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142. 女神の怒り

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「これは一体、どういう事なのよ!」

 アニエス神聖国の教皇から、マール王国がアニエス神聖国に宣戦布告をして来たという報告を受けた女神は大荒れ。

「これから人族の領域に、魔王率いる魔族が攻めてくるというのに、何故、この時期に人族同士の国が争う訳?!
 今でも相当ヤバい状況なのに、本当にどうなるのよ!
 人族が勝ってくれないと、私は魔族にとって悪神だから、魔族がアニエス神聖国まで攻めて来たら殺されちゃうのよ!
 本当に、誰がアニエスダンジョンを真っ二つに折ったのよ!
 そのせいで、もう、計画が無茶苦茶よ!
 本来なら、アニエスダンジョンの頂上の空中庭園から、魔族が人間を蹂躙する様子を観戦しようと思ってたのに、堕女神したせいで、計画の大幅な変更をしてたというのに……」

 そう、女神は最初の魔族に魔王を誕生させて、人族の人口を3分の2まで減らすという作戦の変更を考えていたのである。

 もう、魔王を誕生させた後なので、本来なら今更遅いのだが、女神が堕女神してしまってる今、魔族に人族の国を蹂躙させる訳には行かなくなってしまったのである。

 だって、人族の国には、自分が堕女神してしまってるから。
 魔族が人族を蹂躙するついでに、絶対に自分も殺されてしまうし、その力を、現在の魔王は持っているのである。

 その為、女神は、人族と魔族の戦争を引き分けで終わらせようと考えてたのだ。
 人族と魔族の人口を平等に半分づつ減らせば、この世界の均衡は保たれるから。

 それなのに、人族同士で戦争する?
 女神が堕女神する前なら、どうぞ勝手にやって下さいって感じだったのだが、今は駄目なのだ。
 今、人族全体の戦力が落ちてしまうと、魔族がアニエス神聖国まで攻めて来てしまう。

 なので、女神は荒れているのだが、ちょっと人族の事を舐めて対応してた女神では、どうする事も出来ない状況に陥っていたりする。

 折角、女神を信仰してる国々が女神詣でに来てたというのに、全ておざなりに対応してしまっていたのだ。

 なので、どこの国も、今更、女神を助けようとは思わなかったのである。
 しかも、早い段階で、アニエス教を信じる大国バツーダ帝国が、戦争の不干渉を宣言してしまったもんだから、他のアニエス教を信じる国々も静観する構えになってしまってるし。

 完全に現在の女神は、四面楚歌の状態。

「なんで私は、この世界の均衡を保つ為に頑張ってるだけなのに、私自身が追い詰められてるのよ!」

 女神は、報告に来ていたアニエス教の教皇に、持ってたティーカップを投げつける。

「私共の布教の仕方が至らず、申し訳ございません!」

 教皇は何も悪くないのに、土下座して女神に謝る。
 全ては、女神が招いた状況だと言うのに。

 女神がもうちょっと、女神詣でに来てた各国の使節団に、ちゃんとした対応をしてれば、マール王国がアニエス神聖国に宣戦布告した時点で、皆、我先にと、女神を守る為に立ち上がってくれたかもしれないのに。

 もっというと、魔王を誕生させて、人族の3分の2を虐殺させるという計画を立てていなかったら、こんな事にはならなかったのだ。

 因みに、常闇の魔女の見解によると、この女神が、人と魔族の人数をコントロールする行為は傲慢でしかない行為なのだとか。
 人も魔族も、女神がほかって置いても勝手に戦争して殺し合うし、飢饉や疫病などの自然災害も起きるので、人口は何もしなくても減る筈という考えなのである。

 実際にバツーダ帝国とかも、他国に戦争しまくってたし。
 魔族にしても、基本は人族と同じだから、勝手に戦争して人は減るのである。

 それをわざわざ、勇者や魔王を誕生させて、大々的に殺し合わせる必要など、本来ないのだ。ほかってても、自然の摂理で、勝手に人は減る。

 それを管理しようとするのが、女神の傲慢。
 自分がこの世界を統べる最高神なのだから、この世界をコントロールするのは当然という考えから、本来、やらなくても良い事をやってるだけなのであった。

「各国に、もう発表しなさい!魔族に魔王が誕生したから、数年以内に魔王軍が、人が総べる世界に戦争を仕掛けてくると!
 なので、今は、人族同士で争う時期では無い事を、直ぐに各国に発表するのです!」

 まあ、この発表をして、各国には衝撃が走ったのは事実だが、そもそもアニエス神聖国に宣戦布告してるのは、多民族国家のマール王国と、それ以外は、エルフやドワーフや獣人などが統べる、所謂、亜人の国。

 そもそもが、人種族至上主義的な所があるアニエス教に思う所が有った国ばかりなのである。
 いくら、魔族が人族が治める領域に攻めてくると言われても、関係無かったりする。

 亜人に言わせれば、人族も魔族も、そう変わらなものなのだから。
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