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431. 本筋

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 セドリック一行が、ダンジョン入口の階段を下りきり、石畳の大広間に到着すると、目をキョトンとさせた、メフィスト・フェレスと、魔女マーリン、それから黒死病が立っていた。

「な……何で、ジャンヌ・ダルクが居ないんですか!」

 メフィストが、発狂気味に聞いてくる。

「何でったって、俺がアイツの事、嫌いだから!」

「というか、貴方、誰ですか!」

「聞いて驚け! 俺様は、ハーレム勇者になる予定のセドリック様だ!」

「ぷっ! ハーレム勇者になる予定って……」

 アホな格好をしてるメフィストに、鼻で笑われた。

「兎に角、実力で、ジャンヌをぶっ飛ばしてやったんだよ!」

「貴方に、ジャンヌをやれる程の実力は無いと思いますが?」

 どうやら、完全に、メフィストは、セドリックの実力を見誤っているようだ。

 本来、メフィストの実力なら、【超隠蔽】スキルによって隠された、セドリックの本当の実力が分かる筈だが、
 今回は、シロが細工して、嘘のステータスしか見えないようにしてたりする。

 これも、全て、4つ神眼で為せる技。

 神の目が、悪魔ごときの術に破れる筈ないのである。

 そんでもって、メフィストが見てるセドリックのステータス。

 種族: パーフェクトレッサーバンパイア lv.1
 職業: 勇者
 称号: 不死者、思い出すのが遅すぎた男、骨なのに勇者、運の無い男、陰陽を極めた骨、チ〇コの皮を切り過ぎた男
 スキル: 超隠蔽、不死、鑑定
 魔法: 第2階位光属性魔法。第2階位火属性魔法。第2階位闇属性魔法。第2階位風属性魔法。
 力 55
 運 50
 HP 120
 MP 120

 レベル1の、弱っちいパーフェクトレッサーバンパイアだったりする。

 勿論、シロの本来のステータスも、メフィスト達には見えてない。

 というか、この世界の住人には、シロのステータスが見える者など存在しない。

 現在、シロのステータスを見る事ができる奴らは、南の大陸の最強の一角と呼ばれる者達や、異界の悪魔の中でも、七つの大罪悪魔レベル。
 後、ブリトニーやアンさんレベルの強者達だけだろう。

 シロは既に、第35階層では最強強者なのである。

「お前、俺様のステータスを鑑定しただろ!
 しかし、これは、俺本来のステータスじゃないんだよ!」

「ご主人様、それ、言っちゃ駄目な奴ですよ!」

 シロが、すかさず注意してくる。

「うるせーやい! 俺は舐められるのが嫌いなんだ!
 それも、カボチャパンツに、白いタイツ履いてる奴なんかに、馬鹿にされたくないんだよ!
 さあ、見よ! 俺の本来のステータスを!」

 俺は、【超隠蔽】スキルを解除して、本来のステータスを見せてやる。

「何が変わったんですか?」

 アホな格好をしているメフィストが、首を捻る。

「だから、俺様は、パーフェクトバンパイア大公爵になってるだろ!」

「何も、変わってませんよ?」

「嘘だろ!」

 俺は、自分のステータスを確認する。

「何言ってんだ! パーフェクトバンパイア大公爵に変わってるじゃねーかよ!」

「えぇぇ~?」

 メフィストが、ちょっと引き気味に、やばい人を見るような目をして、俺を見る。

 そう、俺には、自分のステータスが、ちゃんとパーフェクトバンパイア大公爵に見えてるのだ。

 しかしながら、シロの細工のせいで、メフィスト達には、俺が、パーフェクトレッサーバンパイアにしか見えないのである。

『敵を欺くには、まず味方から』

 シロは、小声で、ポツリと呟く。
 しかし傍目では、ただ、セドリックがアホな人にしか見えなかった。

「それで、ジャンヌさんは、どうしちゃったんですか?
 私達には、ジャンヌさんが、とても必要なんですけど!」

 メフィストが、俺の話を無かった事にして、改めて、ジャンヌの所在を尋ねてきた。

「だから、俺が、ぶっ飛ばしたって言ってるだろ!」

「ハイハイ。貴方ごときのレッサーバンパイアに、ジャンヌさんをぶっ飛ばせる訳ないでしょ!」

「この野郎! 拳で分からせてやる!」

「嫌ですね! これだからアホな人間は、私が貴方ごときに、本気で戦う訳ないでしょ!
 黒死病さん、魔笛をお願いします!」

「承知しました! ピロロロロ~♪」

 ピエロの格好をした黒死病が、踊りながら魔笛を吹く。

 しかしながら、何も起こらない。

「馬鹿め! 俺達は、もう既に、この耳栓で、魔笛対策をしてるんだよ!」

 俺は、鼻高々に、メフィストに言い放ってやる。

「成程、何故、魔笛の事を知ってたかは謎ですけど……魔笛対策してたんですね……。
 だけど、貴方だけ、耳栓付けてないの気付いてますか?」

 俺は、メフィストに言われて、耳に手をやる。

 しかし、そこには耳栓が無かった。

「ご主人様! さっき、耳が痒いって、耳栓とってましたよ!」

 シロが、すかさず指摘する。

「そうだった? というか、それを何故言わない!」

 俺は、恥ずかしさに耐えれず、真っ赤になってしまう。

「えっ? そもそも、ご主人様、魔笛に耐性が有るじゃないですか!
 メフィスト達と話す人が必要だと思って、敢えて、ご主人様に言わなかっただけですけど?」

「でも、魔笛を聞くと、心地よくなって眠くなっちゃうじゃねーかよ!」

「流石のご主人様でも、人と話しながら眠りませんよね?」

「だな!」

 俺は、シロに正論を言われて、思わず納得した。

「というか、お前、普通に俺と会話してるじゃねーか!
 耳栓付けてないと、骨伝導トランシーバ出来なかったんじゃねーかよ?」

「僕は、ご主人様の頭を読んで会話してるんです!
 僕も、耳栓付けてるから、メフィスト達が何言ってるか分かりませんよ!」

「成程!」

 俺は、やっと気付いた。

 何故、アナスタシアと魔女マーリンが、話をしないのか?

 お互い顔見知りだから、このような戦い前には、普通、罵り合うものだが、二人は一切喋っていないのだ。

 ただ、アナスタシアが怖い顔をして、魔女マーリンを睨んでいるだけ。

 そんなアナスタシアの事を、魔女マーリンは顔を合わせないように、灰色のローブのフードを深く被って、何か思う事でもあるのか、顔を伏せるのだった。

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