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310. ゴールデンスカル海賊団VSブラックバード海賊団(6)
しおりを挟む「ご主人様! 本気出して下さい!」
頭上から、シロの怒声が響く。
シロは、マストに糸を張って、八面六臂の大活躍。
それに比べて俺は、敵海賊の背中から斬りかかる卑怯者。
ヤル気が湧いてこないんだけど……。
「そんなの、ご主人様が誰も来ない船首に居るからですよ!」
「五月蝿いわい! 分かってても船尾に移動出来ないんだよ!」
「海賊共を斬りさいて、船尾に行けばいいでしょ!」
「俺は侍の末裔なのに、後ろから人を斬るような卑怯な事出来るかよ!」
「どんだけ、真面目なんですか!」
シロが突っ込みながらも、俺に糸を飛ばして釣り上げ、船尾のミレーネの元に着地させる。
「よっしゃー! これで本気を出せる! って、おっと!」
俺が喋ってる間にも、敵が斬り掛かってくる。
バキューン! バキューン! バキューン!
カン! カン! カン!
ミレーネが援護してくれるが、敵もミレーネの第5階位級の魔法弾を剣で弾き返す。
「強いな」
「下っ端はやっつけましたが、今いる人達には、魔法弾が効きません」
ミレーネが、俺の独り言に答える。
確かに、シロの糸に釣り上げられる馬鹿も居なくなってる。
「という事は、俺の出番だな?」
「はい。宜しくお願い致します。始祖様」
ミレーネは戦闘中だというのに、片膝をつき俺に頭を下げた。
頼られたなら仕方が無い。
血を分け与えた眷族の前で、格好悪い所は見せられないのだ。
俺は気合いを入れ、敵海賊を睨み付ける。
「クッ! 覇気だと!」
闘気を放っただけだが、敵海賊は、俺の闘気を覇気だと言う。
なんか、ワ〇ピースの世界みたいだ。
「ご主人様! 闘気も覇気も一緒ですからね!
ただ、地域によって言い方が違うだけですから!」
折角、いい気分になってたのに、いつものようにシロが水を差してきた。
まあしかし、俺の仕事は、敵を斬ることのみ。
ズザン!ズザン! ズザザザザーン!
俺は、取り敢えず、近くにいた敵5人程を瞬殺した。
「ご……ご主人様が、活躍してるーー!」
一々、俺の一挙手一投足を、マストの上から、シロが解説してくる。
いつもなら気が散る所だが、今回は、眷族のミレーネに格好良い所を見せないといけないのだ。
そのまま無視して、残りの敵海賊を全員、斬り刻んでやった。
「最強倭寇、ゴールデンスカル海賊団を舐めるなよ!」
俺は、刀の血糊を払い、格好良く鞘に刀をしまった。
完全に決まった。
絶対に、ミレーネは俺に惚れ直したに違いない。
「ご主人様。倭寇なのか、海賊なのか、そろそろハッキリさせた方がいいですよ!
最強倭寇の海賊団って、結局、海賊なのか倭寇なのか、全然分かんないですから!」
シロが盛り上がってる所に、気分を害す事を言ってくる。
「何でかな? ここは素直に褒める所じゃないんですか?シロさん?」
俺は、空気の読めないシロに、カチンと来る。
「確かに凄いですけど。僕はご主人様がこれくらい出来るの知ってますから、全然驚きは無いです!
それより、倭寇か、海賊なのかをハッキリ決めてもらう方が、僕的に重要なので!」
「俺は倭寇で、海賊なんだよ!
それでいいだろ!
ミカンとオレンジみたいな感じで!」
「ミカンとオレンジは、別物ですよ?
伊予柑とオレンジは、似てる気がしますけど?」
「じゃあ、イチゴとストロベリーでいいよ!
日本語と英語の違いみたいな感じだと思ってね!」
「成程、ご主人様の解釈はそんな感じですか!
なら、ちょっと違うと思いますけど、合わせますね!」
とかやってると、
「キュイ!」
オリ姫が、何かを訴えてきた。
「ご……ご主人様! 敵母艦が体当たりしてきます!」
それをシロが翻訳するが、目の前で起こってる事なので見れば分かる。
ドッカーン!
ゴールデンスカル号の側面に、新幹線のような鋭角の結界が突き刺さった。
「シロ! 穴開いてるんだけど!
ゴールデンスカル号って、頑丈じゃなかったのかよ!」
「第5階位の魔法攻撃ぐらいじゃビクともしない設計ですけど、あの結界は、多分、第7階位級の代物だと思います!」
「第7階位だと! 俺もまだ、第6階位しか使えないのに!」
「ゴールデンスカル2号のレールガンを弾くほどの結界ですから、間違いないですね!」
「そんな、第7階位の結界を張れる奴らに、俺達は勝てるのかよ!」
「やるしかないですよ!
もうちょっと、数を削れるかと思ってましたけど、ご主人様がしょうもない話をしてるから、拿捕されちゃったんでしょ!」
「お前が、素直に、俺の勇姿を格好良いと褒めてくれれば、こんな事にならなかったんだよ!」
「僕は、ご主人様のポテンシャルを信じてるんです!
アレくらいやれると、最初から分かってましたから!」
「それじゃあ、第7階位の結界を張れる程の強敵を、俺が倒せると思うのかよ!」
「ご主人様なら、殺れます!」
シロは、俺の目をシッカリ見て言い切る。
しかも、8つの副眼も全て開いてるので、ちょっと怖い。
「そ……そんなこと言われたら、ヤルしかなくなるだろ……」
「始祖様なら、殺れます!」
「キュイ!」
ミレーネとオリ姫も、俺を後押しする。
これは、全力を持ってやるしかないな。
シロに言われただけだと、甘えが出てしまうが、血を分け与えた眷族の前では、格好付けねばならないのだ!
どうやら、俺のヤル気のスイッチは、ミレーネのようだ。
「長い付き合いの僕より、ミレーネさんの方が大事なんですか!」
シロが、焼き餅を焼いたのか、頬っぺを膨らませて怒っている。
「お前は身内過ぎて、どうしても甘えてしまうんだよ!
その点、ミレーネは血を分けた子供のような気がして、保護欲が掻き立てられるんだよ!」
「そしたら、僕にも血を分けて下さいよ!」
「お前は、今のままでも強いだろ!」
「女心が分かってないな……。
僕も、ご主人様に護ってもらいたいんです!」
「ヤダよ! 俺の方が護ってほしいもん!」
俺は、シロには、このままで居て欲しい。
いつでも頼れる相棒。
というか、俺を護る肉壁?
いや、便利メイド?
違うか、何でも叶えてくれるドラ〇もん?
「ご主人様のいけず!」
「俺は三擦り半で、直ぐ行けるぞ?」
「そういう事では、ないですから!」
シロの気持ちが、全く分からないセドリックだった。
ーーー
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