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82. サンドイッチ伯爵

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 69階層は迷路ステージ。
 ここでは、ナナミさんが再び活躍する。

 その魔法使いの杖にしか見えない十一文字金剛権蔵棍棒を振り回し、迷路を破壊して進んじゃうのだ。
 本当に、このダンジョンを設計した人が可哀想。

 本来なら破壊出来ない筈のダンジョンの壁を粉々に破壊して行くのだ。

 多分、この迷路、帰らずの迷路だと思われる。
 時間が経過すると、迷路の形が変化してるのだ。

 だって、ナナミさんは一直線上に迷路を破壊して行ってるのに、後ろを見ると、途中で穴が無くなって壁になってるし。
 しかも、トラップまでわんさかある。

 だけれども、ナナミさんは、ことごとくトラップを発見して、しかもトラップを検証してるし。

 なんか、トラップの仕組みを完璧に知りたいらしい。

「これは、初めて見るトラップ」

 特に、初めて見るトラップには、興味津々で、魔物が襲って来るのもお構い無しで検証に突入してしまうのだ。

 その間、俺とサクラ姫とアマンダさんとで、敵を抑えないといけないので大変。
 59階層の魔物は、57階層や58階層のような炎特化や氷特化の魔物と違って、普通に強いのである。

「なるほど、こういう仕組みか……」

 ナナミさんは、そんな俺達の頑張りも、お構い無しでトラップを分解してるし。
 その分解の仕方も豪快。
 だって、殆どのトラップって床や壁に埋まってるのに、その全てを丁寧に掘り出して検証してるんだもん。そりゃあ、時間も掛かるよ。

 多分、だけどもだけど。ナナミさんが、どこでも扉や、魔法の収納袋を作れるようになったのも、多分、ダンジョンのトラップを研究して作れるようになったと思う。

 この59階層でも、転移トラップの罠がわんさか有るんだけど、その転移トラップは完全スルー。

「何で?」

 て、俺が聞いたら、もう既に研究し尽くしたと言ってたもん。

 やはり、ナナミさんは、ダンジョンの転移トラップを研究して、どこでも扉を作ってしまったと思われる。

 本当に、ナナミさんというか、ドワーフの研究熱心さには、頭が下がる思いだ。
 だって、魔物に襲われてるというのにヘッチャラで集中出来ちゃうって、余っ程だよ。

 てな訳で、59階層は、ナナミさんが壁をぶっ壊して最短距離を突き進み、最短時間で攻略出来ると思ってたのだけど、ナナミさんが新しいトラップを見つける度に、止まっちゃうから、本当に進まないのだ。

 チラッと見て終わりにすればいいのに、完璧に自分が仕組みを理解するまで、決して検証は終わらなのである。
 そりゃあ、どこでも扉も、魔法の収納袋も作っちゃうよ。
 ナナミさんは、既に、転移トラップの仕組みを完璧に理解してる訳だし。

 そんな感じで、俺達は、69階層で初の野営をする事になってしまったのだった。

 だって、ナナミさん、初見のトラップの前からテコとも動かないんだもん。
 俺達も、実際、野営というより、魔物退治してるだけで、兎に角、今、ナナミさんが検証してるトラップの仕組みを、ナナミさんが完璧に理解するまで帰れないのである。

 俺達は、魔物の襲撃も有るので全く眠れないし、食事を作る余裕もない。
 なので、どこでも扉を使い、パーティーハウスと繋げて、継母に夕飯のデリバリーをお願いしたのである。

 そして、流石は料理上手の継母。
 俺達が戦いながら食べれるようにと、サンドイッチなる、この世界で見た事がない料理をデリバリーしてくれたのであった。

 なんでも、このサンドイッチなる食べ物は、ある異世界でトランプ大好きな貴族が、トランプしながら片手で食べれるようにと考案した食べ物らしく、トマトやキュウリや卵焼きといった食材を食パンに挟んで、手頃な大きさにカットされた食べ物であるらしい。
 そして、サンドイッチという名前も、その貴族がサンドイッチ伯爵という人で、その名前が付けられたのだとか。

 このサンドイッチも、継母の『家事』スキルの派生スキル、『異世界レシピ』に記されていた料理らしい。

 そんな異世界の食べ物、サンドイッチを食べながら、俺達は、ナナミさんの検証が終わるまで、結局、朝の5時まで魔物と戦い抜いたのであった。

 その後、どうしたのかって?

 そりゃあ、パーティーハウスに戻って寝たよ。
 疲れたままじゃ、ダンジョン攻略なんて出来ないしね。

 ナナミさんは、目を真っ赤にさせてご満悦。

 本当に、我が道を行く人である。

 ーーー

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