上 下
121 / 175

121. ナナミ台風

しおりを挟む
 
「ふぅ~快感」

 ナナミさんは、エルフ王国を解体しきりとても満足そうな顔をしてる。

 逆に住居という住居を破壊されてしまったエルフ達は、焦燥感が漂ってる。

「それでは、私共はアニエス神聖国に急ぎますので、これで!」

 サクラ姫は、エルフ王にニッコリ挨拶する。
 多分、この、敵に塩を送るような挨拶は、自分達は何も悪い事なだしてないというアピールなのだろう。

「貴様ら! このまま去れると思っているのか?!」

 そりゃあ、エルフ王もカンカンだよね。
 どうやら、王様の住居って、世界樹に建てられてたみたいだし。
 しかしながら、器用なナナミさんは、住居は粉々に破壊したけど、世界樹は一切傷つけて居ないのである。

「あら?私供は危ない住居だけ破壊して差し上げただけなのですが?」

「危ない住居?貴様らは、本当に何を言ってるのだ?!」

「うん。エルフのツリーハウスは全て欠陥住宅。建築基準法に照らし合わせても、違反のオンパレード!」

 ナナミさんが、また、訳の分からない事を言い出した。

「建築基準法だと?」

「ウン。僕はツリーハウスの第一人者。実際、樹木に覆われてるマールダンジョン31階層の管理も、冒険者ギルドに任されてる程の専門家!」

 ナナミさんは、胸を張りエッヘンとしてる。

「私共も森の民を自負していて、樹木の専門家なのだが?」

「プププププ……エルフが、樹木の専門家……」

 なんか、ナナミさんがエルフを小馬鹿にして笑っている。

「貴様ー! 何がおかしい!」

 そりゃあ、怒るよね。エルフは森の民だと対外的にも言われてるし、ナナミさんに住居を壊されちゃってるんだから。

「樹木の専門家だと自負してるのが、ちゃんちゃらおかしい!
 森の樹木は、木が増え過ぎて光合成できなくなって枯れてしまってる木々がたくさんあった!
 本物の樹木の専門家から言わせると、木を間引きして、間伐しなくてはならない!」

「木を間引きだと?本当に言ってるのか?」

「木を間引きするのは、世間の常識!知らないのは、頭が凝り固まったエルフ族だけ!」

「ドワーフ風情が、エルフを愚弄するか!」


 エルフ王が、プルプル打ち震えながら爆発するが、ナナミさんは我関せずで話を続ける。

「実際、この森の樹木はヒョロい木ばかりだし、背が低い木は光合成出来なくて根腐れしてる」

「……」

 エルフ王は、何か感じる事があったのか、言葉が止まる。

「この森の管理も、僕がしてもいい」

 何を思ったのか、ナナミさんがこれまた意味不明な事を言い出した。

「貴様は、何を言っている?」

「だから、この森をかつての素晴らしかった森にすると言っている。
 今のジメジメした薄暗い森じゃなくて、健康的な木が沢山生えた美しい森にして上げると言っている!」

 なんか、ナナミさんの目がキラキラ輝きヤル気に満ちている。
 というか、この顔のナナミさんは、絶対に何かを企んでいる。
 多分、この森の木が、ナナミさん的に魅力的な木なのだろう。

 ナナミさんが積極的に動く時って、素材集めとかだけだし。
 過去には、素材を独り占めしたくて、ダンジョンをソロで完全攻略してしまった過去もあるぐらいだし、もしかしたら、世界樹も狙っているのかもしれない。
 完全に素材としてね。

「その申し出に、我らが縦に首を振ると?我らの住居を壊しておきながら?」

「その点は大丈夫! この僕がエルフの住居くらい簡単に作ってあげる!」

 なんか、話があらぬ方向に向かって行ってる。
 俺達『銀のカスタネット』は、女神様に会いに、アニエス神聖国に向かってた筈なのだけど……

「お前に、家など作れるのか?」

「ふん!僕を誰だと思ってる!元武蔵野国四賢人が1人、坂田権蔵の孫とは、この僕の事だ!」

 その言い方だと、ただの偉人の孫ってだけだと思うけど、ナナミさんの場合は、権蔵爺さんを無駄に尊敬してるから、この言い方になってしまうのだろう。

「私も、ナナミさんの腕を保証しますわ!私共が乗ってるマール王家専用の馬車もナナミさんが製作していますし、キャロット城塞都市を新たに改修したのもナナミさんです!
 マールダンジョンの31階層の樹木ステージも、冒険者ギルドに管理を任されてるのも、勿論、ナナミさんですから、ナナミさんは、マール王国と冒険者ギルドに認められてる、建築と森の管理のエキスパートで間違いないですわ!」

 ここで、ネゴシエーションのエキスパートのサクラ姫の後押しが加わる。

「このドワーフの少女は、マール王国と冒険者ギルドが認める存在なのか?」

「ウン! 僕は、元武蔵野国四賢人が一人、坂田権蔵の孫だから当然!!」

 ナナミさんは、どうしても権蔵爺さんの名前を前に出したいようだ。
 もしかしたら、権蔵爺さんの堕ちた名声を取り戻そうとしてるのかもしれない。

「そこまで言うなら、やって貰おうか。勿論、タダ働きでな!」

 うん。そりゃあ、そうなるよね。
 ナナミさんが、エルフの住居を破壊した張本人だしね。

「ウン! お代入らないよ! その代わり、間伐した木は貰っちゃうけどね!クックックッ」

 ナナミさんは、欲望を抑えきれなかったのか、顔がニヤケが止まらないのだった。
 完全に世界樹の木を狙ってるの、アリアリだもんね……

 ーーー

 面白かったら、お気に入りないれてね!
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※毎週、月、水、金曜日更新 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。 ※追放要素、ざまあ要素は第二章からです。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...