37 / 166
37. トト、晴れて金級冒険者になる
しおりを挟む「ああ! 負けてしまった! 僕は君の顔に負けてしまったのだ~! ああ、悔しい!君の顔が好みに合いすぎて、恋の駆け引きに負けてしまったんだー! てな訳で、僕の負け。
君は、晴れて、金級冒険者! 金級上位の僕がお墨付きを上げたんだから、実力も申し分ないよ!
それに、お爺が認めた人物なんだから、間違いは絶対にないね!」
なんか、よく分からいが、俺はナナミさんに勝った事になってしまい、晴れて金級冒険者になる事ができた。
というか、お爺が認めた人物というのが、ちょっと引っ掛かる所。
そのお爺は、人斬り殺人鬼に、自分が打った国宝級の刀をタダで上げてしまい、国外追放されるような人だし。
でもって、
「トトさん! 凄いですよ! トトさんは王都冒険者ギルド史上、銅級のクエストも銀級のクエストも、一度も受けずに、初めて金級冒険者になった冒険者と認定されました!
これは、物凄い快挙です!」
受付カウンターに行くと、金級の冒険者証明書を授与され、受け付け嬢に物凄く褒められてしてしまう。
「本当かよ! あの占い師、『狂戦士アマンダ』と、『棍棒ぶっ叩き魔法使いナナミ』に勝って銀級と金級になったのかよ!
今迄、冒険者試験で、誰も合格させなかったあの2人を倒して金級になったって、これは本当に快挙だぜ!」
「だな!あの2人だけは、誰もが絶対に避ける試験官なのに」
冒険者ギルドに居た冒険者達も、ワイワイ騒いでる。
そんな喧騒を余所に、俺は、冒険者カウンターに500枚の金貨を、ド~ン!と、置く。
「これで、引き続き、プラチナ試験を受けさせてくれ!」
「「オォォォーー!!」」
これには、冒険者ギルドに居た者全員が、驚きの声を上げる。
まあ、俺が500万マールを持ってた事も凄いと思ったと思うけど、プラチナの冒険者試験を受ける者が現れる事自体が珍しい事なのだ。
「トト様、すみません。王都冒険者ギルドにも2人、プラチナ冒険者が所属してるのですけど、生憎、2人とも長期クエストに出てまして、暫くは王都に戻って来ないのですよ……」
「嘘だろ……」
俺は、物凄くショックを受ける。今迄、余りに上手くいってたもんだから、今日中にプラチナ冒険者になって、明日には王様に会いに行って、『プラチナ冒険者になったから、もう、王都の外でクエスト受けてもいいよね!』て、掛け合う予定だったのに。
まあ、駄目だと言われたら、サクラ姫の病気を治す為に、女神が住まう天空庭園に咲く、『名も無き花』の朝露から作られた『女神のエリクサー』を探す旅に出掛けると言おうと思ってたのだけど……
俺の予定が、完全に崩れてしまった……
だけれども、俺は金級冒険者!
パーティーメンバーには、銀級だけど、バーサーカー化すれば実質金級のアマンダさんも居るし、今さっき、金級上位のナナミさんも加わったのだ!
このメンバーなら、王都の外に出てもサクラ姫を守りきれるし、危ないダンジョンにさえ行かなければ、大丈夫な気もする!
てな訳で、一応、王様に聞きに行ったら、あっさり、王都の外に出ても良いと言われてしまった。
但し、絶対に王都の外に出たら、その日のうちに帰ってくる事を約束させられて。
「やったぜ! 」
俺は嬉しくて小躍りしてしまう。
俺は、これでやっと冒険者らしく活躍出来る。
まあ、強くなれば、王様も少しづつ自由を認めてくれる事が分かったし。これは大きな一歩である。基本、王様はサクラ姫に甘い。
最初は渋ってたけど、サクラ姫が『お父さんの意地悪!』とか、言ったら、あっさり認めてくれた。
そんな訳で、王様からOKも貰ったので、早速、アマンダさんとナナミさんを誘って、やっとこさ王都の外のクエスト受けに行こうとした所で、フルート侯爵の使いから連絡が来たのだ。
カスタネット準男爵領から、兄貴で次男のニコルを王都に無事連れて来て、マール王立学園の学園長の家に送り届けたという連絡を。
なんか、すっかり忘れていたが、そういえば、次男のニコルをマール王立学園に入学させてあげようと画策してたんだった。
これは、色々説明しに、ニコル兄に会いにいかなきゃ!
絶対に戸惑ってると思うし、何で、学園長の家に居候する羽目になってるのか分かんないと思うし。
そんな訳で、今日は、冒険者ギルドに行くのは止めて、マール王立学園の学園長であるサクラ姫の叔母様の家に行く事にしたのだ。
「ここが、学園長の家?」
サクラ姫と一緒に来たのだが、やっぱりというか物凄く大きくて立派な御屋敷だった。
まあ、王妃様のお姉さんの家だから、当然といえば、当然なんだけと。
まあ、こんな所にいきなり連れて来られたら、俺だったら緊張でコチンコチンに固まってしまう。
俺達が屋敷に到着すると、勝手に門が開く。
多分、いつも隠れてこそこそとサクラ姫の護衛してくれてる人達が先回りして、連絡を入れてくれていたのであろう。
そして、すぐに筆頭執事だというセバスチャンさんが出て来て、俺達を、ニコル兄が居るという応接間に案内してくれた。
「トト~!」
応接間のフカフカのソファーに、1人ポツンと座ってたニコル兄は、俺を見つけると涙目で俺に駆け寄ってきた。
「良かったな! ニコル兄! マール王立学園に通えるぞ!」
「それは実家に説明に来てくれたフルート侯爵家の人に聞いたけど、何でマール王立学園の寮じゃなくて、俺は、こんな御屋敷に住む事になってるんだよ~」
もう、ニコル兄は、涙目を通り越して泣いている。
そりゃあ、こんな豪華な御屋敷に、1人ポツンと待ってたら、不安にもなるよね。
話によると、学園長は、マール王立学園で勤務中の時間だし。詳しい事を説明してくれる筈の人が不在の為、何も分からず、ずっと豪華なお茶菓子とお茶を見つめて、過ごしてたっぽいし。
「まあ、色々あってね!」
俺は、ニコル兄の不安を払拭する為に、明るく答える。
「色々じゃ、全く分かんないよ! トトの『握手』スキルは、実はトンデモないスキルだったとかで、フルート侯爵家に養子になったとは聞いてたけど、ここに着いたら、もう、フルート侯爵家から独立して、子爵になったとか、サクラ姫様の護衛騎士になったとか、全く頭が追い付かない状況なんだけど!」
まあ、それはそうだ。
俺だって、ニコル兄の立場だったら頭が追い付かない。
「そうだよね。俺もよく分かんないけど、気付いてたら、こうなってた!
兎に角、良かったじゃん! 念願のマール王立学園に通える事になって!」
「まあ、それはそうなんだけど、何で学園の寮じゃなくて、こんな御屋敷に俺は連れてこられたんだ?」
ニコル兄は、不安そうに質問してくる。
まあ、普通、マール王立学園に入学するってなったら、地方の貴族は寮に入るのが普通だしね。
「まあ、それは、マール王立学園って、編入で入るのって、めちゃんこ難しいらしいんだよね。
よっぽどレアなスキルを持ってたり、物凄~く優秀じゃなければ編入できないんだってさ!
なので、ニコル兄には、この家、マール王立学園の学園長の家で、暫く猛勉強してもらって、編入試験を好成績で突破してもらわないといけないんだ。
しかも、マール兄の専属家庭教師は、マール王立学園の学園長ってオマケ付きな!」
「嘘だろ!ここって、マール王立学園の学園長の家で、その学園長が、俺の専属家庭教師だって?!」
ニコル兄が、あまりにビックリし、その場で腰を抜かして、へたりこんでしまったのは、まあ、仕方が無い話だよね。
ーーー
面白かったら、感想、お気に入りを押してね!
289
お気に入りに追加
874
あなたにおすすめの小説
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜
mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!?
※スカトロ表現多数あり
※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります
妹に出ていけと言われたので守護霊を全員引き連れて出ていきます
兎屋亀吉
恋愛
ヨナーク伯爵家の令嬢アリシアは幼い頃に顔に大怪我を負ってから、霊を視認し使役する能力を身に着けていた。顔の傷によって政略結婚の駒としては使えなくなってしまったアリシアは当然のように冷遇されたが、アリシアを守る守護霊の力によって生活はどんどん豊かになっていった。しかしそんなある日、アリシアの父アビゲイルが亡くなる。次に伯爵家当主となったのはアリシアの妹ミーシャのところに婿入りしていたケインという男。ミーシャとケインはアリシアのことを邪魔に思っており、アリシアは着の身着のままの状態で伯爵家から放り出されてしまう。そこからヨナーク伯爵家の没落が始まった。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
恩恵沢山の奴隷紋を良かれと思ってクランの紋章にしていた俺は、突然仲間に追放されました
まったりー
ファンタジー
7つ星PTに昇格したばかりのPTで、サポート役をしていた主人公リケイルは、ある日PTリーダーであったアモスにクランに所属する全員を奴隷にしていたと告げられてしまいます。
当たらずとも遠からずな宣告をされ、説明もさせてもらえないままに追放されました。
クランの紋章として使っていた奴隷紋は、ステータスアップなどの恩恵がある以外奴隷としての扱いの出来ない物で、主人公は分かって貰えずショックを受けてしまい、仲間はもういらないと他のダンジョン都市で奴隷を買い、自分流のダンジョン探索をして暮らすお話です。
魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど
富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。
「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。
魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。
――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?!
――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの?
私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。
今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。
重複投稿ですが、改稿してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる