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376. チンカス
しおりを挟むそしてこちらは、激戦地となると思われるノルマンディー戦線。
サセックス連邦側の戦力は、ウィリアム1世を将軍に、軍師はシロの弟子のセーラ。
それと、サS〇X騎士団の精鋭No.1からNo.40まで。
勿論、上位ナンバーズなので領兵を持っており、その数合わせて3万人。
加えてノルマンディー公国の正規の兵士3万人と併せて、6万人の大世帯である。
ゲクランには、たった50人しか兵を与えず、不公平じゃないかと思うけど。
まあ、かく言うセドリックも、半月騎士団の下位メンバー50人しか与えられなかったんだけどね。
しかも、結局は、全員、サセックス領の海側の防衛に回されてしまって、セドリック1人で、フランク軍5万人の相手をしないといけなくなってたりする。
対する、神聖ローマ帝国側の兵士は10万人。
しかも、直接、始祖から血を分け与えて貰った公爵クラスがうじゃうじゃ居る。
東側の異民族を抑えているのも、高位のバンパイアがうじゃうじゃ居る神聖ローマ帝国の武力が際立っている事を意味するのだ。
「勝てるのか……」
神聖ローマ帝国の洗練された陣形、練度を、城壁高速道路の上から、じっと見ていたウィリアム1世が呟く。
「バッキャロー! 勝てるか? じゃなくて勝つんだよー!」
バキッ!
作業用モビルアーマーに乗って、気が大きくなってるセーラが、弱気になっていたウィリアム1世をぶっ飛ばす。
「親父にもぶたれた事ないのに」
「何、何処かで聞いた事あるような、ナヨいこと言ってるんだ!
チ〇コが付いてる男なら、ビシッとしやがれ!」
「だけど、セーラさん! 相手はあの最強 神聖ローマ帝国なんですよ!」
「それがどうした! 姐さんの言葉は絶対なんだよ!
姐さんが出来ると言ったら、絶対出来る!
後は、あたし達が知恵を絞って、なんとかしてみせるんだよ!」
「シロさんから、何か、起死回生の作戦とか授かってないんですか?」
ウィリアムは恐る恐る、モビルアーマーに乗って気が大きくなってるセーラに質問する。
「お前、ここで絞め殺されてーのか!
言っただろ! 自分達の知恵で、この窮地を切り抜けてみせるんだよ!
姐さんの仕事は、私達を育てて、場を整えるだけ!
私は、姐さんに習った戦術を駆使して、敵をぶっ殺すだけ!
そして、お前は、堂々と味方兵士の前に立って、鼓舞するのが仕事なんだよ!」
「俺の仕事って、それだけ?」
バキッ!
「バッキャロー! お前は、まだ、チンカス以下の役立たずなんだよ!
だから、私とサS〇X騎士団の上位ナンバーズが付いてるの!
ゲクランさんを、見てみろよ!
姐さんに信用されてるから、軍師も無しで、サS〇X騎士団より数段劣る半月騎士団50人だけしか与えられなかったんだぞ!
そんだけ、姐さんは、ゲクランさんを信頼してるんだよ!」
セーラは、ウィリアム1世をぶっ飛ばして、熱く語る。
「そうなのか……俺は、ゲクランがブサメンだから、ただの嫌がらせだと思ってた……」
打たれ強いウィリアム1世は、頬を擦りながら立ち上がる。
「バッキャロー! 姐さんは、人の容姿なんか気にしないんだよ!
出来る奴は評価する!
だから、私やハイジやペーターとか、ただの田舎者の娘や少年を、仕事の出来だけを評価して引き上げる!
私からしたら、お前は恵まれてるんだよ!
まだ、実績も何も残してないのに、ノルマンディー公国の王様に抜擢されてるんだから!」
「それは、俺が決める事では……」
ウィリアム1世は、申し訳無さげに答える。
「姐さんは、お前のポテンシャルを信じてるんだよ!
姐さんは、見る目があるんだ!
実力がある癖にグジグジしてる若様に心酔してるのも、若様に心底期待してるから!
そしてお前の事も、若様同様、姐さんは期待しているんだよ!」
「どうして、そこまで……」
「姐さんは、この世界のパラレルワールドでの、お前の事を評価してる。
そして、この私も、姐さんの歴史の授業で習って、パラレルワールドでのお前の凄さを分かっている」
「パラレルワールド?」
ウィリアムは、聞き慣れない言葉に頭を捻る。
「この世界と表裏一体、裏の世界と言った所だ!
分かんなかったら、スマホで調べろ!」
「スマホ?」
「兎に角、パラレルワールドのお前は、ブリテン島を征服してノルマンディー王朝を築き、世界を股にかけるイギリス連邦の礎を築いた、征服王ウィリアム1世なんだよ!」
「ブリテン島を征服……俺は、そんな凄い男だったのか?」
「そうだ。チンカス! お前は、ブリテン島を支配し、北アメリカ大陸と、アフリカ大陸の一部、アジアのインドやオセアニア大陸を植民地にしたイギリス連邦の基礎を作った最初の王様なんだよ!」
「魔王が支配するという暗黒大陸アメリカまで、支配してたと言うのか……」
「パラレルワールドのアメリカには魔王居ないけど……確かに、イギリス連邦は、北アメリカ大陸の大部分を植民地にしていたぞ!」
「お……俺は、それ程の男だったのか……」
ウィリアムは、自分自身に驚愕して、震えている。
まだ、この世界のウィリアムは、何も成し遂げていないのだけど。
「そうだとも! そして、天才軍師のこの私が、お前の本来のポテンシャルを引き出す手伝いをするように、姐さんに仰せつかったんだ!
姐さんは、いつもグズグズしてる若様の相手で、とても忙しいからな!」
モビルアーマーに乗って、気が大きくなってるセーラは、師匠に似た無い胸を張り、何故か、モビルアーマーと共に、エッヘンとした。
ーーー
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