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108. イチゴ・ストロベリーの邂逅

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 栄えあるバツーダ帝国、ストロベリー伯爵家の次男である自分がヘルナンド王子の護衛兼、マール王国学園の留学メンバーに選ばれた時、誇らしい気持ちと同時に、口惜しい気持ちに苛まれた。

 ヘルナンド王子はバツーダ帝国の臣下である自分の口から言うのは苛まれるが、ハッキリ言ってしまうと、ヘルナンド王子の2人いる兄より帝王になる資質がある。

 実際、世界一の魔術師と言われている、バツーダ帝国宮廷魔術師ヨセフ・アッカマンも、ヘルナンド王子に期待しており、自ら家庭教師をして英才教育を施している程なのだ。

 それなのに……

 ヘルナンド王子は、三男という理由だけで、バツーダ帝王により、マール王国行きを命じられたのだ。

 イチゴ・ストロベリーは、ヘルナンド王子以上に憤る。
 まあ、ヘルナンド王子が選ばれたのには、もう1つ理由があったのだが、それは丁度ヘルナンド王子が来年13歳で、マール王立学園に一年生から入学できる事も、理由の一つだったりする。

 そして、ヘルナンド王子がマール王立学園に入学が決まると、すぐさま、マール王国は才女である第2王女のサクラ・フォン・マールを飛び級でマール王立学園に入学させると発表した。

 この意図は全く分からないのだが、これを喜んだのがバツーダ帝国宮廷魔術師であり、ヘルナンド王子の家庭教師をしているヨセフ・アッカマン。

 アッカマンは、マール王国第2王女のサクラ・フォン・マールを、バツーダ帝国を脅かす予言の子と危険視しているのだ。

 実際、呪い殺そうと手を打ってたようなのだが、どのような理由か分からないが失敗。

 そして、暗殺失敗と呼応するように、サクラ・フォン・マールは難攻不落と言われていた塔のダンジョンを完全攻略したりと、どんどん力を付けて行ってたのである。

 そんな危険過ぎるサクラ・フォン・マールを暗殺するチャンスが訪れたと、アッカマン自らが、敵国であるマール王立学園の教師として赴任する事を決めたのだ。

 それにより、このヘルナンド王子の海外留学は、たんなるマール王国への人質として赴くのではなく、マール王国第2王女サクラ・フォン・マールの暗殺の為の一手となってしまったのである。

 これは、ハッキリ言うと死地に飛び込む事と同様の事。
 アッカマンが、サクラ姫暗殺に成功したとしたら、自分達が生きてマール王国から出られるとは到底思えない。

 アッカマンが、サクラ姫の暗殺に成功したと同時に、マール王国に捕えられ首をはねられるのが目に見えているのだ。

 ヘルナンド王子が不憫でならない。
 どう考えても、バツーダ帝国で王位継承権を持ってる者の中で、一番優秀でバツーダ帝国の皇帝になるに相応しい才覚を持っているというのに……

 そんな訳で、自分も死を覚悟してマール王立学園に、ヘルナンド王子の付き人として入学した訳なのだが、実際、相対したサクラ・フォン・マールは、想像以上の文武両道の才女だったのである。

 サクラ・フォン・マールは今年9歳になり、自分達とは4歳も年下だというのに、年上の生徒達に囲まれていても、萎縮する事なく堂々と接していたのだ。

 その表情には自信が溢れ、サクラ・フォン・マールこそが王の中の王。世界を統べる女王になるのに相応しい魅力を、全身から醸し出していたのである。

 我が国の宮廷魔術師であり、世界一の魔法使いと言われているヨセフ・アッカマンが一番危険視してるまだ8歳の幼女が、これ程の実力を持ってるとは思ってもみなかった。

 そして、入学式が終わり、初のクラスメイトが顔合わせした教室で、恐れていた事件が起きてしまったのだ。

 それも、自分の失態のせいで……
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