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138. マリア・カスタネット

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「ハハハハハ! 本妻ちゃんって、料理作れたんだ!」

 マリアンヌさんじゃなくて、俺の母さんが、継母が作った料理を美味しそうに食べている。

「おっととトト君……この人誰?」

 今更ながら、夕食を食べに合流して来ていたナナミさんが、俺の母さんの事を聞いてくる。

 本当に今更。普通は会った瞬間に聞く事だと思うのだが、ナナミさんは夕食を食べるのに夢中で、夕食も中盤になってやっと聞いたのだ。

「フフフフフ。何を隠そう、私は常闇の魔女さんだよ!」

 母さんはどうやら、俺の母親だというのを隠す作戦らしい。

「な……なんと、常闇の魔女さん!」

 なんかナナミさんが想像以上に驚いている。

「そう! 私が常闇の魔女さん! そしてアナタは、かの有名な元武蔵野国四賢人が一人坂田権蔵のお孫さんの坂田ナナミさんでしょ!
 知ってるよ! 私が発明した魔法の鞄を再現したり、どこでも扉を発明したんでしょ!
 アナタの部屋とか、居ない間に勝手にみちゃったけど、アナタは間違いなく天才よ!」

「ウソ……常闇の魔女さんが、お爺の事を知ってくれていた……」

「感動する所、そこ!?」

 俺は、思わず、ナナミさんにツッコミを入れてしまう。
 まあ、ナナミさんが極度のお爺ちゃん子だとは知ってたけど、この世界最高の魔法使いに天才だと褒めらたというのに、常闇の魔女が、権蔵爺さんの名前を知ってた方が嬉しいなんて……

「そして、私はなんと、トトのお母さんなのだよ!」

 そして、ここで母さんは、ナナミさんに畳み掛ける。

「うん。それはそうでしょ。私とお爺が認めた我が主の母親は、常闇の魔女さんレベルじゃないと釣り合わないもん」

 なんか、渾身の母さんの畳み掛けを、ナナミさんは、完全にスルーというか、当たり前だと言ってのける。
 俺的には、どう考えても驚く所だと思うのだが、やはり、本物の天才の思考は理解できない。

「そうだよね! トトくらいの才能の持ち主なら、母親は私ぐらいしかいないか!」

 なんか、母さんも嬉しそうだ。
 どうやら、俺の母親が、自分以外に釣り合わないと言われた事が、とても嬉しかったみたい。

「そうなんだよね。トトの母親は、私だけしか考えられないんだよね!」

 本当に、どんだけ嬉しかったのだろう。
 いつの間にか、ナナミさんの隣に座り、ナナミさんをヨシヨシしてるし。

「あの……所で、マリア姐さんは何歳なんですか?
 常闇の魔女って、相当前から存在しますよね……
 本来ならお婆さんの気がするんですけど、マリア姐さんは、どう考えても20代後半にしか見えないし……」

 今更ながら、俺も相当気になってたのだが、アマンダさんが代わりに質問してくれた。
 因みに、マリアンヌさんの正式名は、マリア・カスタネットと言うらしい。
 まあ、苗字がカスタネットなのは、俺の父親のカスタネット準男爵と結婚したままらしいので当然なのだけど。

 まあ、俺が母さんと腕相撲した時、ステータスを隠してたのも、流石に、名前がマリア・カスタネットと出てしまったら、自分が俺の母親だとバレてしまうと思ったからだろう。

 だけれど、どうしても俺に、自分に興味を持ってもらいたかったからか、わざわざ改竄したステータスに、マリアンヌ(仮)と入れてたのかもしれない。

「何歳だと思う?」

「確か、ヨセフ・アッカマンと同世代と聞いた事があるからって、アレ?ヨセフ・アッカマンも30代にしか見えいんだけど……」

 ここに来て、アマンダさんが困惑してる。

 確かに、ヨセフ・アッカマンも結構昔の人なのに若く見える。
 魔法使いでも、常闇の魔女やヨセフ・アッカマンレベルだと見た目を変える事が出来るのかもしれない。

「ハハハハハ!ヨセフ君も若作りしてるの!」

 なんか、母さんはヨセフ・アッカマンと知り合いだったのか、大笑いしてるし。
 というかはぐらかされた。やはり、女性に年齢の事を聞くのは、駄目だったのだろう。

「えっとね。私の年齢は200歳ぐらいかな?」

 母さんは、呆気なく年齢を教えてくれた。

「えっ?200歳って、アッカマンと同世代じゃなかったの?」

「違うよ。ほら、私、結構偽名を使って生きて来たから、みんな私の本当の年齢を知らなかっただけ!
 だけれども、20代後半に上手い具合に魔力を体に循環させたら、歳を取らなくなると気付いて、ずっと今の若さを保ってるんだよね!
 だから私は、永遠の28歳なの!」

「プッ……永遠の18歳じゃなくて、永遠の28歳」

 何が面白かったのか、ナナミさんか吹き出してる。

「というか、アナタもやってるでしょ?」

「フフフフフ。私は、ちゃんと永遠の18歳をやってる!」

 何故か、ナナミさんが胸を張る。
 だけど、ナナミさんはドワーフで、元々若く見える種族なので、解んないんだけど。

「凄いわね。私は28歳で出来るようになったのに」

 母さんが感心してる。
 やっぱり、ナナミさんはトンデモナイ天才だったみたいだ。

「エッヘン。お爺にもやり方教えたので、お爺も永遠の88歳!」

 ナナミさんは、何故か、自分よりも権蔵爺さんの事を誇るのは、もうお約束だった。
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