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516. 恋文
しおりを挟む「糞ーー! 恋文なんて難し過ぎる!
そもそも、男の俺が、男に恋文なんか書けるかよ! 俺、男なんて大嫌いだし!」
俺は、悩みに悩み、必死にイベリコ君の恋文を便箋に書き殴っている。
「ご主人様、書けましたか! もう時間ですよ!」
シロが、焦った声で急かしくる。
「一応書けたけど……」
「なら、直ぐに学校に行って下さい! 早くしないと、イベリコ君が登校して来ちゃいますよ!」
「エッ? 俺が書いた、イベリコ君へのラブレター見てくれないのかよ?」
「そんな時間、もうありませんよ!
それに、僕に、ご主人様が書いたラブレター見られたいんですか?」
「それは……やっぱり、ちょっと恥ずかしいかな……」
俺は、モジモジしながら恥ずかしがる。
「ですよね!」
そんな感じで、俺はシロに見送られて女子貴族寮を出たのだった。
ちょっとヤバイな……。
そう、俺はラブレターを書くのに手間取り過ぎて、大幅に前の周回より、登校時間が遅れているのだ。
大体、イベリコ君が登校してくる時間は分かってるが、本当に、前回と同じ時間に登校してくるとは限らない。
とか、思ってると、時計台校舎の玄関付近に、頭に小鳥を乗せたイベリコ君が歩いてるのが見えてきた。
「ヤバイ!」
そう、俺は、イベリコ君が登校してくる前に、下駄箱にラブレターを入れておかないといけないのだ。
ここは西洋様式の学校なのだが、何故だか知らないが、土禁で、上履きに履き替えないといけないのである。
まあ、中庭は、何故だか知らないが、上履きのままで出てもいいのだけど。
その辺は、『恋愛イチャイチャ キングダム』仕様で、きっと、ラブレターイベントとか有るのかもしれない。
俺は、イベリコ君が、俺より先に下駄箱に行ってしまうのは困るので、ありったけの魔力で、上空に魔法を打ち上げてやる。
ドッカ~ン!
登校中の生徒達は、突然、魔法爆発の音に反応して、上空に上がった煙を見ている。
俺は、その隙に、イベリコ君の横を通りすぎ、時計台校舎に到着すると、必死に、イベリコ君の下駄箱の場所を探す。
「あった! ここか!」
俺は、急いでイベリコ君の下駄箱を開けると、中には、弁当箱のような物が置かれていた。
先客? というか、下駄箱の中に弁当を入れとくって……普通、誰が作ったかも分からない弁当食う奴居るかよ!
まあ、滅茶苦茶おかしいと思ったが、俺は、俺以外?にも、イベリコ君に好意を持ってる者も居ると安心し、その弁当箱の上に、ラブレターを置いて、少し離れた場所で、イベリコ君の様子を伺う事にしたのだった。
暫くすると、魔法爆発事件が収まったのか、イベリコ君が自分の下駄箱の前に現れた。
そして、イベリコ君は、躊躇なく、自分の下駄箱を開ける。
そして、直ぐに、ラブレターと弁当箱が有る事に気付いたようだ。
キョロキョロと辺りをみやり、そして、誰も辺りに居ない事を確認してから、俺が書いたラブレターを手に取り、そして、俺の書いたラブレターを読み出した。
なんか、よく分からないが、イベリコ君の顔が、みるみる紅潮していき、耳まで真っ赤になって、プルプル震えている。
よっぽど、絶世の美女じゃなくて、美幼女である俺からラブレターをもらって嬉しかったのだろう。
誰が書いたラブレターか分からないと困るので、しっかりと名前も書いたしね!
