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121. ナナミ台風
しおりを挟む「ふぅ~快感」
ナナミさんは、エルフ王国を解体しきりとても満足そうな顔をしてる。
逆に住居という住居を破壊されてしまったエルフ達は、焦燥感が漂ってる。
「それでは、私共はアニエス神聖国に急ぎますので、これで!」
サクラ姫は、エルフ王にニッコリ挨拶する。
多分、この、敵に塩を送るような挨拶は、自分達は何も悪い事なだしてないというアピールなのだろう。
「貴様ら! このまま去れると思っているのか?!」
そりゃあ、エルフ王もカンカンだよね。
どうやら、王様の住居って、世界樹に建てられてたみたいだし。
しかしながら、器用なナナミさんは、住居は粉々に破壊したけど、世界樹は一切傷つけて居ないのである。
「あら?私供は危ない住居だけ破壊して差し上げただけなのですが?」
「危ない住居?貴様らは、本当に何を言ってるのだ?!」
「うん。エルフのツリーハウスは全て欠陥住宅。建築基準法に照らし合わせても、違反のオンパレード!」
ナナミさんが、また、訳の分からない事を言い出した。
「建築基準法だと?」
「ウン。僕はツリーハウスの第一人者。実際、樹木に覆われてるマールダンジョン31階層の管理も、冒険者ギルドに任されてる程の専門家!」
ナナミさんは、胸を張りエッヘンとしてる。
「私共も森の民を自負していて、樹木の専門家なのだが?」
「プププププ……エルフが、樹木の専門家……」
なんか、ナナミさんがエルフを小馬鹿にして笑っている。
「貴様ー! 何がおかしい!」
そりゃあ、怒るよね。エルフは森の民だと対外的にも言われてるし、ナナミさんに住居を壊されちゃってるんだから。
「樹木の専門家だと自負してるのが、ちゃんちゃらおかしい!
森の樹木は、木が増え過ぎて光合成できなくなって枯れてしまってる木々がたくさんあった!
本物の樹木の専門家から言わせると、木を間引きして、間伐しなくてはならない!」
「木を間引きだと?本当に言ってるのか?」
「木を間引きするのは、世間の常識!知らないのは、頭が凝り固まったエルフ族だけ!」
「ドワーフ風情が、エルフを愚弄するか!」
エルフ王が、プルプル打ち震えながら爆発するが、ナナミさんは我関せずで話を続ける。
「実際、この森の樹木はヒョロい木ばかりだし、背が低い木は光合成出来なくて根腐れしてる」
「……」
エルフ王は、何か感じる事があったのか、言葉が止まる。
「この森の管理も、僕がしてもいい」
何を思ったのか、ナナミさんがこれまた意味不明な事を言い出した。
「貴様は、何を言っている?」
「だから、この森をかつての素晴らしかった森にすると言っている。
今のジメジメした薄暗い森じゃなくて、健康的な木が沢山生えた美しい森にして上げると言っている!」
なんか、ナナミさんの目がキラキラ輝きヤル気に満ちている。
というか、この顔のナナミさんは、絶対に何かを企んでいる。
多分、この森の木が、ナナミさん的に魅力的な木なのだろう。
ナナミさんが積極的に動く時って、素材集めとかだけだし。
過去には、素材を独り占めしたくて、ダンジョンをソロで完全攻略してしまった過去もあるぐらいだし、もしかしたら、世界樹も狙っているのかもしれない。
完全に素材としてね。
「その申し出に、我らが縦に首を振ると?我らの住居を壊しておきながら?」
「その点は大丈夫! この僕がエルフの住居くらい簡単に作ってあげる!」
なんか、話があらぬ方向に向かって行ってる。
俺達『銀のカスタネット』は、女神様に会いに、アニエス神聖国に向かってた筈なのだけど……
「お前に、家など作れるのか?」
「ふん!僕を誰だと思ってる!元武蔵野国四賢人が1人、坂田権蔵の孫とは、この僕の事だ!」
その言い方だと、ただの偉人の孫ってだけだと思うけど、ナナミさんの場合は、権蔵爺さんを無駄に尊敬してるから、この言い方になってしまうのだろう。
「私も、ナナミさんの腕を保証しますわ!私共が乗ってるマール王家専用の馬車もナナミさんが製作していますし、キャロット城塞都市を新たに改修したのもナナミさんです!
マールダンジョンの31階層の樹木ステージも、冒険者ギルドに管理を任されてるのも、勿論、ナナミさんですから、ナナミさんは、マール王国と冒険者ギルドに認められてる、建築と森の管理のエキスパートで間違いないですわ!」
ここで、ネゴシエーションのエキスパートのサクラ姫の後押しが加わる。
「このドワーフの少女は、マール王国と冒険者ギルドが認める存在なのか?」
「ウン! 僕は、元武蔵野国四賢人が一人、坂田権蔵の孫だから当然!!」
ナナミさんは、どうしても権蔵爺さんの名前を前に出したいようだ。
もしかしたら、権蔵爺さんの堕ちた名声を取り戻そうとしてるのかもしれない。
「そこまで言うなら、やって貰おうか。勿論、タダ働きでな!」
うん。そりゃあ、そうなるよね。
ナナミさんが、エルフの住居を破壊した張本人だしね。
「ウン! お代入らないよ! その代わり、間伐した木は貰っちゃうけどね!クックックッ」
ナナミさんは、欲望を抑えきれなかったのか、顔がニヤケが止まらないのだった。
完全に世界樹の木を狙ってるの、アリアリだもんね……
ーーー
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