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478. イーグル爺VSクラリス(1)

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 トーナメントも佳境に入り、ベスト5のメンバーが出揃う。

 残ったメンバーは、イーグル爺、クラリス、キャメロット、ユリアさん、そして、俺、リコリットである。

 平民組も善戦したが、如何せん。本物の強者達には敵わなかったようだ。

 それより酷いのは、バンパイア貴族達。
 結局、歴戦の猛者である、イーグル爺しか残る事が出来なかった。
 まあ、戦闘を経験した事のない、お子様達なので、仕方がないんだけど。

「それじゃあ、クジ引きを始めるぞ!」

 メアリーが、ここでやっとクジ引きをするようだ。
 というか、トーナメントの最初にすればいいのに。

 まあ、今回残ったのは5人で、1人だけ不戦勝になるから、不公平が起こらないようにクジ引きするんだと思うけど。

 そんでもって、クジ引きの結果。

 イーグル爺VSクラリス

 キャメロットVSユリアさん

 そして、俺は不戦勝で、イーグル爺とクラリスの試合の勝者と戦う事になった。


「それじゃあ、イーグル爺VSクラリスの試合を始めるぞ!」

「腕が鳴るワイ!」

「勝つのは、私ニャ!」

 ここまでの試合を、全て10秒以内で終わらせている、ノーダメージの2人が前に出る。

「ついでに言っとく! トーナメントの勝者は、リコリットとの1日デート券だ!」

「何じゃと!」

「ニャンと!」

 メアリーの言葉に、イーグル爺とクラリスは興奮を隠せない。
 というか、俺は、メアリーに何も聞いてない。

「勝つ! ワシは、絶対に勝つ! そして、リコリットちゃんと、日帰り温泉デートするんじゃい!」

「勝つのは、私ニャ! 私は、姫様に膝枕してもらって、1日ゴロゴロするのニャ!」

 なんか、2人とも、勝った気でいるのか、ウキウキである。

「それじゃあ!準決勝?試合開始!」

 メアリーの号令で試合が始まった。

 これまでの2人の試合は、全て、先手必勝だったのに、実力者同士の戦いだからなのか、お互い、相手の出方を伺っている。

 イーグル爺は、言わずと知れた、バンパイア第一世代で、カール大帝の右腕であり、歴戦の猛者。

 もう一方のクラリスは、南アメリカ最大の王国 ニャンダ王国のお姫様であり、魔物が跋扈する北アメリカ大陸の脅威にいつも晒されていたので、戦う事は、日常茶飯事。

 クラリスも5歳の時から、ダンジョンから魔王が生まれるのを防ぐ為に、北アメリカに渡って、ダンジョンの魔物を間引くという、ニャンダ王家としての仕事をこなして来たのであった。

 そんでもって、まだまだ補足。

 イーグル爺は、魔法使いでありながら、騎士である。
 というか、人間の時は、元々、王国騎士だったのだが、バンパイアになってから魔法に目覚めた口である。

 なので、基本は、肉体強化魔法や剣にエンチャントを掛けて、剣術のみで戦うスタイル。

 そんでもって、クラリスは、獣人特有の体の強靭さと、バネの強さで相手を圧倒する、得物は何も持たず己の肉体のみで戦う、徒手空拳で戦うスタイル。

 即ち、イーグル爺VSクラリスの戦いは、剣VS素手の戦いであるのだ。

 イーグル爺が、ジリジリと間合いを詰める。

 一方、クラリスは、体に闘気を覆わせ、ジッと、イーグル爺の動きを観察している。

 ここでまたまた、ちょっと脱線するが、闘気とは、体に漂わす魔力の事。
 この闘気により、身体強化する感じだ。

 そんでもって、メアリーにより、精神と時の部屋で修行させられた生徒達は、この闘気が使えなかった者ばかり。

 Sクラスにいるバンパイア貴族やら、獣人やら化物じみたポテンシャルの者達に対抗する為に、メアリーが無理矢理、闘気を使えるように生徒達を底上げしたと思われる。

 化物ばかりのSクラスで、普通の人間が一緒に授業というか、生活するというか、共に何かを行うのは危な過ぎるので、メアリー先生は、最初に手を打っておこうと考えたのかもしれない。

 まあ、ちょっと何かする度に、怪我されたり、死んじゃたりするのが、面倒くさかっただけかもしれないけど。

 実際、Sクラスの生徒達は、学校が始まって、僅か3日間で何人も死んでるしね!

 でもって、イーグル爺が、ジリジリと間合いを詰めて、ついに、クラリスとの間合いに入った。

 その瞬間! クラリスが、電光石火で、一気にイーグル爺の懐に潜り込む。

「頂きニャ!」

 クラリスは、低い体制から、イーグル爺の みぞおちを狙って、アッパーカットを繰り出す。

 しかしながら、流石は、歴戦の猛者イーグル爺!

 イーグル爺は、刀の柄で、クラリスのアッパーカットを受け止め、それと同時に、クラリスに金的蹴りを食らわした。

 クラリスは、後方に吹っ飛ばされたが、空中で2回転して見事に着地する。

「クッ! やるニャ!」

 見ていて、金玉縮み上がり腰が引けてしまったが、俺は、現在、男じゃなくて幼女で、金玉無かった。

 クラリスも、お股を蹴り上げられる瞬間、自分で後ろに飛んだようで、それ程、ダメージは無さそうである。

 女でも、あの蹴りを食らったら、暫く、オシッコする度に、ヒリヒリして痛そうだ。

 それにしても、2人とも戦闘しなれしている。

 みぞおち とか、金的とか、相手の急所を、躊躇無く狙って攻撃してるし。

「ワシは、お主の事を、少しばかり舐めてたようじゃな」

 イーグル爺が、クラリスを褒める。

 無理もない。

 ヨーロッパで活動していたイーグル爺には、アメリカ大陸の過酷さなど、分からないのだから。

 南アメリカに住む獣人達は、365日、北アメリカで、いつ誕生するかも分からない魔王や、ダンジョンから溢れ出る魔物の恐怖と戦ってるのだ。

 過酷なダンジョンでの、魔物の間引き作業など、やった事ある奴らにしか分からなのである。

 だって、北アメリカ大陸って広大なんだよ!
 どんだけ、ダンジョンが有ると思ってるの?
 ひたすら、365日。北アメリカ中のダンジョンを駆け巡って、魔物間引きをしなくちゃいけないのだよ!

「お前も、なかなかやるニャ!ギガントパンダ並のキックだったのニャ!」

 クラリスも余裕を見せる為、イーグル爺の真似をして、イーグル爺を褒めてみせる。

 ギガントパンダが、どれくらい強いのか全く分からないから、クラリスが、褒めてるのかどうか、全く分からないのだけど。

 ーーー

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