140 / 145
140. サクラ姫、マール国民を扇動する
しおりを挟むヤル気になったサクラ姫の動きは早い。
早速、王城に行って、父親のマール国王に事情を説明に行った。
「そうか!トトの母親は、常闇の魔女だったか!
それなら、トトの実力の理由がつく!
そして今でも、カスタネット準男爵の妻だと?!
そしたら、直ぐにでもカスタネット準男爵の爵位を上げよ!
折角、常闇の魔女が、この国の爵位を持った貴族の妻をしてるのに、逃がす訳にはいかないからな!
それでは、カスタネット準男爵は、そうだな。新たに子爵の地位をやろう!
そして、次男ニコルに、カスタネット準男爵を継がせる事に決定する!」
ん?サクラ姫が話した、女神打倒の件はどうなった。
話が完全にそれている。
女神打倒より、王様は、常闇の魔女であった俺の母さんを、マール王国に引き込む事の方が必死であるようだった。
それからついでに、ニコル兄にカスタネット準男爵を継がせる作戦も、一緒にやってしまってるし。
これなら、長男のカーク兄も、ニコル兄にちょっかい掛けないと思う。
だって、カーク兄は、自分がカスタネット子爵家を継げると絶対に思ってると思うし。
多分だが、新たに、カスタネット子爵に爵位を上げたのは、俺の母親である常闇の魔女の為に上げた訳で、カークなんて全く関係ないし。
そもそも、カークと母さんは血の繋がりも何もないからね。
普通に不老不死である母さんが、最後まで生き残ってカスタネット子爵になっちゃうのだろう。
王様も完全に、それを狙ってるだろうしね。
まあ、常闇の魔女レベルなら、どこかの大国から爵位を貰っててもおかしくないし、たまたまカスタネット準男爵の妻をやってたから、カスタネット準男爵に子爵を与える感じになったと思うしね。
「ククククク。これで、トトをサクラの夫にする大義名分は出来た。
誰も、世界最高の魔法使い、常闇の魔女の息子が、マール王国第二王女を妻としても文句は出まい!」
なるほど、王様はそういう考えなのね。
王様は、俺とサクラ姫を結婚させたがってるから、新たな理由付けが出来て、とても嬉しかったのだろう。
まあ、それは分かったけど、女神を倒すという件は、本当にどうなっちゃったの?
「それでは、マール王国は、アニエス神聖国と、女神に宣戦布告する事とする!」
まさかの突然の宣戦布告。
マール王国は宗教の自由を保証する国なのだけど、それを置いといも、世界最大の宗教であるアニエス教の信者が一番多いのも事実である。
これ、暴動が起こるだろ?
俺が心配そうな顔をしてると、
「クックックックックッ。マール王国第2王女のサクラ・フォン・マールが、女神に挨拶に赴き、女神の人となりを見て、女神を神として認める事が判断出来なかったと国民に伝えるつもりである!
そもそも、女神が、堕女神してしまって、地上に堕ちてきた時点で、もう盲信的に崇める存在ではなくなったのだ!
簡単に会えてしまう神など、もう神などではない。しかも性格が悪いとバレてしまっては、神通力もなくなるというもの!」
そんなもん?
王様、ちょっと無理がない?
