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137. マリアンヌさんの本当の正体
しおりを挟む「あっ!? えっと誰だっけ? アッ!そうだ、カスタネット準男爵の本妻さん!久しぶり!」
マリアンヌさんも思い出したのか、嬉しそうに継母に抱きついた。
「久しぶりです。マリアさん。カスタネット準男爵の家を出て行ってから、ずっと、どこに行ってらしゃったのですか?」
継母がマリアンヌさんに質問する。
というか、マリアンヌさん……カスタネット準男爵の家というか、俺の実家に居たのかよ!
て、まさか……いや、それは無いよね……
だって、常闇の魔女が、俺の本当の母親の筈ないもん。
俺の母親が常闇の魔女だったら、父親のカスタネット準男爵や継母が教えてくれてた筈だし。
流石に継母も、最強の魔法使いである、常闇の魔女に嫌がらせなどしないでしょ。
「ハハハハハ。私がカスタネット準男爵の家でメイドしてた以来だね!」
マリアンヌさんが楽しそうに話ている。
まあ、継母に虐められてた人が、あんな楽しそうに継母と話す筈がないもんね。
「それで、トトさんを置いて、どこに行ってらしゃったのか聞いてるんです」
ん?俺を置いて……
「相変わらずの正論お化けだね。うん、トトを置いて、私はやるべき事をやりに行ってたんだよね。
言うならば、この世界の為に戦ってたんだよ……
それが、トトを守る事にも繋がるからね」
「そしたら、何か一言言って出ていっても良かったんじゃないですか?」
継母が、マリアンヌさんに、真剣な顔をして詰め寄る。
多分、マリアンヌさんが、カスタネット準男爵家に居た時も、こんな感じだったのだろう。
「まあ、言っても信じて貰えないし。真実言ったら、みんな混乱しちゃうと思うし、世界の全てを敵に回す事になっちゃうんだよね……
多分、カスタネット準男爵は、私の話を信じてくれたと思うけど、だけどね……」
マリアンヌさんの話は要領を得ないが、どうやら皆を守る為に、黙って出て行ってしまったようだ。
「あの……もしかして、マリアンヌさんは、トトのお母様でいらっしゃいますか?」
ここで、突然、サクラ姫が、マリアンヌさんと継母の話に割って入る。
どうやら、俺とマリアンヌさんの関係が、気になって仕方が無かったようだ。
「うん。そうだよ。本当に、アニエス聖都の安宿でトトを見た時は、ビックリしちゃったよ。
だって、トトったら、荒くれ冒険者に、早く家に帰っててママのオッパイでも飲ませてもらいな!とか、言われちゃってるんだもん!
私、思わず、飲んでたお酒をブー!て、吐き出しちゃったんだから!
だって、トトのお母さんって私だから、私が、あの場末の安宿で、トトにオッパイ飲ませないといけないの?とか、思ったら、おかしくて。おかしくて。
だから、本当は話し掛けないでおこうと思ってたんだけど、思わず話し掛けちゃったんだよね……」
マリアンヌさんは、俺の母親である事を簡単に認めた。
まあ、継母が、マリアンヌさんが俺の母親だと知ってる訳だから、今更なのだけど。
「分かりました。どういうお話か、まだ全てを聞いてませんが、私はお母様が言う事を全て信じます!
兎に角、女神様じゃなくて、あの女神が世界を仇なす神なのですよね!
