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362. 混戦
しおりを挟む軍師シロによる、完璧な策略により、ノルマンディー軍とフランク王国軍が、泥沼の戦いに陥ってしまっている。
「何で、こんなにグチャグチャな混戦になるんだ?」
俺は、シロに質問する。
「敵と味方が近すぎたんですよ! だって、本当に真隣に居たから。
本来なら、分が悪くなったら、撤退やら、白旗上げて負けを認めるとか、色々できるんですが、あまりに軍隊同士が混ざり合ってるので、撤退も降伏も、そもそも自分達が優勢かどうかも分かんなくなってるんですね!」
「ここからだと、結構、分かるんだけどな……」
俺は、城壁高速道路の上から、戦況を眺めながら話す。
「ですね! なので、ここから指示を出します!」
シロは真っ赤な副眼を開け、魔道スマホを取り出す。
「誰に、指示を出すんだ?」
「ビチ糞トーマス君率いる、忍者部隊にですよ!
それで、味方の不穏分子を戦争中に暗殺しちゃいます!」
「味方を暗殺するって……お前、滅茶苦茶だな……」
「絶好のチャンスですので!」
シロは、城壁高速道路の上から、千里眼と鑑定眼を駆使して、今後、ノルマンディー公国の敵対すると思われる貴族を、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に連絡していく。
「ブルー、北北東に10メートルに行った所に、ハフマン男爵を発見!
至急暗殺せよ!」
「ラジャ!」
「ピンク、南南西12メートル、ヨーゼフ伯爵発見、至急暗殺せよ!」
「ラジャ!」
「イエロー、東に2メートル、すぐ近くに、マルクール子爵発見! 直ぐ暗殺せよ!」
「ラジャ!」
ビチ糞トーマス君率いる、忍者部隊は、次々と味方ノルマンディー貴族を暗殺していく。
「オイオイ! そんなに指揮官クラスの貴族をたくさん殺して、ノルマンディー軍の指揮系統は大丈夫なのかよ!」
「今更、指揮も糞もないですよ!
そもそも混戦過ぎて、指揮なんて出来る状況じゃないですから!
それより、厄介なのは、フランク王国の貴族連中ですね!
貴族の中に、高位のバンパイアが、結構、混じってるみたいです!」
俺も、高い所から見て、薄々気付いていた。
どう考えても、人間では有り得ない戦闘力を有してるフランク兵が何人が居るのだ。
「で、どうするんだ? 俺達が出張って殺すか?
それとも、半月騎士団を突入させるか?」
俺は、シロに、どうするか聞く。
「この混戦で、半月騎士団を出撃させると、半月騎士団は不死ではないので、確実に高位のバンパイア貴族に、何人か殺されちゃいますね!」
「それは、そうだろな! 奴ら、相当強いぞ!」
俺も、シロの意見に同意する。
「アッ! 丁度、不穏分子貴族の駆除が全て終わったようなので、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に、なんとかしてもらいましょう!」
「大丈夫なのかよ?」
俺は、とても心配する。
ここから見てても、バンパイア貴族は、結構、強そうなのだ。
「大丈夫でしょう! だって、ビチ糞トーマス君達は、元々バチカンのエリートバンパイアハンターですから、バンパイア駆除は得意中の得意の筈です!」
そう言えば、そうだった。
最近、忍者ぽい事ばかりやってたので、ビチ糞トーマス君達が、バチカンのエリートバンパイアハンターだった事を失念してしまっていた。
そして、シロは、ロックオンしたバンパイア貴族の場所を、ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊に伝える。
「レッド、北西15メートルにバンパイア侯爵発見!
忍者部隊を率いて、至急、駆除せよ!」
「「ラジャ!」」
ビチ糞トーマス君率いる忍者部隊が、バンパイア侯爵の元に集まる。
そして、
ドプシュッーー!!
フランク王国のバンパイア侯爵は、一瞬にして、血を流し爆発して消滅してしまった。
「今、何したんだ? バンパイア侯爵が爆発したと思ったら、飛び散った血が蒸発したように見えたんだが?」
「聖水入りの銀の玉を、100発程度、一気に撃ち込んだようですね!」
「100発も……」
「彼らは、バンパイアを狩るプロですから、バンパイアを狩らせたら右に出る者は居ないんです!」
シロが、何故か、エッヘンと、チッパイを張る。
「アイツら、俺も簡単に殺せるんじゃないのか?
俺、いつもビチ糞トーマス君を見る度に、睨まれてるし……」
「ご主人様を殺すのは無理ですね!勇者で光属性持ちですから、聖水弾丸撃ち込まれたら、逆に元気になっちゃいますよ!
それから、ご主人様が睨まれるのは、ご主人様とミレーネさんが、いつもビチ糞トーマス君の前で、イチャイチャしてるからだと思います!」
シロが、俺も気付いてた事を指摘してくる。
「確かに。というか、ミレーネがビチ糞トーマス君を見つけると近付いてくるんだよ!」
「多分、ミレーネさんも、ビチ糞トーマス君に付き纏われて、面倒臭いんでしょう!
今度、僕がピンクに言っときますよ!
ビチ糞トーマス君が、ミレーネさんをストーカーしてキモイと!」
「ピンクに言って、何とかなるのか?」
俺は意味が分からず、シロに質問する。
「何とかなります!」
「そういうものなのか?」
「そういうものです!」
ーーー
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