まあ、下駄箱に弁当箱を入れていた、俺以外のイベリコ君に好意を寄せてる人物は、手紙とかを一緒に入れて無かったので、イベリコ君は、誰からの贈り物?弁当なのか分からないと思うけど。
そして、顔を紅潮させて、プルプル打ち震えてるイベリコ君は、次に、ラブレターに下に置いてあった、弁当箱を手に取る。
この状況だと、ラブレターを書いた俺が、イベリコ君に弁当を作って、置いておいたように見えてしまうが、まあ、いいだろう。
俺の評価が、爆上げするだけだし。
とか、思っててると、
ポンポン。
とても良い所なのに、誰かが、俺の肩を叩いてくる。
「今、良い所なので、後にして下さい!」
俺は、振り返りもせずに、肩に置かれてる誰かの手を振り払う。
「何、やってるべ?」
どうやら、俺の肩を叩いてた人物は、ハーフリングのユリアさんであったようだ。
「見て分からないですか? イベリコ君を見てるんですよ!」
「ああ。イベリコ君だべな……私も、少しやり過ぎたと思って心配してたんだべ。
なので、お詫びといっちゃあなんなんだけど、イベリコ君が頭に飼ってる、小鳥の餌を、下駄箱に入れておいたんだべな」
「ん? 今、なんていいました?」
「だから、イベリコ君が飼ってる小鳥の餌を、昨日、サセックス帝国学校の森の中を探し回って、大量のミミズをタッパに入れて、イベリコ君の下駄箱の中に入れておいたんだべ!」
「何ですと!」
俺は、慌てて、後ろを振り返り、ユリアさんの顔をみる。
ユリアさんは、どうしたんだべ?ていう顔をして、俺の顔を不思議そうに見ている。
「糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞、糞……」
なんか、下駄箱の方から、呪怨のような糞糞言う、イベリコ君の聞き慣れた声が聞こえてくる。
どう考えてもヤバイ。
イベリコ君は、ラブレターを送った主である俺が、イベリコ君にミミズ弁当をプレゼントしたと思ってるに違いない。
俺は、縮み上がって、その場からそそくさと逃げ出そうとする。
「オイ!近くに居るんだろ! リコリット!」
完全にバレている。
「コソコソしてないで、早く出て来いよ!
どっかで隠れて、俺の様子を見て、クスクスほくそ笑んでるんだろうが!」
いえいえ、ビビって震え上がってます。
昨日というか、前の周回で、悪魔王ルシファーに体を乗っ取られ中のイベリコ君に殺されてるし。
「あっ! リコリットちゃんなら、ここに居るべ!」
ユリアさんが、良かれと思って、言わなくても良い事を口走る。
「お前も居たか、チビッ子!」
「チビッ子言うな! 鳥の巣頭!
折角、仲直りしようと、ミミズあげたのに!」
「ミミズ弁当は、お前かよ! また、リコリットと二人で、俺を陥れようとしてるんだな!」
なんか、また、ユリアさんがイベリコ君と揉めている。
俺はその隙に、その場から逃げようとする。
このまま行くと、イベリコ君は、絶対に闇堕ちして、悪魔王ルシファーになっちゃうし。
「オイ! 逃げるな! リコリット! こんなラブレターというか、ふざけた呪いの手紙書いといて、どんだけお前は、心が汚れてるんだ!」
ん? 呪いの手紙?俺は、正真正銘なイベリコ君の事を思う恋文を書いた筈なんだけど……。イベリコ君は、一体、何を言ってるのだ?
「なんの事を言ってるのか、分かんなんですけど!」
俺は、少しカチッときて、言い返す。
「だったら、読み上げてやるよ!」
イベリコ君は、そう言うと、俺が書いたイベリコ君への恋文を読み上げた。
「変しい、変しいイベリコ様、私は心の底からイベリコ様に変しているのです」「私の胸はイベリコ様を思う脳ましさでいっぱいです。私は脳んで脳んで脳み死ぬかのではないかと思います!」
「ん? イベリコ様に変してる?脳み死ぬ?
イベリコ君、何を言ってるんだ?」
俺は、さっぱり訳が分からない。
「アッハッハッハッハッ! リコリットちゃん、何を書いてるんだべ!
変しい、変しいって! 脳んで、脳んでって、脳ミソ大好き、スケルトンみたいだべ!」
俺の隣で、ユリアさんが、お腹を抱えて大笑いしてる。
どうやら、俺は、恋という字を、”変”。悩という字を、”脳”と書いてしまってたようである。
なんか、どっかで聞いたようのな話であるが、もしかしたら、俺は字を書き間違えたのかもしれない。
だって、そんなに字を書く機会なんか無いんだよ!
日本のサラリーマン時代も、殆ど、メールでクライアントとやり取りしてたから、字を書く機会など殆ど無かったんだよ!
基本、友達とのやり取りもlineだったし。
案の定、イベリコ君は、そのまま闇堕ちして、俺は、悪魔王ルシファーが復活と同時に、瞬殺されてしまったのだった。
ーーー
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