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432. 器の適正

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「兎に角、早く、ジャンヌの居場所を教えなさい!
 私達には、ジャンヌが必要なんです!
 ジャンヌ程の器など、他にないんですからね!」

 何かよく分からないが、メフィスト・フェレスが怒り出した。

「そんなに、ルシファーの器が欲しいのかよ?」

「何故、それを?」

「そんなの決まってるだろ!俺がエスパーだからだ!
 お前の考えなんて、みんなお見通しなんだよ!」

 シロに、メフィスト・フェレスが、ルシファーを召喚しようとしてると聞いてたので、もしやと思い、カマをかけたら当たってたようだ。

「貴方に、そんなスキルとか無かった筈ですけど……。
 まさか、骨なのに勇者とかいう、訳の分からない称号の産物で、魔の者スケルトンなのに、聖の象徴である勇者になるという超常的な現象の副産物だとか?」

 なんか、メフィストが全く訳の分からない事を言ってるが、面白そうなので乗っかる事にしてみる。

「そうだ! 俺こそが、魔の者でありながら、生まれながらの聖属性持ち!
 稀有な勇者、セドリック様なのだよ!」

「まさか、聖杯を飲まずして、聖と魔を併せ持つ人間が、ジャンヌの他にも居たなんて……」

 なんか、メフィスト・フェレスが衝撃を受けている。

「しかしながら、貴方の場合、聖属性より、性属性の方が強いようです。
 何ですか? チ〇コの皮を切りすぎた男って!
 ルシファー様の器に出来るかと思いましたが、貴方のようなおバカさんを、ルシファー様の器にする訳にはいけません!」

「チ〇コの皮は関係ねーだろ!」

 俺は、激しく否定する。

「やはり、かつて純潔の乙女と言われたジャンヌほど、ルシファー様の器にふさわしい人物など、他におりません!
 そう! ジャンヌほど、大天使から堕天したルシファー様と被る者など、存在しないのです!」

 なんかよく分からないが、メフィストが、興奮しながら語ってる。

「ジャンヌ、ジャンヌって、うるせーな!
 俺の方が、どう見ても大物だろうがよ!
 アイツなんか、俺の手柄を横取りする卑怯者だぞ!」

「卑怯者、なお結構! 魔に堕ちてるなら、悪魔と同じように、嘘やズルを平気で付けなければなりませんので!」

 ん? 魔に堕ちてるって、何の事を言ってるんだ?
 ジャンヌ・ダルクって、フランス救国の英雄じゃなかったの?

『ご主人様! 地球でのジャンヌさんは、魔女だとして火炙りの計で殺されちゃってるんですよ!
 その後、カトリック教会に、聖人と祭り上げられましたが、実際には、裏切られたフランスやカトリック教会を、相当恨んで死んだ筈です!

 そして、この世界のジャンヌさんの場合は、火炙りにされた後、アナスタシアさんの血を分け与えられて復活してますので、カトリックに聖人認定される事なく、フランク王国や十字軍に深い恨みだけが残って、見事に魔落ちしちゃってるんですよ!』

 シロが、俺の頭の中に、直接語り掛けてきた。
 俺とシロって、念話できたか?
 深く考えるのはよそう。何せ、相手は天才のシロなのだから。

『じゃあ、魔の者のジャンヌが、何でアナスタシアを手伝ってたんだ?』

『それは、命を助けられた恩人だからじゃないですか?』

『成程』

 俺は、素直に納得する。

『そして、この戦いは既に終わってます!』

 シロが続けて、まさかの言葉を口にした。

『ん? どういう事だ?』

 俺は、無言でシロを見やる。

『ご主人様が、ジャンヌさんを、オリ姫モーニングスターで ぶっ飛ばした時点で、この戦いは既に終わってるんですよ!』

『何で?』

『どうやら、メフィストは、ルシファーを召喚するのに、どうしてもジャンヌさんの体を必要としてたみたいですので!』

『ダンジョンから生まれてくる魔王の体を、ルシファーの器にするんじゃなかったのか?』

『この第35階層では、ルシファーを召喚する為の魔力量が圧倒的に足りなかったんでしょう。
 この世界では、やはり黒死病クラスが限界だったのかもしれません。
 やはり、【静寂の森】と、【漆黒の森】がある南の大陸というか、ブリトニーお姉様の居る世界とは、魔力量に相当な差が有ったと思われます!
 異世界を跨ぐ召喚には、相当量の魔力が必要ですので!』

『漆黒の森は知ってるが、静寂の森?』

 なんか、知らない単語が出てきた。

『南の大陸の上にある西の大陸にある巨大な森です!
 そこから、大量の聖属性の魔素を排出してるんです!
 因みに、西の大陸には、地球から天使もたくさん召喚されてますね!』

 シロが、ついでのウンチクを教えてくれた。

『西の大陸の【静寂の森】が聖属性の魔素を排出してるという事は、もしかして、南の大陸の【漆黒の森】は、闇属性の魔素を排出してると?』

『その通り! 因みに、静寂の森を管理してるのはエルフで、漆黒の森を管理してるのは、ダークエルフです!』

『確かに、漆黒の森の女王のガブリエルって、ダークエルフだもんな……』

『そうです! その大陸中に闇の魔素が溢れてる南の大陸でも、ベルゼブブ以上の悪魔を召喚する事が出来なかったんです!
 それより、魔素量が少ない第35階層で、ベルゼブブ以上の大物。悪魔の王ルシファーを召喚するには、余程、ルシファーに合った器が必要だったと思われます!』

『このダンジョンで生まれる予定だった、魔王では、ルシファーの器は務まらなかったと?』

『そういう事です!』

 シロは、大きく頷いた。

『という事は、ジャンヌを吹っ飛ばした俺のせいで、もう戦いの決着はついてたという事なのか?』

『ですね! この戦いの最大のキモは、悪魔王ルシファーを、この世界に絶対に召喚させない事でしたから!』

『じゃあ、俺のお陰?』

『そうです! 流石は、僕のご主人様です!
 ご主人様は、戦いが始まる前に、既に、戦いを終わらせてたんです!
 これぞ、孫子の兵法!
 勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。です!』

 歴史好きのシロが何か言ったが、難し過ぎたのでスルーした。

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