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467. 高潔令嬢

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「何なんですか、アノ巨乳女! オッパイデカい女は死ねばいいんです!」

 夜になると、シロが、ブツブツ言いながら、俺の寮の部屋に戻ってきた。

「校舎の修復は、どうなったんだ?」

 俺は、シロに、それとなく質問する。

「終わりましたよ!南の大陸からドワーフ100人呼んでの大工事でしたよ!
 本当に、メアリーさん、何を考えてるんでしょうね?
 何で、ペーター君、メアリーさんを教師に登用したんだろう?」

 なんか、話によると、シロとメアリーは言い合いになり、結局、校長のペーター君に止められたようであった。

 そんでもって、どうやら、ペーター君が、メアリーを教師に推薦したらしい。

 そんな話を聞いて、俺は推測する。

「それは、多分、ペーター君は、生徒に武士道を教えたかったんじゃないのか?
 メアリーって、やたらと武士道とか、日本の古き良き教えを真似しようとするし」

「そうかもしれません……だけど、校舎を破壊する事無いでしょ!」

「相手が、カール大帝の右腕のイーグル爺だったのが原因だな!
 アイツ、バトルジャンキーだから、イーグル爺との死合が楽しくなっちゃって、はっちゃけちゃったんだな!」

「教師が授業を忘れて、楽しくなるって……」

 シロが、メチャクチャ呆れている。

「アイツは、アホだからしょうが無いんだよ!」

「なんか、ご主人様が、メアリーさんを擁護すると、益々ムカついてくるんですけど!」

「お前も、心が狭い女だな!」

「ご主人様は、いつの間にか、国民に、心が広い幼女って勘違いされてますもんね!」

「まあな! 遂に、俺の心の広さが、皆に伝わり始めたんだな!」

「リコリット様の心が広いと思われてるだけで、ご主人様の心の広さが伝わった訳じゃないですけどね!
 というか、完全に、国民に勘違いされてるだけだし!」

 シロの必殺、褒めディスりが炸裂した。

「俺の心が狭いとか、言うのかよ!」

「怒るとキレて、僕をボコボコに殴る人間が、心が広い訳ないでしょ!」

「そ……そんなのな……。お前が殴られたそうにしてるから、しょうがなく殴ってんだよ!」

「でしたね!」

 なんかよく分からないが、シロが納得してくれた。

 そんなシロに、なんかムカついたので、グーパンしてやろうと思ったが、現在、シロと同じ大きさなので、姉妹ゲンカのようになってしまうと思い、止めておいた。

「ところで、短縮授業で早く寮に戻って、驚いた事とか無かったですか?」

 なんか、シロが魔改造した寮の出来栄えを褒めてとばかりに、聞いてきた。

「まあな。シロなら、これくらいやれて当然だろ?」

 俺は、素っ気なく答えてやる。

「当然ですか……大浴場なんか、結構、張り切ってリフォームしたんですけど……」

「そう言えば、大浴場で、金髪縦巻きロール以外の貴族令嬢達が、みんなイキ失神してたぞ!
 勿論、俺のせいじゃないけどな!」

 俺は、何となく思い出した事を、口に出してしまう。

「何ですと!あれ程、今朝、お灸を据えたのに!」

 なんか、シロが、怒り心頭で怒りだした。

「行きますよ!」

「てっ!? どこに?」

「勿論、貴族令嬢達を叱りに行くに、決まってます!」

「えっ! 今から? 俺も一緒に付いて行ったら、俺がチクッたと思われちゃうじゃないかよ!」

 俺は、焦って、保身に走る。

「そしたら、さりげなく、他のメイドか寮生に、今日有った事を聞いてみます!」

「なら、OK!」

 俺は、自分がチクッたと思われなければ問題無いので、ルンルンになってしまう。

 他人の不幸は、蜜の味なのだ。

 で、もって、大食堂に向かうと、これまた大食堂が、シロによって、魔改造されていた。

 なんか、舞踏会が行われるような、キラキラしたゴージャスな空間になっている。

 純白に金色で装飾された壁に、フカフカの赤絨毯。
 天井には、俺の冒険の軌跡が描かれた宗教画。
 中央には、巨大なシャンデリア。

 そして、等間隔で置かれていたテーブルは、長方形のテーブルから、ロココ調のオシャレな丸テーブルに替えられており、一つ一つの椅子も、全てゴージャスな貴族椅子に替えられたりする。

 そんな素敵な空間で、イキ失神から回復した貴族令嬢達は、お茶を飲んで楽しそうに談笑していたのだった。

 でもって、俺とシロが、大食堂に現れるのに気付くと、みんな立ち上がり、

「リコリット様。シロ様。お疲れ様でございます」

 と、貴族令嬢風の挨拶をしてきた。

 俺も、同じようにスカートの端を掴み、貴族風の挨拶をしようとすると、シロに止められる。

「寮内では、リコリット様がトップです!
 ここは、ただ、『ご機嫌よう』と、頭を軽く下げるだけで、OKです!」

 なんでも知ってるシロが、貴族の作法を教えてくれたので、早速、やってみる事にした。

「ご機嫌よう」

 俺が、軽く頭を下げて言うと、貴族令嬢達は、深々と頭を下げて返してきた。

 なんか、俺、貴族令嬢ぽい!

