上 下
362 / 568

362. 混戦

しおりを挟む
 
 軍師シロによる、完璧な策略により、ノルマンディー軍とフランク王国軍が、泥沼の戦いに陥ってしまっている。

「何で、こんなにグチャグチャな混戦になるんだ?」

 俺は、シロに質問する。

「敵と味方が近すぎたんですよ! だって、本当に真隣に居たから。
 本来なら、分が悪くなったら、撤退やら、白旗上げて負けを認めるとか、色々できるんですが、あまりに軍隊同士が混ざり合ってるので、撤退も降伏も、そもそも自分達が優勢かどうかも分かんなくなってるんですね!」

「ここからだと、結構、分かるんだけどな……」

 俺は、城壁高速道路の上から、戦況を眺めながら話す。

「ですね! なので、ここから指示を出します!」

 シロは真っ赤な副眼を開け、魔道スマホを取り出す。

「誰に、指示を出すんだ?」

「ビチ糞トーマス君率いる、忍者部隊にですよ!
 それで、味方の不穏分子を戦争中に暗殺しちゃいます!」

「味方を暗殺するって……お前、滅茶苦茶だな……」

「絶好のチャンスですので!」

 シロは、城壁高速道路の上から、千里眼と鑑定眼を駆使して、今後、ノルマンディー公国の敵対すると思われる貴族を、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に連絡していく。

「ブルー、北北東に10メートルに行った所に、ハフマン男爵を発見!
 至急暗殺せよ!」

「ラジャ!」

「ピンク、南南西12メートル、ヨーゼフ伯爵発見、至急暗殺せよ!」

「ラジャ!」

「イエロー、東に2メートル、すぐ近くに、マルクール子爵発見! 直ぐ暗殺せよ!」

「ラジャ!」

 ビチ糞トーマス君率いる、忍者部隊は、次々と味方ノルマンディー貴族を暗殺していく。

「オイオイ! そんなに指揮官クラスの貴族をたくさん殺して、ノルマンディー軍の指揮系統は大丈夫なのかよ!」

「今更、指揮も糞もないですよ!
 そもそも混戦過ぎて、指揮なんて出来る状況じゃないですから!
 それより、厄介なのは、フランク王国の貴族連中ですね!
 貴族の中に、高位のバンパイアが、結構、混じってるみたいです!」

 俺も、高い所から見て、薄々気付いていた。
 どう考えても、人間では有り得ない戦闘力を有してるフランク兵が何人が居るのだ。

「で、どうするんだ? 俺達が出張って殺すか?
 それとも、半月騎士団を突入させるか?」

 俺は、シロに、どうするか聞く。

「この混戦で、半月騎士団を出撃させると、半月騎士団は不死ではないので、確実に高位のバンパイア貴族に、何人か殺されちゃいますね!」

「それは、そうだろな! 奴ら、相当強いぞ!」

 俺も、シロの意見に同意する。

「アッ! 丁度、不穏分子貴族の駆除が全て終わったようなので、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に、なんとかしてもらいましょう!」

「大丈夫なのかよ?」

 俺は、とても心配する。
 ここから見てても、バンパイア貴族は、結構、強そうなのだ。

「大丈夫でしょう! だって、ビチ糞トーマス君達は、元々バチカンのエリートバンパイアハンターですから、バンパイア駆除は得意中の得意の筈です!」

 そう言えば、そうだった。
 最近、忍者ぽい事ばかりやってたので、ビチ糞トーマス君達が、バチカンのエリートバンパイアハンターだった事を失念してしまっていた。

 そして、シロは、ロックオンしたバンパイア貴族の場所を、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に伝える。

「レッド、北西15メートルにバンパイア侯爵発見!
 忍者部隊を率いて、至急、駆除せよ!」

「「ラジャ!」」

 ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊が、バンパイア侯爵の元に集まる。

 そして、

 ドプシュッーー!!

 フランク王国のバンパイア侯爵は、一瞬にして、血を流し爆発して消滅してしまった。

「今、何したんだ? バンパイア侯爵が爆発したと思ったら、飛び散った血が蒸発したように見えたんだが?」

「聖水入りの銀の玉を、100発程度、一気に撃ち込んだようですね!」

「100発も……」

「彼らは、バンパイアを狩るプロですから、バンパイアを狩らせたら右に出る者は居ないんです!」

 シロが、何故か、エッヘンと、チッパイを張る。

「アイツら、俺も簡単に殺せるんじゃないのか?
 俺、いつもビチ糞トーマス君を見る度に、睨まれてるし……」

「ご主人様を殺すのは無理ですね!勇者で光属性持ちですから、聖水弾丸撃ち込まれたら、逆に元気になっちゃいますよ!
 それから、ご主人様が睨まれるのは、ご主人様とミレーネさんが、いつもビチ糞トーマス君の前で、イチャイチャしてるからだと思います!」

 シロが、俺も気付いてた事を指摘してくる。

「確かに。というか、ミレーネがビチ糞トーマス君を見つけると近付いてくるんだよ!」

「多分、ミレーネさんも、ビチ糞トーマス君に付き纏われて、面倒臭いんでしょう!
 今度、僕がピンクに言っときますよ!
 ビチ糞トーマス君が、ミレーネさんをストーカーしてキモイと!」