だけれども王様はやり切ったのだ。
サクラ姫の力を、最大限に利用してね。
サクラ姫に、マール国民に対して、どれほど女神が悪なのかを演説させたのである。
「マール王国の全ての国民の皆様、私は、マール王国第2王女サクラ・フォン・マールでございます。
今日、私がここに立つのは、皆様にお伝えする事があるからでございます!」
ナナミさんが開発した、テレビなる大型ビジョンに映し出されたサクラ姫が、声高らかに演説してる。
大型ビジョンは、マール王国各地に設置され、サクラ姫の演説がマール国民全てに見えるようにしたのである。
「マール国民の皆様。最初に結論を言ってしまいます。
どうか心を落ち着かして、心して聞いて下さいませ!」
サクラ姫は、一度言葉を止めて、大きく深呼吸する。
その様子を、大型ビジョンで見ているマール王国の全国民が固唾を呑んで見守っている。
そして、
「マール王国は、アニエス神聖国と、女神に宣戦布告をします!!」
突然、サクラ姫の言葉に、マール王国の全国民が悲鳴を上げる。
無理もない、女神は、この世界の最高神であるのだ。
その女神に宣戦布告とか、頭がおかしな奴が言う事であるのだ。
そしてアニエス神聖国は、女神様の意向を傘に着る権威の象徴、その国と戦争するなんて、常軌を逸してるとしか思えない。
「私は、堕女神してしまった、女神様に会いに、アニエス神聖国に赴きました。
そこで会った女神様は、到底、私共が信じるべき最高神などでは無かったのです!」
サクラ姫は、この後、どう女神が駄目なのか、事細かく丁寧に、マール国民に説明する。
マール王国第2王女のオーラ全開でね。
しかも、多分既に発言してしまってる『魅了』スキルも発揮してるから、国民もサクラ姫の言葉に傾倒して、女神が悪だと本当に思い始めてしまってるし……
サクラ姫の『魅了』スキルは、本当にヤバ過ぎる。
多分、毎日、ダンジョンで死と隣り合わせで生きてるせいで、スキルの力もより強まってるのだろう。
スキルとは、成りたい自分に成る力。
そして、そのスキルを発現させる為には、より過酷な環境で、成りたい自分を思い浮かべる事が肝心なのである。
その点、サクラ姫の場合、元々部相応な場所で、本当に死と隣り合わせの環境で生活してるもんだから分かるよね。
俺の幼少時代よりも過酷な環境で、成りたい自分を思い浮かべてた訳で、幼少期にスライムの〆殺しをマスターしてしまうぐらいの頑張り屋さんで、凄い集中力もある訳。
しかも、最近のサクラ姫のやりたい事って、世界征服なんだよね。
何故、そんな事思うようになったのかは謎だが、その為の能力というかスキルが、今、サクラ姫の中で形成されていってるのである。
その内の1つが、多分、『魅了』スキルなのだろう。
それも、物凄い強力な。
サクラ姫の演説が終わる頃には、マール王国の全国民が、女神の事を悪だと誰も疑わなくなってる始末。
そして、マール王国の国民は、聖女の誕生だと、サクラ姫を称えるのであった。
俺は、何を見せられてるのだろう。
自国の国民を扇動する第2王女?
兎に角、ここから、サクラ姫の大陸を統べる覇道が始まるのである。
ーーー
面白かったら、お気に入りにしてね!
68
お気に入りに追加
878
あなたにおすすめの小説
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。
苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
いらないと言ったのはあなたの方なのに
水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬
◇いいね、エールありがとうございます!
大嫌いな聖女候補があまりにも無能なせいで、闇属性の私が聖女と呼ばれるようになりました。
井藤 美樹
ファンタジー
たぶん、私は異世界転生をしたんだと思う。
うっすらと覚えているのは、魔法の代わりに科学が支配する平和な世界で生きていたこと。あとは、オタクじゃないけど陰キャで、性別は女だったことぐらいかな。確か……アキって呼ばれていたのも覚えている。特に役立ちそうなことは覚えてないわね。
そんな私が転生したのは、科学の代わりに魔法が主流の世界。魔力の有無と量で一生が決まる無慈悲な世界だった。
そして、魔物や野盗、人攫いや奴隷が普通にいる世界だったの。この世界は、常に危険に満ちている。死と隣り合わせの世界なのだから。
そんな世界に、私は生まれたの。
ゲンジュール聖王国、ゲンジュ公爵家の長女アルキアとしてね。
ただ……私は公爵令嬢としては生きていない。
魔族と同じ赤い瞳をしているからと、生まれた瞬間両親にポイッと捨てられたから。でも、全然平気。私には親代わりの乳母と兄代わりの息子が一緒だから。
この理不尽な世界、生き抜いてみせる。
そう決意した瞬間、捨てられた少女の下剋上が始まった!!
それはやがて、ゲンジュール聖王国を大きく巻き込んでいくことになる――
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる