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561. 幕末京都
しおりを挟む時は遡り、セドリック達が、幕末京都に異世界転移して、すぐの頃。
「ご主人様! 早くカツラとコンタクトレンズを付けて下さい!
始祖αの真っ赤な目と髪は、この時代の日本で、とても目立つんですから!」
「シロも早く、カツラとコンタクトつけやがれ!」
そう、俺達は、幕末日本に潜伏するにあたり、外人ポイ顔立ちを隠す為に、黒髪黒目に変装してるのだ。
ん? 変化スキルで、変装すれば良いだって?
馬鹿野郎! 地球は、異世界と違って魔素濃度がとっても低いんだよ!
なので、異世界で使えた変化スキルが使えなくなってるの!
そして、どういう訳か、戦闘力も魔力も滅茶苦茶落ちていて、今の俺とシロは、元の世界のA級冒険者ほどの実力まで、弱くなってしまっているのだ。
「おい!シロ! こっちの貨幣は、ちゃんと準備出来てるんだろうな!」
「ちゃんと準備してます! 事前にネットで調べて、鋳造してますから!」
「勝手に鋳造って、それ、偽札って事じゃないのか?」
「ん? 偽札ですけど、本物そっくりに作ってますから、誰にも偽札と思われませんよ!
偽札も、本物と区別できなければ、それは本物という事になりますし!」
「お前、滅茶苦茶だな……」
「それ程でも」
よく分からんが、シロは褒められたと思ったのか、滅茶苦茶照れている。
「というか、アマイモンは、どこに行っちまったんだよ!」
そう、アマイモンは、日本に着いてから直ぐに、俺達の前から姿を消してしまったのだ。
「あ。お父さんだったら、里帰りしてくるって、イタリア方面に飛んで行きましたよ!」
「まあ、確かに、アマイモンは、この世界の悪魔だが、この時間軸から来た訳じゃないだろ?」
「よく分かりませんが、悪魔は、時間軸とか、あまり気にしてないみたいですよ!」
「そんなもんなのか?」
「そんなもんでしょ! だって、お父さん本人が言ってたんですから!」
「ていうか、アイツ、俺達に仕事を押し付けて、里帰りって、ふざけてんのか!
俺だって、日本出身で、里帰りしたいっちゅーの!」
「ご主人様は、元人間だから、時間軸重要でしょ!
この時代に、親も兄弟も生きてませんし!」
「だけれども、先祖は居るかもしれないだろ!」
「誰が、先祖か分かるんですか?」
「それは、知らんけど……」
「だったら、二人で仕事しましょ!
ガブリエル様に、直接頼まれたのって、ご主人様なんですから!」
「それはそうだけど……」
「お父さんだって、遊びで里帰りする訳じゃないんです!
この世界に居る悪魔王ルシファー様と、交渉しに行くって言ってましたよ!
もう、メフィストや、黒死病の要請を受けて、第35階層に召喚しても来ないでくれって!
直接、菓子折り持って、頼みに行くっていってました!」
「アマイモンって、悪魔王ルシファーと知り合いなの?」
俺は、気になり質問する。
「そりゃぁ、そうでしょ!というか、ルシファー様は、お父さんの直接の上司ですから!」
「そんな上司が、俺を何回殺しやがったんだ!
アイツが召喚される度に、俺は、何回殺されたと思ってるんだよ!」
「だから、ルシファー様も、僕達が、お父さんの子供だと知らなかったんですよ!
なので、それを伝える為に、お父さんは、イタリアまで、ルシファー様に会いにいったの!」
「部下の子供を殺す上司って、流石は悪魔だよな!」
俺は、怒りが収まらず、不満をぶちまける。
「この話、もう、この辺でいいですか?
どんだけ話しても、不毛ですので。
それより、もう時間が無いですよ! 期限は、3ヶ月後の蛤御門の変までと、僕は見てるんで!」
「だな。蛤御門の変が終わった後だと、京都には、めっきり長州藩士が居なくなる。
それは、勇者候補の人斬りが、京都に居なくなる事を意味する。
新撰組とやり合ってたのも、殆ど長州藩士だし。勤皇志士が居なければ、勇者候補を探すのも、滅茶苦茶難しくなっちゃうからな……」
「で、これからの作戦はどうしますか?」
「そりゃあ、京都の見廻りだろ!」
「京都と言っても、とても広いですよ!」
「まず、京都の長州藩邸、薩摩藩邸、土佐藩邸、新撰組詰所は、必ず監視しなくちゃならんな!
各藩の人斬りとか、出入りしてるかもしれんし!
人斬り集団の新撰組の中にも、勇者候補が居るかもしれんしな!」
「了解です! そしたら、監視用の蜘蛛を放っておきますね!」
「サセックス帝国学校で使ってた奴な!」
「ですね! 超高画質で録画できる魔道具です!
そして、他は、どうしましょう?」
シロは、次の一手を聞いてくる。
「やはり、辻斬りが行われるのは夜だろ!
早速、今日から、夜の京都の見廻りをするぞ!」
「辻斬りって、僕達は、殺人鬼を探してる訳では無いですよ!
あくまで勇者候補ですから、品行方正な人物が良いと思います!」
「品行方正って、人斬りに、品行方正な奴って居るのかよ?」
「それを探すのが、今回のミッションじゃないですか!」
俺は、シロに指摘されて、改めて、今回のミッションの大変さに、気付いたのだった。
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