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124. 予言の子

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 俺達『銀のカスタネット』の面々は、アマンダさんの実家がやってるゼンーラ商会新本店に来ている。

 そこで、シスコンのアマンダさんの弟じゃなくて、その奥さんに接待を受けていた。

「この女が、アマソンのお嫁さん……」

 なんか、アマンダさんは、ずっとブツブツ言ってるし。
 どうやら、アマンダさんも相当なブラコンだったみたい。
 まあ、アマソンよりは酷くないけど、兎に角、ゼンーラ商会のお得意様専用の接待室で、お茶を飲みながら歓談してるのだ。

「本来なら、夫のアマソンが対応するべきなのですが……」

「いえいえ、最初から分かってた事ですから、心配なさらずに」

 サクラ姫……アマソンの事、調べが付いてたんなら、最初から来なければ良かったのに。
 アマンダさんも、アマソンが、このサマール自治商業都市に居る事知らなかったんだから、スルーするとか手もあった筈なのだ。

 まあ、サクラ姫の想像以上に、アマソンがシスコンだったという事だろう。
 まさか、マール王家御用達商会が、マール王家の者が訪れてるのに、全無視するとは流石に思わないよね。
 これを切っ掛けに、マール王家御用達を外されても文句言えないと思うし。

 王家御用達商会が、王家の御用を無視した訳だし。

 そして、それを挽回しようと、アマソンの奥さんが、現在、サクラ姫の接待を頑張ってるのだろう。

「サクラ姫様、何かご入用な物はございますでしょうか?」

 アマソンの奥さんが、必死な表情で聞いてくる。

「ご入用な物?」

 サクラ姫が考えてる。
 だけど、俺も考えてみたが入用な物なんて、本当に無いんだよね。

 ナナミさんが製作した馬車が、本当に快適で、痒い所にも手が届く完成度なのである。
 しかも、どこでも扉があるから、いつでもマールダンジョンにあるパーティーハウスに戻れちゃうし、入用な物など本当に無いのだ。

「う~ん……正直無いですね……」

「そ……そんな……」

 サクラ姫の言葉に、アマソンの奥さんが真っ青な顔になってる。
 きっと、マール王家御用達商会なのに、支店長のアマソンが、サクラ姫をガン無視してしまった事を、サクラ姫が怒ってると勘違いしてしまったのだろう。

 本当に、欲しい物が何も無かっただけなのに。

「そ……そう言わず、旅にご入用な物とか、美味しい保存食とか、たくさん取り揃えておりますから!」

 アマソンの奥さんは、必死だ。
 だけれども、旅にご入用な物は、全てナナミさんが超絶便利な道具や魔道具を作っちゃってるからね。
 普通に考えて、超絶天才のナナミさんが作る道具を越える物を作れる人物なんか、俺が知ってる限り、権蔵爺さんぐらいしか思いつかないのだ。

 それから、美味しい保存食?

 それも、ナナミさんが既にたくさん作ってるし。自分の研究の夜食用に。
 ナナミさんのレトルト食品のレパートリーは、本当に多いのだ。
 継母に、自分の好物の料理を作らせて、全てレトルト食品にしてるし。

 そもそも、俺達、本来、保存食も要らないんだよね。
 野営の時は、継母が、俺達の元にやって来て朝食も昼食も夕食も作ってくれるから。
 そもそも、『家事』スキルを持つ継母の料理を越える者など居ないでしょ。

 もっと言うと、本来、ゼンーラ商会をマール王家御用達商会にする必要も無かったんだから。
 アマンダさんの実家の商会なので、サクラ姫が手を回してマール王家御用達商会にしただけなんだよね。

「それでは、サマール自治商業都市にしか無い物はありませんでしょうか?」

 サクラ姫も、流石に、真っ青な顔をしてるアマソンの奥さんに悪いと思ったのか、助け舟を出した。
 別に、本当に欲しい物が無いだけで、アマソンの奥さんを困らしたい分けでは無いのである。

