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104. 入寮

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 4月。マール王立学園の入学式の季節。
 俺とサクラ姫とアマンダさんは、3人揃って王都にあるマール王立学園の入学準備に向かった。

 マール王立学園って、全寮制なんだよね。
 なので、入寮する為の準備。
 俺とサクラ姫とアマンダさんは、それぞれ守衛で受付を済ませると、貴族専用の男子寮と女子寮に向かう。

 まあ、初めて来た場所ではないから気楽。
 学園長は、サクラ姫の叔母さんだしね。

 でもって、男子貴族寮に到着する。
 男子貴族寮は、まんま貴族の邸宅のような建物。玄関を入ると赤絨毯がひかれたエントランス。吹き抜けになっていて、豪華なシャンデリアが飾ってある。

 そこに、俺の二番目の兄ちゃんであるニコル兄が立っていた。

「なんで、ニコル兄が居るの?」

 俺は、思わずニコル兄に尋ねる。
 俺が、今日入寮するとか、一言もニコル兄に言ってなかったのだ。

「トトこそ、なんでここに居るんだ?」

 ニコル兄の方が、俺がここに居る事を不思議に思っているようだ。
 まあ、よく考えたら、普通の貴族は13歳にマール王国学園に入学するのだ。
 だけど、俺は、まだ13歳だけど、今年14歳になるので、本来ならマール王国学園に去年入学してるのが普通。

 だけれども俺は、冒険者になりたかったからブッチした。
 別に、学園に入学しなくても死にはしない。
 元々、三男だから学園に入る予定もなかったしね。

 ニコル兄も、今更、何故?と思ってるようである。
 俺なら、入ろうと思えば、いつでも特待生で入れた筈だったのに、敢えて入ってなかった訳だからね。

「王様命令。今年、バツーダ帝国から第3王子が入学するだろ。その護衛と、問題起こさないように見張る為だってさ!」

 何も知らされてないニコル兄に、端折って説明する。

「成程……それは大変だな……」

 ニコル兄も、心配そうな顔をしてる。
 まあ、高位貴族の子息でも、バツーダ帝国の王子の相手は荷が重い。
 その点、俺は、この国の王様や王女様と仲が良いし、今更、王族なんかにビビらないからね。

 例え、バツーダ帝国の王子であっても、悪い事したら怒るし、国際問題に発展しても知った事でもないし、俺には、バツーダ帝都を壊滅寸前にまで追いやったナナミさんが付いてるし。

 国際問題になって、バツーダ帝国とまた戦争する羽目になったら、今度は、帝都の城までナナミさんに穴を開けて貰うんだから。そんな風に思ってれば気が楽。

「それより、なんでニコル兄がここに居るの?」

 俺は、気になってた事を聞いてみる。

「ああ。それなら俺が生徒会に所属してるからだ。生徒会のメンバーが、新入生の寮の案内をしてるんだよ」

「へぇ~そうなんだ」

「だから、俺が案内してやるよ」

 俺は、ニコル兄に連れられて、寮を案内してもらう。

 中央玄関から入って真ん中がエントランスで、左に行くと誰でも使える共用スペースがある。
 そこには、ちょっとした図書館やリビングルームや食堂が完備していて、騎士爵や準男爵の人達が食事をとったりするらしい。

 そして、中央エントランス右側は、騎士爵と準男爵の相部屋。
 基本、爵位が低い者達ほど下の階に住むという話だ。

 男爵位から2階になって一人部屋。
 爵位が上がるほど、部屋が大きくなる仕組みなのだとか。
 それから、男爵位から使用人を連れて来て良いらしい。
 使用人部屋は2階にあり、相部屋らしい。

 でもって、伯爵位から、使用人部屋も貴族の部屋に併設するようになる。便利だよね!
 しかも、伯爵位から併設する使用人部屋を使わせるなら、何人使用人を呼んでも良いらしいし。

 そんな感じで、四階まであって地位が高い人ほど、上の階に住む仕組みになってるみたい。因みに、王族や大公や公爵や辺境伯の部屋はシャワー付きとか、羨ましいよね。

 お風呂に入りたかったら、俺たちは、全ての学園生が入れる大浴場に入るしかない。

 でもって、俺?
 俺の部屋は三階。まあ、俺の場合貴族子息じゃなくて、本当の伯爵様だからね。
 侯爵より、地位が高い部屋を使わせて貰えるみたい。
 なので、俺の部屋、無駄にでかい。
 誰も連れて来てないけど、4人は暮らせそうな使用人部屋まであるし。
 何故かベットルームも2つ有るし……
 学生寮なのに、何故、ベットルームが2つ有るのか謎だし……

 というか、やはり俺も使用人を連れて来た方が良かった?
 結構、上の階に上がると使用人が歩いてるんだよね。
 話によると、上級貴族は部屋で食事を取るみたいだし、食事の準備やお茶の準備は、全て使用人がするみたいだし。

 やはり、現役の伯爵様である俺自身が下級貴族と混じって1階の食堂で食事を取るのは、何かと問題がありそうである。

 だけれども、俺って誰も使用人雇ってないし、所詮、成り上がり貴族なのだ。

 本当に困った。
 一度、継母に相談した方が良いかもしれない。
 家というか、パーティーハウスの家事全般を仕切ってるのは継母だし、使用人を雇うとしても継母に相談すべきだと思うし。

 というか、サクラ姫は良いとして、アマンダさんも現役男爵だから、使用人居るよね。

 兎に角、その辺の所も至急、継母と相談しないといけない。

 ーーー

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