉はリリックになり、歌詞になるのだよ」

 なんか、いつもより饒舌かナナミさんが、またしても、韻やら、リリックやら、俺の知らない言葉を連発するもんだから、余計に意味不明になってしまうのは、いつもの事であった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恩恵沢山の奴隷紋を良かれと思ってクランの紋章にしていた俺は、突然仲間に追放されました

まったりー
ファンタジー
7つ星PTに昇格したばかりのPTで、サポート役をしていた主人公リケイルは、ある日PTリーダーであったアモスにクランに所属する全員を奴隷にしていたと告げられてしまいます。 当たらずとも遠からずな宣告をされ、説明もさせてもらえないままに追放されました。 クランの紋章として使っていた奴隷紋は、ステータスアップなどの恩恵がある以外奴隷としての扱いの出来ない物で、主人公は分かって貰えずショックを受けてしまい、仲間はもういらないと他のダンジョン都市で奴隷を買い、自分流のダンジョン探索をして暮らすお話です。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね

カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。 本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。 俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。 どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。 だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。 ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。 かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。 当然のようにパーティは壊滅状態。 戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。 俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ! === 【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。 婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。 しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...