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425. 神託
しおりを挟む俺は、強調されたシロのサクランボを、手のひらをパーにして、手が見えなくなるほどの高速で擦ってやる。
多分、服を着てなかったら、薄桜色のサクランボが焦げ茶になってしまう程の勢いだ。
「イヤン!」
シロが、幼女の癖して、女の声を出した。
「弄って欲しかったんじゃないのか?」
「違いますよ! 褒めて欲しかったんですよ!」
「頭を撫でて欲しかったという事か?」
「そうです!」
シロは、何故かプンスカ怒っている。
「サクランボを、たくさん撫でてやっただろ!」
「ご主人様、こんな大勢の人前で、よくそんな鬼畜な事が出来ますよね!
周りにいる獣人達の顔、見えます?」
俺が、シロから目線を離して振り向くと、獣人達が、今にも飛び掛りそうな勢いで、俺を睨んできていた。
「これ、シロの信者?」
「ケンジが布教の為に売ってる、白蜘蛛ネックレスを、みんな付けてるから信者ぽいですね……」
なんか、ケンジが大人しいと思ってたら、獣人達に、白蜘蛛ネックレスを売るのに大忙しだったみたいだ。
鑑定で、獣人達が装備してる白蜘蛛ネックレスを見てみると、ヤバいくらいの付与魔法が施されてる一品だった。
「アレ、もしかして、シロが作ってるのか?」
「ケンジにお願いされたから、一個3万ゴルの格安で作ってますよ!
まあ、本来の値段は、800万ゴルくらいすると思いますけど……」
確かに、白蜘蛛ネックレスには、HP、MP回復速度2倍、攻撃力、防御力1.5倍、麻痺耐性、毒耐性、運2倍といたせり尽くせりの機能が付与されている。
「だけど、ケンジの奴、その格安の一個3万ゴルの白蜘蛛ネックレスを、一個5000ゴルで、売ってるんだけど……」
「僕もケンジも赤字ですね……」
「お前ら、そんなに白蜘蛛教を布教したいのかよ!」
ハッキリ言うと、白蜘蛛ネックレス欲しさの為に、シロ教に入信する奴が出てきてもおかしくないレベルだ。
だって、本来なら800万ゴルの魔道具を、たったの5000ゴルで買えてしまうんだよ!
「神を越える為には、神以上の信者が必要ですから!」
「お前……一体、何を狙ってるんだ……」
なんか、急に、シロが怖くなってきた。
「これは、アラクネという種族の習性ですね!
アラクネという種族は、どうやら神にギャフンと言わしたい種族のようですから!」
この世界は、種族に相当、性格を引っ張られる世界である。
俺も、スケルトン時代は、脳ミソやたらと食べたくなったし、リッチー時代は、金に執着した。
バンパイアになったら血を飲みたくなったし、今、シロに起こってる事は、多分、それと一緒の事なのだろう。
まあ、シロをアラクネに進化させたのは俺だから、神超えとか、罰当たりな事をシロが目指すのは、半分、俺のせいの気もするけど……。
ーーー
「それじゃあ、この耳栓を付け下さい!」
シロは、アナスタシアとラインハルトとケンジとカール大帝に、ハーメルンの笛吹き男対策の耳栓を渡す。
「何故、耳栓?」
これから起こる事を知らないアナスタシアが、首を傾げる。
「これを付けないと、ハーメルンの笛吹き男の魔笛に魅了されて、操られちゃうんです!
実際、アナスタシアさん達、為す術なく二回死んでますから!」
「まさか……」
精神耐性に絶対の自信を持っていたのか、アナスタシアが絶句している。
多分、今まで、精神攻撃を受けても、勇者補正で、全て跳ね返せていたのだろう。
まあ、実際は、二回死んでるんだけど。
「これから戦う敵は、それ程の敵という事です!」
「異界の悪魔とは、それ程の存在なの……」
「当たり前です! お父さんと同じ異界の悪魔が、弱い筈ないんです!
お父さん程じゃないですけどね!」
ファザコンのシロが、敵は強いと断言した。
シロが言うなら間違いない。
多分、神眼で、相手の力量を完全に分析出来てる筈だから。
まあ、アナスタシア達が二度も殺されてる時点で、滅茶苦茶強いという事は、分かってるんだけど。
「シロ様! 私達は!」
完全にシロ教の信者になってる獣人達が、シロにお伺いを立てる。
「君達は、ここで留守番ね!多分、付いて来ても足手まといになっちゃうから!
というか、今すぐ、ここから離れて!
500メートル位!
じゃないと、魔笛の餌食になっちゃうからね!」
シロは、獣人達に指示を出す。
獣人達は、シロと一緒に戦うと言うと思ったが、彼らの神であるシロの命令は絶対のようで、従順に従うのであった。
「おぉぉーー! 我が神シロ様ーー!信者に神託を下す姿、惚れ惚れ致しまするーー!」
ケンジが、シロに土下座して、崇め奉る。
それを見て、信者の獣人達も、シロに土下座して平伏するのだった。
「お前の命令、神託だってよ……」
「ただのお願いだったんですけど……」
シロは、少しだけ恐縮した。
ーーー
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