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363. ひよどりごえ

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「ブルターニュ公爵発見! 部隊現在地から、北東30メートル!
 最重要案件、絶対に暗殺せよ!」

 シロが、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に、魔道スマホで命令する。

「最重要案件だと?」

 俺は、気になり質問する。

「フランク王国から、割譲する予定の領地ですので!
 丁度、ブルターニュ領は、ノルマンディー公国の真下の土地なので、必ず欲しいんです!」

「なるほど。割譲するに当たって、領主が死んでた方が都合がいいと!」

「そういう事です!」

 シロは、どこまでも用意周到だ。
 もう、戦争後の事まで考えている。

「しかし、ブルターニュ公爵って、ドレークと同じバンパイア公爵だろ?
 ビチ糞トーマス達だけで、本当に大丈夫なのか?」

「同じ公爵でも、ドレークは、歴史に名を残したビックネームですので!格が違いますよ!」

「確かに、吸血鬼ドラキュラのモデルで、ペンシルバニアの串刺し公ヴラド・ツェペシュと、大海賊のフランシス・ドレークだったな……」

「バンパイア公爵の中でも、戦闘特化の異端児ですから!」

 歴史偉人好きのシロが、嫌いである筈のドレークを、激ホメする。

「確かに、地球の有名な偉人 2人が、実は同一人物だったって話だからな……。
 しかも、どちらもドラコの異名を持ってるし。
 ブリタニアのペンドラゴン家に仕えるのは、最早、運命だったのだろうな!」

 とか、大好きな歴史話をしてるうちに、

 ヒデブー!!

 ブルターニュ公爵は、見事、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に暗殺されたのだった。

「もう、殆ど終わったんじゃないのか?」

「まだです! まだ、相手の大将首を捕まえてません!」

「ビチ糞トーマス君達に、頼めば?」

「暗殺する訳ではないので、ビチ糞トーマス君達は、使えません!
 大将首を捕まえると同時に、ビチ糞トーマス君達が身バレしちゃいますし!
 ご主人様、忍者は、身バレが一番怖いんですよ!」

 シロに言われて気付いたが、確かに、ビチ糞トーマス君達は、先程から誰にもバレないように、要人を暗殺していたのだ。

「じゃあ、どうするんだよ!」

「どうやら、動いてる人物が居るようですよ!」

 シロが指差す方向を見ると、確かに、混戦から離れて、別行動してるノルマンディー公国の部隊が見える。

「ギヨームの副官だった、ハゲか?」

「ですね! そして、今まであまり重要人物じゃないと思って鑑定してなかったんですが、あの人、超重要人物ですよ!」

「何だと!誰だよ!」

 歴史好きの俺は、メッチャ反応する。

「あの人、フランス100年戦争の時に大活躍した、英雄ゲクランですよ!」

 シロが、衝撃事実を、俺に伝えた。

「嘘だろ! アイツがブサメンのゲクラン?
 ブサメンだけど、戦争だけは天才的に上手かったという!
 まあ、 確かに、ブサイクだから、ゲクランに間違いないけど。
 ていうか、何でゲクラン程の超大物が、未だにノルマンディーの田舎で埋もれてたんだよ!」

「まあ、間違いなくバンパイアのせいですね!
 ヨーロッパの貴族の3分の1は、バンパイアのようですし、実際、ブリテン王国も、未だにアーサー王の国のままですから!」

 シロが、まず間違いない推理を披露する。

「バンパイアが絡んでるせいで、ここまで地球の歴史と変わるのかよ!」

「そのお陰で、英雄を芋づる式でゲット出来てますけど!」

 シロは、とっても嬉しそうだ。
 俺的にも、英雄ゲクランは欲しい部類の人物だ。

 確かに、今までのハゲの行動を見てても、行動に無駄が無かった。

 ギヨームを人質にした時も、直ぐに状況を見極め、身代金とノルマンディー半島の割譲を、ノルマンディー王に認めさせて戻ってきたし、
 先程のノルマンディー公国軍と、フランク王国軍が戦争を始める切っ掛けとなった、弓矢を放つタイミングも絶妙だった。

 そんでもって、今だ。

 ゲクラン率いる一団は、大外から回り込み、敵軍大将首が陣を敷いている背後から回り込んでるのだ。

「シロ! ゲクランを殺すなよ!」

 俺は、シロに命令する。

「分かってますよ! 大将首は間違いなくバンパイア公爵です!
 普通の人間であるゲクランが、どれだけ優秀な武将だったとしても、一騎当千の化け物には勝てませんから!」

 シロは、俺に返事をすると同時に、右手を上げる!

「源義経の鵯越(ひよどりごえ)の逆落(さかお)としです!
 この城壁を馬で駆け落ちれれば、この戦は、サセックス公国の勝利となるでしょう!
 さあ、半月騎士団! 今こそ、ブリトニー姉様の元で鍛えた修行の成果を見せる時なのです!」

 シロは、いつ用意したか知らないが、真っ白な白馬に跨り、8メートルあろう城壁の上から、垂直に馬で駆け落ちていった。

 そして、シロが駆け落ちると同時に、半月騎士団100名も、シロに続けとばかりに、8メートルの城壁を馬で駆け落ちていく。

「8メートルの城壁を馬で駆け落ちるって、普通無理だろ!
 ていうか、普通に正門から出て行ったら、良かったんじゃないのか!」

 俺は、誰も居なくなった城壁高速道路の上で、一人虚しく突っ込んだのだった。

 ーーー

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