「それなら、サマール自治商業都市の絨毯が有名です!
 ゼンーラ商会でも、たくさん取り揃えていますから、是非、見ていって下さいませ!」

 なんか知らんが、アマソンの奥さんが胸を撫で下ろしている。
 そりゃあ、そうか、王族を怒らせたと思い込んでたみたいだから。
 サクラ姫が、アマンダさんの身内を怒る訳ないのに。
 まあ、アマソンだけには、少し怒ってるかもしれないけど。

 そんなこんなで、お手頃な物から、物凄く高価な物まで取り揃えられたサマール絨毯を物色して、結局、一番高価な絨毯と、それからサクラ姫が一番柄が気に入ったらしい、お値段もそれなりに高い絨毯を2枚買って、ゼンーラ商会を出ようと思った時、事件が起きたのである。

 そう、お買い物中も、ずっと1人でブツブツ言っていた、アマンダさんが突然、

「アマソンとの結婚は、絶対に認めないからな!」

 豊満な胸をプルン!とさせて、アマソンの奥さんに言い放ったのである。

 ていうか、今言う?

 やっと、アマソンの奥さんも、マール王家の姫様を無事、接待して肩の荷がおりた所なのに。
 アマソンの奥さん、顔が引き攣ってるよ。

「まあまあ、アマンダさん」

 俺も、必死にアマンダさんを落ち着かせそうとするのだが、アマンダさんは、鼻息荒く、絶対にアマソンとの結婚は認めないの一点張り。
 本当に、この姉弟は面倒臭い。

 もう、ここまで来ると、ずっと我慢して、夫アマソンの尻拭いしてた、アマソンの奥さんの顔がピクピクしてるし。

 これ、どうなっちゃうの。
 アマソンの奥さんの堪忍袋の緒も切れちゃうよ。

 そんで、こんな時にこそ力を発揮しちゃうのが、マール王家で一番、人を纏める求心力があるであろうサクラ姫。

「わかります」

 なんかからないが、アマンダさんの言い分も、アマソンの奥さんの気持ちも全部引っ括めて分かると言い放った。

 その言葉には、何か心を引き付ける魅力的何かを感じる気がするが、まさかスキルか何か?

 だけれども、サクラ姫はまだ9歳で、女神様からスキルなど授かってないのである。

「サクラちゃん、分かってくれるの!」

「ああ……サクラ姫様、私の気持ちを分かって下さるなんて……」

 直接、言葉を浴びせられたアマンダさんと、アマソンの奥さんは、猛烈に感動してしまってるし。

 何が起こった?

 ただ、サクラ姫に、『わかります』と、言われただけなのに。
 アマンダさんと、アマソンの奥さんの感動の仕方は、ちょっと、常軌を逸しているのだ。

 これ、絶対に何かのスキルが発動してるよね。

 スキルって、幼少期の強い思いに影響されて発現するらしいから、最近、サクラ姫は、世界征服したいとか口走ってたから、その影響?

 言葉で、人を屈服させる力か何か?

 多分、『魅了』のスキルか何かを手に入れてるのかもしれない。

 まだ、13歳になってないのに、強く世界征服したいと思ってるので、勝手に発現してしまったのだろう。
 本当に、末恐ろしい9歳児である。

 まあ、いつも捨て身の覚悟で戦闘してるので、サクラ姫の思いは、全てが死と隣り合わせの命懸けの思いなのかもしれない。

 多分、世界征服の為には、今は死ねないと思いながら、魔物と戦ってるのだろう。

 スキルは、俺の場合と同様、苦労すれば苦労する程、強く強力なスキルが発動する。
 まあ、少しは遺伝もあるのだろうけど。

 そして、サクラ姫の場合は、その苦労が全てが命懸けなのだ。
 だって、毎回、格上の敵と戦って、返り血で血だらけになり、ギリギリの戦いをしてるのだから。

 兎に角、もう、サクラ姫が『魅了』系のスキルを13歳にゲットするのは確か。
 だって、もう発現しちゃってるのだからね。

 サクラ姫が、世界を統べる未来は、そう遠くない未来かもしれない。
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