「ご主人様、『ご機嫌よう』は、結構、使える言葉ですので、これからは、何かあったら、取り敢えず、『ご機嫌よう』と、言ってたら乗り切れる筈です!」

 シロが、小声で教えてくれる。

 そんでもって、席に座ると、金髪縦巻きロールのメイドがやって来る。

「リコリット様、シロ様、本日のメニューでございます!」

 なんか、ブッフェ方式じゃなくなってる。
 メニューも、豊富に有り、何種類かのコース料理に加えて、単品メニューも数十種類。
 デザートメニューも充実しており、ドリンクメニューも豊富にある。

「それじゃあ、私は、Aコースで!」

 俺は、初めてなので、無難な日替わりディナーコースを頼む。

「僕も、リコリット様と同じコースで!」

「畏まりました! すぐにお持ちします!」

 なんか、よく分からないが、メイド長である筈のシロも、一緒にテーブルに座って料理を頼んでる。

 金髪縦巻きロールのメイドが居なくなると、シロに小声で質問する。

「お前、メイドの仕事しなくてもいいのかよ!」

「僕は、貴族寮のメイド長でありながら、サセックス帝国連邦の宰相であり、軍師でもあります!
 そんな僕が、ご主人様以外の貴族の子弟に頭を下げる訳にはいかないでしょ!」

「そんなもんか?」

「そんなもんです!」

 まあ、勝手に、学生寮を魔改造しちゃえる権限を持ってるので、当然と言えば当然かもしれないけど。

 とか、やってると、金髪縦巻きロールが、一人、大食堂にやって来た。

 そして、俺とシロを見つけると、急いで俺達のテーブルにやって来て、挨拶しに来る。

「リコリット様。シロ様。お疲れ様でございます!」

 金髪縦巻きロールは、優雅にスカートの両端を持って、貴族令嬢風の挨拶をしてきた。

「ご機嫌よう」

 俺は、さっき、シロに教えて貰った言葉を活用し、席に座ったまま挨拶してみる。
 なんか、身分が高い貴族令嬢になったようだ。

 というか、俺は、身分が高い貴族令嬢だった。

「シャトレーゼさん。僕が居ない間の、今日の寮の様子を教えて下さい。
 朝、僕が注意した事は、シッカリ守られましたか?」

 なんか、唐突に、シロが、シャトレーゼ?に質問する。

「ハイ! ええと……申し訳ございません!」

 金髪縦巻きロールが、めちゃくちゃ青ざめて、その場で土下座した。

 そして、

「私が居ながら、寮生達が、また、お風呂で失神してしまいました!」

 と、シロに、深々と頭を下げて謝罪する。

「そうですか……今朝、言った傍から……。
 貴方達、僕を舐めてるんですか?」

「め……滅相もございません!」

 金髪縦巻きロールが、ガタガタ震えて、額から大量の汗を流し、真っ赤な絨毯に染みを作ってしまっている。

 そんな、シロと金髪縦巻きロールのやり取りを、聞き耳を立てて、遠目から見ていた他の貴族令嬢達も、その場で土下座しガタガタ震えている。

 多分、今日の朝も、同じようにシロに怒られたのであろう。

「全て、私の教育不行き届きで御座います!」

 なんか、よく分からないが、金髪縦巻きロールは、全ての罪を、自分一人で被るつもりみたいだ。

 なんて、高潔な精神。
 本当に、貴族の鏡のような令嬢である。
 俺は、こんな良い人に弱い。
 思わず、助け舟を出したくなってしまう。

「シロ、金髪……じゃなくて、シャトレーゼは、何も悪い事してません!
 お風呂で失神もしてませんし、逆に、失神した令嬢達の介抱も、積極的に手伝っていました!」

 思わず、金髪縦巻きロールと言ってしまう所だった。
 昔、よく有った、激安スウィーツ販売店と同じ名前だと思ってたので、間違える事なく名前を思い出せたが、そうでなければ危なかった。

 折角、良いセリフを言ったのに、金髪縦巻きロールと、そのまま言っていたら、取り返しのつかない事になってた筈だ。

 俺が今まで築いてきた、リコリットの名声はガタ落ち。

 恐ろしい事になっていたと、想像できる。

 しかし、

「リコリット様ぁーー! 何と有り難いお言葉!
 私などを、庇って下さるとは……」

 なんか、金髪縦巻きロールが、俺の言葉に、打ち震えて感動している。

 そんな感動してる、金髪縦巻きロールに、

「シャトレーゼさんは、お風呂で失神しなかったんですね?」

 シロが、念を押して尋ねる。

「ハイ! ですが、私が、他の者の失神を止められなかったのは、事実です!
 どうか、私めを、他の寮生と同じように、罰して下さいませ!」

 金髪縦巻きロールは、どこまでも高潔な貴族令嬢だった。

「そうですか。シャトレーゼさんがそう言うなら、貴方も一緒に罰します!」

「ありがとう御座います!」

 なんか、シャトレーゼが、涙を流しながら、シロにお礼を言っている。

 そんなに、シロに折檻される事が、涙を流すほど、嬉しい事なのか?

 俺は、高潔な貴族令嬢の気持ちなんか分からないから、どうでもいいんだけど。

「それじゃあ、みんな10分後に、大浴場に集合するように!
 ちょっとや、そっとじゃ、失神しないように、僕がミッチリとシゴいてあげます!」

「「お願い致します!!」」

 大食堂に、貴族令嬢の、キビッ! とした返事が響いた。

 そんな貴族令嬢の返事を聞いて、シロが誰にも気付かれなないように下に俯き、嬉しそうにニヘラ笑いしたのは、言うまでも無い事だった。

 ーーー

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