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327. トーマス君

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「俺だよ! 俺!」

 バチカンのバンパイアハンターは、ミレーネに思い出してもらおうと必死だ。

「だから、誰?」

「誰って、俺だよ!」

「名前も名乗ってないのに、誰だか分からないわ!」

「だから、俺だって!」

 どうやらバチカンのバンパイアハンターは、ミレーネ自らに、自分を思い出して欲しいらしい。

「拗らしてるな……」

「ハイ。感動物語が始まると思ってたんですけど、これはギャグ漫画にしかなりそうもありませんね……」

 シロも、珍しく俺に同意する。

「だから、俺だよ!」

「殺します!」

「待て待て待て! 何で、弟の俺を殺すんだよ!」

「私は孤児ですし、弟なんか居ませんし」

 ミレーネは、ハッキリと言い切った。

「やっぱり、オレオレ詐欺だったな!」

「ご主人様の推理が当たるなんて、世も末ですね!」

 シロの毒舌が炸裂する。

「お前、少しは褒めたらどうだ?」

「僕は、ご主人様のポテンシャルを信じてますので、これぐらいでは全然驚きません!」

「話が繋がってないんだけど?世も末だけど、ポテンシャルを信じてる?」

「兎に角、僕は、ご主人様を信じてますから、今は自由に生きていて下さい!」

 よく分からないが、シロお得意のディスり褒めは成立してるので、良しとする事にした。

 とか、話してる内にも、話は進んでいる。
 ミレーネは、腰から二丁拳銃を抜き、今、まさに、腹を下しているバチカンのバンパイアハンターを殺そうとしている。

「ミレーネ姉さん! まさか、弟の俺を殺す気かよ!」

「だから、私には弟なんか居ないし、貴方は誰?」

「本当に、俺の事を忘れてるのかよ!」

 バチカンのバンパイアハンターは、突然、服を脱ぎ出す。

「アイツ、相当ヤバイな……」

「ご主人様ほどじゃ、無いと思いますよ」

「オイオイ!アイツ、パンツまで脱ぎ出したぞ!」

「これは、ご主人様を抜きましたね!」

「な……何してるの!」

 ミレーネは、突然の事に、驚き戸惑っている。

「立派になっただろ! 昔、いつも孤児院の近くの川で水浴びしたよな!」

「アイツ、勃起したチ〇コを見せびらかしているぞ!」

「結構、自分で言うだけあって、大きいですね……」

「ほら、このお尻のアザ!」

 ナニがデカいバンパイアハンターの男は、お尻を突き出し、ハート型のアザを見せた。

「ありがちだな。あのハート型のアザを見せて、ミレーネが気付くんだろ……。
 というか、アイツ、お尻にビチ糞が付いてるな……」

「臭いです。臭い設定だから、臭いんですかね?」

「ただ、普通に臭いだけだと思うぞ」

「僕的には、作者はこのシーンを書きたかったので、敢えて、あのバンパイアハンターが、腹を下してる設定にしたと思いますよ!」

 シロは、作者の心まで読めたようである。

「まさか、あのバンパイアハンターが、腹を下してたのは、このシーンの為の伏線だったのか!」

「違うんですか?」

「いや、そうだろう。作者は滅茶苦茶、細かい伏線張りをしてるんだけど、その殆どが全く気付いて貰えないと嘆いていたし……」

「作者と友達なんですか?」

「いや、違うけど、ただの想像!」

 てな、感じで、話は進む。

「もしかして、トーマス?」

「そうだよ! 姉さん!」

「というか、貴方、いつから私の弟になったの?」

「やだなー! 姉さん! 同じ孤児院出身者は、みんな姉弟みたいなものだろ!」

「そんなの知らないわよ?」

 ミレーネは、トーマス君を完全否定する。

 しかし、

「俺は、トーマス君が正しいと思う!」

 俺は、トーマス君と同じく、孤児院出身者として物申す。

 俺も、同じ孤児院出身のブルース兄を、本当の兄貴のように慕ってたし、ブルースも俺の事を、本当の弟のように接してくれた。
 ロリコンケンジだって、肌の色とか全く違うけど、俺の弟だ。

「始祖様……」

 ミレーネが、どうすればいいのかと、俺の顔を見てくる。

「アンタ誰?」

 そんなミレーネの視線を追ってきた、トーマス君が、俺に舐めた口を聞いてきた。

「死になさい!!」

 ズダダダダダダダダダーーン!

 トーマス君は、怒り狂ったミレーネの二丁拳銃に蜂の巣にされて死んでしまった。

「ご主人様! 勝手にトーマス君を殺した事にしないで下さい!
 生命力の強いダンピールなので、まだ、完全に死んで無いです!」

 シロは、急いで、トーマス君にエリクサーを振り掛ける。

「何で、姉さん……」

 さっきまで、死にかけてたトーマス君が、ミレーネに質問する。

「私は、始祖様に血を分け与えられた眷族なので、始祖を貶める者は、誰であろうと許しません!」

「始祖様?」

 トーマス君は、俺の顔をぼんやりと見る。
 そして、ハッ!としてから、地面に頭を擦り付け土下座した。

 よく分からないが、始祖を頂点にする血族は、始祖様が絶対らしい。

「俺は、お前の始祖様じゃないけど?」

 俺は、トーマス君を否定する。
 確かに、ミレーネの始祖ではあるが、トーマス君の始祖では無いのである。

「しかし、始祖様に連なるお方ですよね!
 始祖様の血を少しでも受け継いで居る者には、すぐ分かるんです!」

「そうなの?」

「そうです!」

 トーマス君は、必死に首を振る。

「まあ、俺は、お前達の始祖様の兄貴な!
 そしてミレーネは、この世界で、ただ一人だけ居る俺の眷族だ!」

 トーマス君は、目を輝かせて、俺の顔を見ている。
 どうやら、トーマス君も、俺の眷族になりたそうだ。

『トーマス君を、眷族にしますか?
 YES  or   NO?』

 頭の中で、鑑定さんの声が聞こえてくる。

 俺の答えは、勿論、NO!

 俺の眷族には、俺好みの美少女しか要らないのである!

 ーーー

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