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464.聖女爆誕
しおりを挟むなんかよく分からないが、初授業が、メアリー先生との死合になってしまった。
何で、こうなった……。
まあ、原因は、金髪縦巻きロールの双子の兄、小カールの言葉から始まったんだけど。
そう、小カールが、いきなり、メアリーとの一騎打ちを申し出たのである。
そんな事されたら、メアリーが乗らない筈はない。
何せ、メアリーは、熱い戦いが大好きなバトルジャンキーなのだから。
メアリーが、一騎打ちを受けると言うと、「俺も!」「私も!」と、さっき自己紹介で撃沈してた、いきなり【魅了】スキルを使ったヤバい女と、俺以外が、メアリーに一騎打ちを申し込んだのであった。
そんでもって、時計台校舎の裏にある、大運動場。
「今日の授業は、死合にする!
約束通り、私に勝った者は、リコリットと付き合う権利をくれてやる!」
メアリーが、調子に乗って、Sクラスの生徒達を煽る。
「「オオーー!!」」
Sクラスの生徒達が、雄叫びをあげる。
何故か分からないが、既に、メアリーは、Sクラスの生徒達を1つに纏めているようだ。
まあ、元が海賊団の団長だから、人を纏めるというか、人心掌握が得意なのであろう。
て、いうか、これ授業?
という事は、俺もメアリーと戦わないといけないのか?
一騎打ちなど、勝手にやってくれればいいのに、授業にするなんて……。
とか、頭の中で、考えてると、
「オイ! リコリット! お前、シロからエリクサー貰ってるよな?」
なんか、メアリーが俺に確認してきた。
「30個ぐらいは、持ってますが……」
「なら、OK! 本気を出せる!」
なんか、メアリーが恐ろしい事を言っている。
メアリーの本気は、海を割るというのに。
どう考えても、生徒達の中に、メアリーの相手ができる者なんていない。
まあ、マトモに相手が出来るのが、1人だけいるか。
イーグル爺は、確かバンパイア公爵で、カール大帝の右腕だった男だ。
サセックス王国VS十字軍の戦いで、最大の激戦区だったノルマンディー戦線で、奴を見た事があったのだ。
正に、鬼神!
その物凄い戦いぶりは、普通に、同じバンパイア公爵のドレークを越えていた。
だとしても、今のメアリーが、イーグル爺に負ける筈もない。
剣術だけの腕前なら、この世界だったら、アナスタシアの次の腕前の持ち主なのだ。
持って、3分だな。
俺は、魔法の鞄から、エリクサーを取り出し、死合の準備を始める。
生徒達は、メアリーという女を分かっていないのだ。
学校の先生という身分だから、手加減してくれると思っているのだろう。
言葉で、「しあい」と言ってるので、気付いてないかもしれないが、先程からメアリーが発してる言葉は、「死合」。
「試合」では無いのである。
じゃなければ、俺に、エリクサーなど、準備させないしね!
「それじゃあ、始めるぞ! まず、イーグル爺! お前からだ!
生徒達に、本当の死合というものを、教えてやらないといけないからな!」
この中で、唯一、メアリーの『死合』の意味を理解しているイーグル爺が、自分の得物の剣を、スルリと抜いた。
「なっ! 真剣で試合するのかよ!」
「イーグル爺の奴、何を考えてるんだ!」
なんか、生徒達が焦っている。
無理も無い、まだまだSクラスの生徒達はお子様ばかり。本当の戦争を体験してる者など、皆無なのだから。
「ほら! いいぜ! どこからでも掛かって来いよ!」
メアリーは、刀も抜かずに余裕綽々。
「舐めるな! 小娘! ワシは、カール閣下の横で300年、戦いに明け暮れてきた男ぞ!」
イーグル爺は、体から、全闘気を発散させる。
「クッ!」
ヤバい闘気に、筆記試験で合格した者達の殆どが、気を失ってしまう。
「チッ! 軟弱な奴ばかりだな」
なんか、自分の生徒の3分の1が気絶してしまった事に、メアリーはご立腹のようだ。
「では、参る!」
イーグル爺は、ジジイとは思えない程の神速で、メアリーの目の前に移動し、剣を振るう。
キン! キン! キン! キン!