「ピンクに言って、何とかなるのか?」

 俺は意味が分からず、シロに質問する。

「何とかなります!」

「そういうものなのか?」

「そういうものです!」

 ーーー

 ここまで読んで下さりありがとうございます。
 面白かったら、お気に入りにいれてね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

burazu
ファンタジー
理学療法士として病院に勤めていた宮下祐一はある日の仕事帰りに誤ってマンホールより落下するが、マンホールの先はなんと異世界であり、異世界で出会った聖女見習のミミと出会い、道行く怪我人を彼女の治癒魔法で救うが、後遺症が残ってしまう、その時祐一(ユーイチ)はなんとかリハビリができればと考えるが。その時彼のスキルである最適化≪リハビリ≫が開花し後遺症を治してしまう。 今後の生活の為ユーイチとミミは治療とリハビリの診療所を開く決意をする。 この作品は小説家になろうさん、エブリスタさんでも公開しています。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした

メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました! 1巻 2020年9月20日〜 2巻 2021年10月20日〜 3巻 2022年6月22日〜 これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます! 発売日に関しましては9月下旬頃になります。 題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。 旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~ なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。 ────────────────────────────  主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。  とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。  これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。 ※カクヨム、なろうでも投稿しています。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~

クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。 だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。 リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。 だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。 あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。 そして身体の所有権が俺に移る。 リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。 よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。 お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。 お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう! 味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。 絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ! そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!

異世界転生したので、のんびり冒険したい!

藤なごみ
ファンタジー
アラサーのサラリーマンのサトーは、仕事帰りに道端にいた白い子犬を撫でていた所、事故に巻き込まれてしまい死んでしまった。 実は神様の眷属だった白い子犬にサトーの魂を神様の所に連れて行かれた事により、現世からの輪廻から外れてしまう。 そこで神様からお詫びとして異世界転生を進められ、異世界で生きて行く事になる。 異世界で冒険者をする事になったサトーだか、冒険者登録する前に王族を助けた事により、本人の意図とは関係なく様々な事件に巻き込まれていく。 貴族のしがらみに加えて、異世界を股にかける犯罪組織にも顔を覚えられ、悪戦苦闘する日々。 ちょっとチート気味な仲間に囲まれながらも、チームの頭脳としてサトーは事件に立ち向かって行きます。 いつか訪れるだろうのんびりと冒険をする事が出来る日々を目指して! ……何時になったらのんびり冒険できるのかな? 小説家になろう様とカクヨム様にも投稿しました(20220930)

【完結】死ぬとレアアイテムを落とす『ドロップ奴隷』としてパーティーに帯同させられ都合よく何度も殺された俺は、『無痛スキル』を獲得し、覚醒する

Saida
ファンタジー
(こちらの不手際で、コメント欄にネタバレ防止のロックがされていない感想がございます。 まだ本編を読まれておられない方でネタバレが気になる方は、コメント欄を先に読まれないようお願い致します。) 少年が育った村では、一人前の大人になるための通過儀礼があった。 それは、神から「スキル」を与えられること。 「神からのお告げ」を夢で受けた少年は、とうとう自分にもその番が回って来たと喜び、教会で成人の儀を、そしてスキル判定を行ってもらう。 少年が授かっていたスキルの名は「レアドロッパー」。 しかしあまりにも珍しいスキルだったらしく、辞典にもそのスキルの詳細が書かれていない。 レアスキルだったことに喜ぶ少年だったが、彼の親代わりである兄、タスラの表情は暗い。 その夜、タスラはとんでもない話を少年にし始めた。 「お前のそのスキルは、冒険者に向いていない」 「本国からの迎えが来る前に、逃げろ」 村で新たに成人になったものが出ると、教会から本国に手紙が送られ、数日中に迎えが来る。 スキル覚醒した者に冒険者としての資格を与え、ダンジョンを開拓したり、魔物から国を守ったりする仕事を与えるためだ。 少年も子供の頃から、国の一員として務めを果たし、冒険者として名を上げることを夢に見てきた。 しかし信頼する兄は、それを拒み、逃亡する国の反逆者になれという。 当然、少年は納得がいかない。 兄と言い争っていると、家の扉をノックする音が聞こえてくる。 「嘘だろ……成人の儀を行ったのは今日の朝のことだぞ……」 見たことのない剣幕で「隠れろ」とタスラに命令された少年は、しぶしぶ戸棚に身を隠す。 家の扉を蹴破るようにして入ってきたのは、本国から少年を迎えに来た役人。 少年の居場所を尋ねられたタスラは、「ここにはいない」「どこかへ行ってしまった」と繰り返す。 このままでは夢にまで見た冒険者になる資格を失い、逃亡者として国に指名手配を受けることになるのではと少年は恐れ、戸棚から姿を現す。 それを見て役人は、躊躇なく剣を抜き、タスラのことを斬る。 「少年よ、安心しなさい。彼は私たちの仕事を邪魔したから、ちょっと大人しくしておいてもらうだけだ。もちろん後で治療魔法をかけておくし、命まで奪いはしないよ」と役人は、少年に微笑んで言う。 「分かりました」と追従笑いを浮かべた少年の胸には、急速に、悪い予感が膨らむ。 そして彼の予感は当たった。 少年の人生は、地獄の日々に姿を変える。 全ては授かった希少スキル、「レアドロッパー」のせいで。

処理中です...