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131. 絶対的強者
しおりを挟む「じゃあ、マリアンヌ姐さんに変わって、私が仕切るよ!」
お祭り好きのアマンダさんが、どうやら、審判をやるようである。
何故か、賭けに参加しないと思ってたら、審判をやりたかったようである。
アマンダさんも、結構目立ちたがり屋だしね。
というか、もしかしたら、アマンダさんも俺が負けると心の中で思ってたのかもしれない。
まあ、マリアンヌさんが覇気だけで、サクラ姫を牽制してたのを間近で見てたら、マリアンヌさんが只者じゃないと、普通分かるもんね。
婚約者である俺に賭けないのは体裁悪いので、審判をやる事によって賭けから逃げたとも言えるけど。
まあ、ベロベロに酔っ払ってるようだから、何も考えてないと思うけど。
「それじゃあ!レディーゴー!!」
アマンダさんの号令で腕相撲大会が始まった。
俺、結構、本気なのだけど、マリアンヌさんはビクともしない。
やっぱりというか、マリアンヌさんはやはり、只者じゃなかった。
『握手』スキルが全く通用しない者が現れるなんて、俺はこれっぽっちも思ってなかったのだ。
実は、『握手』スキルは、世界最強なんじゃないかと思ってた数秒前の俺を殴ってやりたい。
俺は、なんやかんや腕相撲をやれば、確実にマリアンヌさんに勝てると思ってたのである。
「うん。中々ね。このまま精進すればもっと強くなれるわよ」
マリアンヌさんは、どこまでも上から目線。
というか、俺の『握手』スキルの派生スキルが何も発動出来ない。
腕相撲が物凄く強くなる派生スキルが通用しないので、握手するとHPを奪う派生スキルを使ってるのに、全くHPが奪えてないのだ。
試しにスキルを奪うスキルを使っても、全然反応しないし。
多分、マリアンヌさんが俺より格上過ぎるのか、何かスキルをキャンセルできるようなレアなスキルを持ってるのかもしれない。
なんか、マリアンヌさんはいつでも勝てると思うけど、俺との腕相撲を楽しんでいるようにみえる。
だって、もう5分も腕相撲したままなんだよ。
とっとと勝ってくれればいいのに、マリアンヌさんは、俺の手を絶対に離さないのだ。
「このー!トトの手を離しなさい!」
こうなってくると、サクラ姫が黙っていない。
もう、既に腕相撲の結果など、サクラ姫にはどうでもよくなってるのだ。
それよりも、マリアンヌさんが俺の手を離さない方が許せないみたいだ。
「別に、アナタからトトを奪おうと思ってる訳ではないから安心しなさい」
マリアンヌさんは涼しい顔で答える。
「もう! あったまきた!」
サクラ姫は、愛刀のレイピアを魔法の袋から出して、マリアンヌさんに経絡秘孔突きをかます。
なのだが、マリアンヌさんは、どういう仕組みなのか、全てのサクラ姫の突きを避けてしまえるのだ。
俺と腕相撲してるのに……意味が分からな過ぎる。
サクラ姫のレイピア突きが凄くない訳ではない。
サクラ姫のスピードは、相当速いし、針の穴を通す程の正確な技術を持っているというのに、それを腕相撲の片手間で避けるって、もう人間を越えてるし。
もしかしたら、マリアンヌさんはナナミさん以上の化物?
まあ、ナナミさんみたいに悪気無く、バツーダ帝都を崩壊させたり、エルフ王国の全ての住居を破壊したり、アニエスダンジョンをポッキリ折ったりしないから、ナナミさんよりはマトモだけど。
だけれども、マリアンヌさんが、厄災級の問題児であるナナミさんより強いのは確か。
ナナミさんでも、スピードスターのサクラ姫の攻撃は避けれないからね。
だけれども、諦めないサクラ姫が、鬱陶しくなってきたのか、マリアンヌさんが本気を出す。
本気を出すと言っても、腕相撲じゃないよ。
本気の覇気を出したのだ。
近くに居たサクラ姫は、その場で失禁して失神。
プラチナ冒険者であるアマンダさんも、気を失い、安宿に居た全ての冒険者を、覇気だけで失神させてしまったのだ。
そして、俺?
俺も勿論、安宿に居た全員が失神させられたのを見てから、マリアンヌさんが更に本気になり、失神させられちゃったよ。
そんな事ある?
俺が目を醒ましたのは30分後。
ずっと、マリアンヌさんに膝枕してもらってたみたい。
「起きたわね」
マリアンヌさんは、微笑みながら答える。
「みんなは?」
「まだ寝てるわ」
寝てるというか、失神させたのはマリアンヌさんだと思うが、その事は黙っておこう。
だって、この人と戦っても絶対に勝てないし。
それにしても、俺は、本物の強者に初めて会ってしまった。
『銀のカスタネット』のメンバーは全員、プラチナ冒険者なのに、マリアンヌさんには全く歯が立たなかったのである。
まあ、俺達以外にも、この安宿には有名なプラチナ冒険者が何人か居たのに、マリアンヌさんの覇気だけで、みんな失神してしまってるし。
こんだけ凄いのに、まだ、マリアンヌさんが金級とか、本当に詐欺だろ……
とか、思って床に転がってる冒険者達を見てると、
「もうそろそろ、みんな起きそうだから、私はそろそろ行くわ。
トトの彼女さん達に、宜しく言っといて!
それから、トト、まだまだ精進を怠らないように!
今日は、上には上が居るという事が、よ~くわかったでしょ!
因みに、私は本業魔法使いだから、魔法を使ったら、もっと凄いんだからね!」
まさかの今更の魔法使い宣言。
多分、安宿に居た冒険者達は、誰もマリアンヌさんが魔法使いだと思ってないと思う。
だって、どう考えても、マリアンヌさんは戦士の格好してるし……
ナナミさんもそうだが、凄い実力者は、魔法使いなのに魔法を使わなのか……
まあ、魔法使いは近接戦闘が苦手と言われてるが、それを克服する為に、近接戦闘も鍛えてるのかもしれない。
でも、鍛えると言っても、それが、本業の近接戦闘を得意とする冒険者達を覇気だけでやっつける程度に鍛えてるって……本当に、化物だろ……
俺は、最後にマリアンヌさんに胸の谷間にキツく抱きしめられ、鼻血を吹き出し、何故か懐かしい匂いがするマリアンヌさんを見送ったのだった。
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