そしたら、私も、マール王国も女神に敵対する事を、ここに誓います!」
なんか、まだ、マリアンヌさんの話も聞いてないのに、サクラ姫はマリアンヌさんに協力する事を決めてしまった。
「えっ?いいの?まだ、詳しく話してないのだけど?」
マリアンヌさんは、とても困惑してしまっている。
無理もない。一番敵対してた筈のサクラ姫が勝手に味方になってしまったのだから。
「はい!任せて下さいませ!お母様。例え、マール国王が女神様に敵対しないと言ったとしても、必ず私が説得してみせますわ!」
サクラ姫は、何故か自信満々だ。
余っ程、自分の交渉力に自信があるのだろう。
「別にマール王国に助けて貰おうとは思ってなかったけど、サクラちゃんがそう言うならお願いしようかな……」
「ハイ! お母様!」
なんか、マリアンヌさんがサクラ姫を手懐けてしまった。
手懐けたというか、勝手にサクラ姫が、マリアンヌさんに懐いたのだけど。
「アッ! 私も私も! 私もマリアンヌ姐さんに協力するよ!」
元々、マリアンヌさんと意気投合してたアマンダさんも追随する。
「私も協力します!」
継母まで、マリアンヌさんに協力すると言い出した。
継母って、実際、マリアンヌさんのファンとか言ってたから、まあ、そうなるよね。
「ハハハハハ。なんか、突然、仲間がたくさん増えちゃった。
この世界の主神である女神様を敵に回す訳だから、誰にも頼れなくて、ずっと一人で頑張って行こうと思ってたのに……これも、みんなトトのお陰だよ。
トトったら、こんなに頼れる許嫁を2人も作っちゃって!
本当に、私と一緒でモテるんだから!」
なんか、マリアンヌさんが俺を見て、泣き笑いしてる。
まあ、許嫁は、二人だけじゃなくて、後、もう一人居るけどね。
というか、俺、実を言うと、まだ感情が追い付いてない。
突然、マリアンヌさんが、俺の本当の母親と言われても……
俺、物心付いた頃には、母親は出て行った後だったし、俺には、母親の記憶など殆ど無いのである。
そして、継母に虐められて、母親は、カスタネット準男爵の家を出て行ったと聞かされていて、継母を、ずっと恨んでいた。
でも蓋を開けてみたら、実際、継母とマリアンヌさんは、そんなに険悪な雰囲気じゃなくて、奔放なマリアンヌさんに、継母が正論で注意するといった感じだし。
マリアンヌさんも、継母の小言など全く気にしてないし、どうやらただのツッコミか何かだと思ってたみたいだし。
俺……どうしちゃったんだろ。なんか色々思い出して考えてたら、なんか涙が止まらなくなっていた。
「トト……」
「トト君……」
なんか、サクラ姫とアマンダさんが、号泣してしまってる俺を心配そうに見てるし。
そりゃあ、なんの脈絡もなく大泣きし出したら驚くよね。
だけれども、俺は涙が止まらないのである。
俺は、ずっと実の母親に会いたかったのだ。
冒険者になって世界を旅したいと言ってたのも、実を言うと、カスタネット準男爵家を出て行った、俺の本当こ母親を探し出したかったから。
それが、こんな形で、母親を探し出す事に成功してしまったのだ。
全く、マリアンヌさんが母親だと思ってなかったのに……
ただ、マリアンヌさんは、常闇の魔女だったのかよ。スゲーとしか思ってなかったのに。
よく考えたら、アニエス聖都の安宿で、初めてマリアンヌさんに会った時から、俺にだけは優しかった。
俺の事も、最初から知ってたようだったし、ずっと、カスタネット準男爵家を出てからも、俺の情報を掻き集めていたのだろう。
俺は、実の母親に捨てられたと思ってたのだが、実際の俺は、母親に物凄く愛されていたのだ。
マリアンヌさんは、世界を救うという大切な目的があって、戦いの邪魔になってしまう俺を、泣く泣くカスタネット準男爵家に置いていった訳で、俺の事が嫌いで置いていった訳ではなかったのである。
実際、俺の目の前のマリアンヌさんも、俺が号泣してるのを見て、一緒になって号泣してしまってるし。
俺は、母親であるマリアンヌさんに、どうやら、とても愛されていたのである。
「お母さん……」
「トト」
俺は感情が抑えられなくなって、マリアンヌさんに、思わず抱きついてしまう。
マリアンヌさんも、俺の頭をヨシヨシと、遥か昔、子供の頃によく、頭の撫でてくれてたように……何度も何度も、今迄、撫でられなかった分も、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「うぅぅ……母さん、ずっと、会いたかったよ……」
「うん。お母さんもだよ。ちょっと、遅くなっちゃったけど、ただいまトト!」
母さんも、俺に会いたかったと、そして、『ただいまトト』と、とても照れくさそうだけど、満面な泣き笑い顔で言ったのだ。
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