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62. 50階層

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 壮厳な塔のダンジョンを潜ると、いきなり大理石ぽい磨かれた白い石で出来たエントランスのような広い空間が現れる。

 そこには、床に転移陣が何個か描かれていて、そこでどうやら違う階層にショートカットする仕組みらしい。

 俺達は、迷わず50階層に転移する転移陣を使って、50階層に転移した。

 50階層は、草原の階層らしく、空もある。

 転移陣は、どうやら下に続く階段の隣に設置されており、突然、魔物と遭遇しても大丈夫のように簡易結界が張られているようである。

「ちょっと、この階層はやりにくいな」

 そう、この草原の階層は、丁度、サクラ姫の首辺りまで隠れるぐらいの草が一面に生えてる階層なのだ。

 魔物も草で隠れやすく、探知系のスキルか何か持ってないと、いつ魔物が襲ってくるのか分からない。

 まあ、剣を持てば剣豪になれる派生スキルを持ってる俺は、剣豪なみの実力になってるので、魔物の気配ぐらいは簡単に察知出来るのだけどね。
 アマンダさんは、どうやら敵の気配を察知できるみたい。
 殆ど、金級の実力を持ってるアマンダさんなら、当然なのだけど。

 というか、魔法の収納鞄から取りだしたアマンダの得物が変わってる。

「大剣に変えたんですか?」

「そんな訳じゃないけど、魔法の収納鞄を持ってると、色んな装備を持ってこれちゃうのよね!
 いつもだったら、一番汎用性の高い両手剣を装備するけど、ここの階層なら、この大剣でしょ!
 敵に攻撃するついでに、草も刈れちゃうからね!」

 アマンダさんは、そう言いながら大剣を一振。

 ズバン!と、アマンダさんの辺りの草が刈れてしまった。
 それにしても、ビキニアーマーのアマンダさんに、大剣は物凄く合う。
 なんか、格好良いし。

 とか、思ってたら、アマンダさんがドンドン辺りの草を大剣で刈って行く。

「えっと……アマンダさん、何を?」

「私やトト君は、魔物の殺気で、魔物がどこに居るか解るけど、サクラちゃんは分からないでしょ?
 やっぱり、最初のうちは、目で見えてないと突然の事に対処出来ないと思うから、こうやって草を狩ってるんだよ!」

「なるほど、草を刈ってる場所に魔物をおびき寄せて、魔物を狩るという事ですね?」

「うん! そういう事、だから、トト君もドンドン草を狩っちゃって!」

 俺と、アマンダさんは二人で、範囲にして、半径20メートルぐらい草を刈ってやる。

 そして、中心に移動して、草刈り中、魔物に襲われないようにと、俺はビンビンに発していた殺気を消してやる。

 多分、これで魔物には、子供二人と、美味しそうな女の人が、草が刈り取られた円の中心に震えて立って居るとしか見えないだろう。

 案の定、美味そうな匂いに釣られてか、やたらと長い牙を生やした虎のような魔物が
 ヨダレを垂らしてやって来た。

 やはり、これなら魔物が視認出来るから、楽である。サクラ姫もしっかり、虎のような魔物を視認出来てるし。

 そして、虎の魔物は、ゆっくりと俺達に近付いて来る。多分、完全に俺達の事を格下と思ってるのだろう。

 俺は、殺気を放たないように、十一文字権蔵の鞘を握る。

「トト~」

「大丈夫だ。俺に任せておけ」

 心配そうな、サクラ姫を落ち着かせるように、できるだけ声を抑えて言う。

 そして、虎の魔物が俺達の半径3メートルに入った所で、突然、跳躍して飛びかかって来た。

 俺は、そんな虎の魔物を冷静に一閃!
 胴体を真っ二つに斬り裂いてやる。

 胴体を斬り裂かれた魔物は、まだ生きてるようでピクピク動いている。

「サクラ! まだ魔物が生きてるうちに、胴体のお尻側に、何か攻撃を加えろ!」

「ウン!」

 サクラ姫は急いで、ずっと握り締めてた片手剣で、エイッ!と、虎の魔物のお尻に、剣をぶっ刺す。

 暫くすると、虎の魔物は完全に息絶えたのか、その場で消えて、代わりに、魔石と肉のブロックをドロップした。

 これが、所謂、姫プレイという奴。
 この世界の法則として、敵を倒した者が経験値を得られるという法則があるのだが、それは最後に倒した者が経験値を総取り出来る訳ではなく、その倒した敵を少しでも攻撃した者には全員に、均等して経験値が得られるという法則があるのである。

 てな訳で、この調子でガンガン敵を倒して、サクラ姫の経験値を上げてやる。

 塔のダンジョンの50階層ぐらいの魔物なら、俺とアマンダさんの敵じゃないのだ。
 たまに、アマンダさんがハアハア言い出したら、俺のHPを分けてやったりして、取り敢えず、丸1日レベル上げをしていたら、サクラ姫はレベル15まで一気に上がってしまった。

 俺は因みに、レベル20になり、アマンダさんもレベル24になっていた。

 サクラ姫もここまでレベルが上がれば、C級程度の魔物なら、サクラ姫でも簡単に倒す事が出来るであろう。

 普通、一般人でレベル15まで上げてる人っていないし、そもそも一般人は魔物と戦わないからね。

 そんな訳で、50階層の少し草の長い場所に、隠すように、どこでも扉を設置して、俺達のパーティーハウスであるマールダンジョン31階層に帰って来た。

 なんか、違うダンジョンから、マールダンジョンに転移するって、変な感じがする。
 感覚的に転移って、同じダンジョン内でしか出来ない感覚なのだが、それが出来ちゃうって本当に、ナナミさんは凄い。

 まあ、実際は、どこでも転移出来るのかもしれないけど、転移魔法陣って、今までダンジョン内にしか無かったからね。
 常闇の魔女という人も、敢えて、同じダンジョン内だけに転移できる魔法陣しか、設置しなかっただけかもしれないけど。

 その辺の所は、俺は常闇の魔女じゃないから分かんない所だよね。

 ーーー

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