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87. ラスボス戦より、素材なの?

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 ドゴ~ン!

 巨大な地龍は、吹っ飛びはしなかったが、強烈な音が響き渡る。
 地龍は、痛みで顔を歪めている。

「うん。やっぱり硬い。これは良い素材になる」

 なんか、ナナミさんは地龍の事を素材としか見ていない。
 顔が、物凄くニヤケてるし。
 前人未到の塔のダンジョンのラスボス戦だというのに、締りがない。

 というか、地龍の口が膨らんでるように見える。

「ファイアーブレス来るよ!」

 アマンダさんが、皆に注意する。
 しかし、ナナミさんは地龍の正面に立ったまま、なんか、片足を上げて変なポーズを取っている。

 そんな訳の分からないポーズを取ってるもんだから、地龍のファイアーブレスにナナミさんは直撃してしまう。

 だけれども、ナナミさんは無傷。
 きっと、何かミスリルシルクスパイダーの装備を身に付けているのだろう。

 そして、地龍の炎を纏いながら、

「一球入魂!」

 玉など無いのに、何かに魂を入れて、一本足を上げたまま十一文字金剛権蔵棍棒をフルスイングする。

 バチコ~ン!

 今回は、地龍が浮き上がった。
 何故か、一本足になった事により、ナナミさんのパワーが上がったようである。

 再び、顔を歪めながら地龍がファイアーブレスを放つ。
 だけれども、ナナミさんにファイアーブレスなど効かない。
 逆に、地龍のファイアーブレスがナナミさんのエフェクトに見える始末。

「燃える闘魂!」

 また、意味不明な事を叫びながら、一本足フルスイング。

 ボッコ~ン!

 今度は、結構、浮いた。

 地龍は、もう涙目。

「うん……やっぱり棍棒じゃ駄目だ……」

 なんか知らんが、ナナミさんが、俺の事をジト目で見てくる。
 俺的には、ナナミさんの一本足打法結構効いてたと思うのだけど、ナナミさん的には納得いってなかったようだ。

 ていうか、俺に戦えって事?
 多分、俺の十一文字権蔵なら、地龍斬れるんじゃないかと思ってるのか?

 なんか、ナナミさんのジト目が痛い。
 分かったよ。ヤレばいいんだろ。

 なんか、このまま攻撃加えていけば、サクラ姫の毒も効いてるようだし、俺が居なくても倒せると思うけど、きっとナナミさんは、俺の十一文字権蔵の斬れ味を確かめたいのであろう。

「じゃあ、やってやるよ!」

 俺の言葉に、ナナミさんは目を輝かせる。

 俺は十一文字権蔵を鞘から抜き、ジャンプ一番飛び上がる。
 地龍は、もう既に、ナナミさんの攻撃でぐったりしてるので反撃も来ない。

 俺は地龍の真上まで飛び上がり、そして、頭から真っ二つに地龍を斬り裂いてやった。

 ズザザザザザーーン!!

「凄い! 我が主! 惚れ直した!」

 なんか、ナナミさんが興奮してる。
 まあ、俺が持つ『握手』スキルの派生スキル、剣を持てば剣豪になれるスキルと、権蔵爺さんが打った十一文字権蔵、それから俺自身のレベルも上がってるから、この結果は、俺的には解りきってたのだけど。

「トト凄いー!!」

「私も、興奮して濡れてきちゃったよ!」

 サクラ姫とアマンダさんも興奮してるようだ。
 まあ、アマンダさんの何が濡れたのかは分かんないけど。

「やっぱり、お爺が打った刀は凄い。まだまだ僕も精進が足りない」

 なんか知らんが、ナナミさんが、権蔵爺さんが打った十一文字権蔵を、羨望の眼差しで見ている。

 多分、十一文字権蔵だけの実力じゃ地龍は斬れないと思うけど、俺が持ってる剣を持てば剣豪になれる派生スキルも合わさって斬ってる訳で、それを見抜いて、俺に十一文字権蔵を託した権蔵爺さんが、ヤッパリ凄いのか……

「多分、ナナミさんが打った大剣ナナミ13号も凄いと思うぞ」

「僕はまだまだ、実際、大剣ナナミ13号じゃ地龍に傷一つ付けられなかった」

 まあ、俺が持てば大剣ナナミ13号でも地龍を斬れると思うが、それは言わないでおこう。
 間接的に、アマンダさんの腕が無いと言うような事だし。
 まあ、アマンダさんも常人の人から見れば達人の域に達してると思うんだけど、俺が持ってる、剣を持てば剣豪になれるスキルと比べてしまえばね……

 そして、ウキウキ顔で、当たり前のようにナナミさんが、地龍の素材を全て自分の魔法の収納袋の中に入れた。

 うん。解ってる。ナナミさんが地龍の素材が欲しかった事。
 まあ、結局は、俺達の装備に使われると思うので何も言わないけど。

 サクラ姫とアマンダさんも何も言わないし、素材は全て、ナナミさんの総取りになるのは、最早、『銀のカスタネット』では当たり前の事なのだ。

 きっと、地龍の素材は、何倍にも丈夫で高価な武具や防具になって、俺達の元に戻ってくるだろう。

 俺は、それだけを信じて、塔のダンジョンの管轄であるトランペット冒険者ギルドに、久々に向かうのだった。

 ちゃんと、塔のダンジョンを攻略した事を伝えないといけないからね。

 ーーー

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