なんか、メアリーとイーグル爺は、打ち合ってるように見えるが、パーフェクト・バンパイアLv.1の今の俺では、そのスピードを、目で追う事ができない。
「オイ! どうしたよ! カール大帝の右腕が、その程度かよ!」
「クッ! 流石、始祖様のお孫様! 私が思ってた以上の実力のようですな!」
「当たり前だ! 私が、お祖母様以外のバンパイアに負けるかよ!」
バキッ!
メアリーが、イーグル爺を、その剛腕で吹き飛ばした。
というか、メアリーはまだ、鞘から刀を抜いても居なかった。
「流石は、メアリー様。ワシの斬撃を鞘だけでいなすとは。これは、本気を出さねばなりますまいな」
イーグル爺は、改めて闘気を練り直す。
というか、ヤバい。
俺は、ちょっと、イーグル爺を舐めてたのかもしれない。
俺は、急いで、その場から逃げだした。
「秘技! 巨神の一撃!!」
突然、イーグル爺の体がキングコングのように巨大になり、そして、上段から闘気で肥大した5メートルはあろう大剣を、メアリーに向けて振り落とした。
ズザザザザザザザーーン!
剣圧で、物凄い土煙が舞う。
その土煙のせいで、メアリーがやられたかどうか分からない。
しかし、
「これを受け切るとは……」
イーグル爺が、呟く。
メアリーは、何事でもないように、イーグル爺の大剣を受け止めていたのだ。
しかも、刀に左手を添える事なく、右手1本で受け止めていた。
「温いな。だがしかし、私の刀を鞘から抜かせた事だけは褒めてやろう!」
確かに、さっきまで鞘に収められたままだった刀身が、表に出ている。
多分、鞘に入れたまま受け止めていたら、鞘の装飾が壊れてしまうと判断したのだろう。
「それでは、私も、イーグル爺が全ての力を出し切った事を評して、少しだけ本気を出してやる」
メアリーは、そう言うと、刀を上段に構える。
「ヤバい! 今回は、本気でヤバい!」
俺は、イーグル爺の後ろに逃げていたが、急遽、右へならえして、メアリーの刀の軌道から逸れるように必死にダッシュする。
「必殺! 海割り!」
ズダダダダダダダダダダダダーーン!
地を割るような轟音が、港町ブライトン中に響き渡る。
イーグル爺は、真っ二つに切り裂かれ、後ろにいた生徒何人かが犠牲になり、多分、結界が張られていたであろう時計台校舎の、まだ使われていない後ろ側の部分が崩壊してしまった。
「やべぇ! やっちまった!」
メアリーが、時計台校舎を崩壊させてしまった事に動揺して、滅茶苦茶焦っている。
そんな事より、メアリーが、イーグル爺を含めて、何人かの生徒を殺してしまった事に、他の生徒達は、打ち震えて、オシッコをチビってしまっている。
俺は、そんな、お漏らししてしまった生徒達のズボンやスカート、それからパンツを、セッセと脱がせ、シロに漏らした時の為にと、魔法の鞄の中にストックしておいて貰っていた男女共用の替えのパンツを履かせてやるのだった。
勿論、死んじゃったイーグル爺や生徒達も、エリクサーで生き返えらせるのも忘れない。
そんな俺の様子を、騒ぎに駆け付けて来て見ていた、他のクラスの生徒達は、
「リコリット様が、奇跡を起こしになられた!」
「死んだ人間を生き返えらせるなんて!」
「リコリット様は、伝説の聖女様に違いないわ!」
「ああ! 愛しの聖女様~♡」
と、感動感涙したのだった。
そんな感じで、ここに新たな聖女伝説が誕生したのも、当然の事で、また、別の話。
ーーー
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