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133. 敵対
しおりを挟むアニエス神聖国の中心部は、現在、女神様が堕女神しているせいか厳粛というか神秘的な雰囲気が漂っている。
まあ、元々、聖域だったらしいので、昔からこんな雰囲気だったかもしれないけど、なお一層、神秘的な雰囲気を醸し出してるのは明らかである。
だって、真っ白なアニエスダンジョンの麓の傍らに、アニエスダンジョンの頂上にある筈の、女神様が住まう伝説の天空庭園がぶっ刺さってるから。
因みに、天空庭園の周りは、元々あった建物の残骸やら、崩れ落ちたダンジョンの残骸の山。その上に天空庭園がある感じだ。
それで誰が作ったのか、瓦礫の山に、女神様が住まう天空庭園に繋がる真っ白な大理石で作られた長い階段が続いている。
俺達はアニエス教の信徒に案内され、天空庭園に繋がる階段に登るように促される。
「トト君……これは流石に緊張するよね……」
アマンダさんが、カチコチになって話し掛けてくる。
これは、流石のアマンダさんでも緊張するようだ。
それより、女神様の前に立つというのに、俺はアマンダさんがビキニアーマーのままという方が気になるのだけど。
まあ、アマンダさんの場合、ビキニアーマーが正装なのかもしれないけど……
兎に角、緊張するのは確かだ。
だって、瓦礫の山の上にある女神様が住まう天空庭園は、薄ら光り輝いてるし。
その点、サクラ姫はいつもの自然体のお姫様モード。なんでそんなに落ち着いていられるか疑問である。
だって、女神様を天空から堕女神された原因は俺達なのに……
そんな事を思いながら歩いてたら、あっという間に、女神様が住まう天空庭園に到着してしまっていた。
なんか、天空庭園には雲というか霧というか薄らとモヤが掛かってる。
ここは地上だというのに不思議だ。
中央には神殿のような建物が建っており、そこが女神様が寝食を行うお住いなのだろう。
そして、天空庭園というように、それ以外は地上では見ない草花が咲き誇る庭園になっている。
そんな庭園の中に、ポツンと建つ小さなガーデンテラスで、眩しいくらい光り輝く女神様が、優雅にお茶を飲んでいる。
どうやら、王族との謁見という感じではない。
俺達を無視してお茶を飲んでるし、女神様は自然体なのだ。
俺達は女神様の元に向かう。
そして、女神様から5メートルぐらい離れた場所で跪く。
礼儀として合ってるか分からないけど、まあ、俺達の椅子も用意されてないし、これで良いのだろう。
今まで、殆どの人が女神様に会った事など無かったので、女神様に対する礼儀など、誰も分からないのである。
女神様も、俺達が訪れてるというのに、ガン無視してお茶を飲んでるし。
これは俺達の方から話し掛ければ良いのだろうか?
王族と話す場合は、自分達の方から話し掛けるのは不敬となるのだけど。
分からないから、俺達はずっと膝まづいている事しかできない。
もし女神様を不快に気持ちにさせてしまったら、俺達がわざわざアニエス神聖国くんだりまで来て、女神様にお目通りする意味が無くなってしまうし。
基本、今回の目的は、サクラ姫がマール国王の代理として女神様に挨拶する事なのだ。
それ以上の事も、以下の事もする必要はない。
俺個人的には、天空庭園に咲く、『名も無き花』の朝露から作られた『女神のエリクサー』を譲って欲しいのだが、対外的には、もう材料が無い事となってるし、そもそもサクラ姫自身が、呪いを全く治す気がないので、無理に譲ってもらわなくも良いんだよね……
だから、俺達は、女神様が喋りかけてくれるのを、膝まづいて、ずっと待ってたのだが、その時、事件が起きたのだ。
なんか、天空庭園の下の瓦礫の下の方が騒がしいな?とか思ってたら、俺達以外の者が、天空庭園に駆け登って来たのだ。
まあ、俺達も駆け登ってきた雰囲気は感じてたのだが、女神様の前という事もあって振り返る事も、膝まづいて頭を下げる事も止めなかったのだが、後ろからドンドン、有り得ない殺気を発した人物が近づいてくるもんだから、そりゃあ振り返るよね。
女神様を守らないといけないし。
そして、振り返って目が合ったのが、なんと安宿で出会ったマリアンヌさんだったのである。
「なんで、トトが……」
なんか、マリアンヌさんも、俺達を見てとても驚いたのか、立ち止まってしまう。
女神様を殺す勢いだったのに。
そんな事より、俺達の方が驚くって。
なんで、マリアンヌさんが女神様を殺そうとしてるの?
俺達を見て立ち止まったという事は、どう考えてもマリアンヌさんの狙いは、女神様だったみたいだし。
「マリアンヌさん……何しに?」
俺は、マリアンヌさんが何をしたかったのか見れば分かるけど、一応、聞いてみる事にした。
「トト、どいて! その女神は生かしていたらいけない神なの!」
マリアンヌさんが言ってる意味が分からない。
女神様は、この世界の最高神で、その最高神を生かしてたらいけない?
そもそも、神って殺せるのか?
「トト!どいて!」
俺が、どうして良いのか悩んでると、サクラ姫が躊躇なく、マリアンヌさんに経絡秘孔突きをかます。
まあ、サクラ姫は、マリアンヌさんが嫌いのようだからそうなるよね。
俺的には、マリアンヌさんは俺に優しいから大好きなのだけど。
アマンダさんも、酒場でマリアンヌさんと意気投合してたから、攻撃するのを躊躇してるし。
そんな中も、女神様は優雅にお茶を飲むのを止めようとしないし。
「邪魔しないで、その女神は、この世界に死をもたらす元凶!
ずっと、その女神を殺す為にアニエスダンジョンの攻略をしてたの!
そして、天空庭園がアニエスダンジョンから落ちて来た事によって、やっと女神を殺すチャンスがやってきたの!」
マリアンヌさんは悲愴な表情をして、俺達に訴えてくる。
サクラ姫は、がんがんマリアンヌさんに攻撃してるし……
こうなってしまったら、俺の選択肢は無くなってしまう。俺はサクラ姫の護衛騎士なのだ。
俺は、マリアンヌさんの実力をよく知ってる。
マリアンヌさんが本気を出したら、サクラ姫など瞬殺できてしまうのである。
そう考えると、俺に出来る事は、ただ一つだけ。
「マリアンヌさん。ここは通せません!」
俺は、マリアンヌさんに対して、スルリと剣を突きつけた。
ーーー
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